第四章 第9話 破りご来場
嫌なスキル「ワーム」を手に入れた直人。
しかし、強力なスキルであるが故に、誤爆の心配も大きい。
訓練に勤しむが……
直人は訓練部屋にいる。
新スキルを得たとはいえ、まだコントロールが出来ない。
将軍はお喜びだが、こちらはそれどころではない。
誤爆すれば、今度はバグ以上の被害が出るのは明白。
仕事でも、この手の攻撃は厄介だった。
何度システムダウンを経験したことか……
エーデルに結界を張らせる。
バグの時のように意識を集中させ、
スコープで範囲特定するようイメージする。
また嫌な虫たちがイメージに浮かぶ。
その虫たちを払うようなイメージで押し出す。
「魔王さま!来ました!」
エーデルが叫ぶ。
当たった。成功だ。
「侵食されてます。結界効果が薄れています」
シズクが
「魔王さま、これはバグより遥かに強力です」
直人はUIを見る。
【スキル】ワーム行使中
【異常】結界魔法:ワーム適用
【追跡】WRM-04
【提案】差分解除
ロールバックだ。
【スキル】ワーム
【ロールバック】差分解除
【対象】WRM-04
【注意】解除不能。隔離のみ。
直人はYESを押す。
解除ではない。隔離だ。
ワームの侵食が止まる。
エーデルが、
「効果が消えました。でも、穴が空いたままです」
「仕方ない。ロールバックできないからな」
そんなやり取りをしていると、突然UIにワーニングが出る。
UIの文字を見る前にシズクとミリアが同時に言う。
「来ました!」
UI表示
【来襲】破り検知
「来たか」
直人は急いでUIを通しデーモンロードを呼び出す。
影が落ちて来る。
「魔王よ、破りだな」
「そうだ。いつものようにB31に集合だ」
「魔王、今日は少し違うぞ」
「何が?」
「二人で来ている」
「何だと!」
UI表示を確認する
【来襲】破り2名
【突破】B5
早い、流石に2名では早い。
今は自動迷宮は魔鉱石節約のため、
再生可能ボスのいるB31以降に設定してある。
それまでは「迷宮扉」のみだ。
一般冒険者では、あまり抜けないそれらのギミックを
いとも簡単に破って進んでいく。
再生可能ボスたちを退避させる。
直人たちも急いでB31に向かう。
流石に破りで2名来ているとなれば、
戦えるボスは全員集合だ。
相当広い部屋なのだが、全員だと直人やメイドを含め25名。
相手から見れば相当な威圧感のある光景だろう。
破りは早くもB20に達している。
元魔王ならば、勝手知ったるという進み方なのだろう。
ただ、迷宮扉はそう簡単ではないが、
恐らく、その配線を断ち切る手法だろう。
構造破壊が手立てであり、目的だろう。
デーモンロードの指示で各ボス達が陣形を取る。
今回も鶴翼の陣だが人数が多く厚みがある。
直人たちはデーモンロードの横に立つ。
ダリオンも一応、端に控える。
破りがもうすぐ来る。
(学習されて無ければ良いが。
破りは魔王の失敗から学ぶ。
なら、こちらの勝ち筋も、いつか読まれる)
ドアが開き、破りたちが入って来る。
一瞬立ち止まり、驚いた表情が見える。
当然だ、今までは”素通り”だったのだから。
後衛が錫杖を突き立て、呪文のようなものを唱える。
それに呼応し、前衛が剣をかざして魔素を集めている様子だ。
その持つ剣に光が集まっていく。
そして、
一瞬の出来事だった。
剣をかざしていた破りが、見えないレベルのスピードで斬りかかってきた。
不意を突かれた、先頭にいたエルダートロールが、
防御する間もなく肩から胸に深手を負った。
エルダートロールは膝をつき頽れる。
他のボス達も慌てて構えるが、破りはハイリザードマンの足に一閃を入れ、
動きを止めたあと、シャドウ・フェンリルに一突き入れ、
次のデーモンジェネラルに斬りかかる。
だが、流石にジェネラルは慣れている。
斬り結ぶ顔が喜んでいるように見える。
実戦で、破りの強さに圧倒されていた直人は、
我に返り、スキル発動を急ぎイメージする。
スコープだ。
強化の元となる、後方の破りに対して範囲をイメージする。
虫が出てきた。嫌だ。
嫌なものは払う。
すると、隣のデーモンロードが
「当たったぞ」
と一言だけ言う。
UIの表示が出る
【対象】破り後衛:結界維持術式
【操作】ワーム適用
【異常】結界維持:侵食開始
【追跡】WRM-05
見ると、
後方の破りが、慌てている。
そして、悲鳴に似た声を上げ、前の破りに向け叫んでいる。
デーモンロードが
「破りの前衛剣士の強化支援が崩れているぞ」
と冷静な分析をする。
そこに隙が生まれた。
左右からギルタスコーピオンと、デスナイトが切りかかり、
デーモンジェネラルの剣と合わせて三方からの攻撃となる。
流石の破りも、結界が破られ、複数が相手では分が悪い。
後方の破りに対しても、アークデーモンの地獄の業火や、
サラマンダーやキマイラの炎など連続でお見舞いし、
デスワームが地下から近くに出て毒をお見舞いする。
追い打ちでベヒーモスとケラウノス・レックスが突進する。
破りは、少しずつ崩れていく。
暫く戦っているうちに大勢は見えてきた。
両破りは既に反撃の勢いはもうない。
ドラゴンキマイラや、マスターオーガが参戦する頃には、
もう気力も無くなってきた感じだ。
デーモンロードが直人を見て、目で聞く。
直人は一瞬躊躇する。
「殺して良いか?」という問いだ。
直人は一言。
「生け捕りにしろ」
「承知した」
デーモンロードは号令する。
「捕まえろ」
破りはもう戦えない。
ボス達、特にヴァルカンは最後のトドメを刺したがっていたが、
デーモンロードの言葉に従う。
デーモンジェネラルも口惜しそうだ。
自身も身体じゅうに傷を受けている。
シズクや皆が
「魔王さま、勝利おめでとうございます」
「皆の連携が良くなっているな」
デーモンロードは
「魔王の新スキルは強力だな」
「ああ、バグより相手を侵食するようだ」
シズクが
「最強が更新されました」
「嫌だけどな」
ミリアが
「嫌がらせ♡」
じっと場面を見ていたダリオンも下がっていく。
致命傷を負ったエルダートロールの再生処置を依頼したり、
他の負傷ボスを気遣った後、
デーモンロードに、
「後で破りの尋問をするぞ」
と言い残し、
玉座の間に戻る。
UIに早速表示が出ている。
【魔王Lv】Lv51→Lv61(破り2名撃退の為)
【ミュート5分】62日
【復活】488年
上がった。が、
復活488年というのは、もはや単なる数字だ。
面白くも無い冗談だろ。
UIにツッコんでも仕方ないが……。
それと、最近は、記憶欠けが起こっていない感覚もある。
身体が慣れてきたということか。素材が効いているのか。
安心はできないが……。
そこにUIの至急メールが来る。
【宛先】魔王佐倉直人
【要件】魔王対戦について
【差出】ヴァルダス
「魔王佐倉直人殿。
遅くなりましたが、B60到達おめでとうございます。
また、破り二名撃破おめでとうございます。
つきましては、やっと魔王対戦の相手が決まりましたので、
お知らせいたします。
日時 魔界歴 NF 12●●年□□□日
場所 魔王協会闘技場
ダンジョン整理後にお出で下さい」
前と同じ形式のメール。
またあの対戦か。
これはヴァルダスの手書きだな。
しかし、拒否すれば支援停止。
停止は欠乏、反乱、門、
それに、負ければ10段階下がるペナルティだったな……
前よりダンジョンは深く大きな組織になっている。
支援停止と階層減は避けなければならない。
戦いたくない。
俺は弱い。
今思い出しても、手が震える。
しかし、Lvの為にも向かわざるを得ない。
直人は返信する。
「承った」
Lvはまだまだ足りない。
道は遠い。
だから、嫌なものでも受け入れる。
ひなの為なのだから。
(つづく)
破りも学習はしているようだが、
直人のスキルが上回る展開。
そして、いよいよ次なる魔王対戦へ。




