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「リモート魔王」――改善してたら魔王に定義されました。家族との絆が削られる魔王に…  作者: 遠藤 世羅須
第四章 「世界編」―真実の重み

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第四章 第2話 身辺整理

魔王対戦に向かう直人。

心の準備が出来ないままに、理不尽に向かっていく。

今日も微熱があるひなを寝かしつけて、

直人は美沙と向き合っている。

静かな夜がそっと音を忍ばせている。


「魔王対戦だ」

「前言ってたやつね」

「案内が来た。近々行く」

「戦うんでしょ?出来るの?」

「俺は戦えない。だから困ってる」


美沙は手を添えてくる。

「やめる事はできないの?」

「出来るなら俺もそうしたい。

 だけど、断ると補給が止まる。ダンジョンが回らなくなる」

「じゃあどうするの?」

「とにかく行く。そして”生きて”帰ってくる」

美沙は手を少し強く握る。

「大丈夫なの?」

挿絵(By みてみん)


直人は美沙の目をみながらゆっくり話す。

「万が一がある。今は復活が258年だ。

 だけど、ミュートを継続しておけば、一週間程度で戻れる」

美沙は目線を下げたままゆっくり頷く。

「だから。ミュートは絶対に解除したり、電源を落とさないでくれ」

「…わかった」

「ミュートさえ継続していれば大丈夫だが、システムエラーや、

 管理者切断の可能性もある。確認の方法は……」

美沙に手順を説明する。


そして、

お互いに無言で見つめ合い、無言でうなずく。


美沙との時間を惜しみながら、

ミュートを押して玉座の間へ。


ミリアが笑顔でそこに居る。

「そういえば、俺が此処に来ると、お前いつもいるな」

「魔王さまのアシスタントですから♡」

「それだけか?俺の行動がわかってるのか?」

「魔王さまと一心同体♡」

「俺は同期したログはないぞ」

(駄目だ、いつもの調子だ)


直人は気を取り直して、見ると、

なぜかシュレがいる。

「シュレ、仕事は頼んでないぞ」

「お見送りにゃ」

いつになく抑えたトーンで語る。

直人は唾を飲み込む。

(壮行の形の”お別れ”か…)


直人は、ポケットを探り、残っていた”スティック型”を取り出す。

(これが身辺整理だな)

「最後かもしれんからな、持ってけ」

シュレは、珍しく動かない。

「いやにゃ」

受け取らない。

「それは仕事の報酬にゃ」

直人は驚く。

「お前、これに目が無いだろ」

「それはそうにゃ。だけど、おいら請負にゃ。

 帰ってきて仕事したらもらうにゃ」


「代わりに…」

シュレは素早く厨房に向かう。

「止まりなさい!」

シズクが叫ぶ。

「いやにゃ。おやつ欲しいにゃ」

「不許可です!」

挿絵(By みてみん)


ひとしきりミニバトルが発生する。


「シュレ、止まれ」

直人が威厳を込めて命を下す。


シュレは大人しく戻って来る。

「餞別にゃ」


なるほど、野生のお見送りか…


「帰ったら仕事出す。それまで大人しくしてろ」

「はいにゃ」


直人はミリアを見る。

ニコニコしながらこちらを見ていたが、

「魔王さま、行きましょう♡」

直人はゆっくり頷く。

シズクとシュレに

「行ってくる」

シズクが

「ご無事でお戻り下さい」

「俺もそう望んでる」

「行ってらっしゃいませ」


直人はミリアと転移陣へ。

辺りが浮き上がる感じで音が遠くなる。

一瞬の暗黒の時を過ぎると視界が開ける。


魔王協会の転移陣コーナーに着いていた。


ヴァルダスが出迎えた。

「ようこそ魔王様」

直人は軽く頷きだけ返す。

「どうぞこちらへ」

案内され、応接室へ。

途中、ナンシーとすれ違う。

「ようこそ魔王様」

笑顔で挨拶してくる。

直人は軽い会釈で返す。


応接にはミカゲもいた。

「お久しぶりです。魔王さま」

直人は、ミカゲを見ながら

「来たくて来たのでは無いがな」

不愛想に挨拶する。


応接に座ると、

また、アリアドネがドリンクを持って来る。

相変わらず素早い動きとマルチな手さばきだ。

現実の部下に欲しいなどと思ってしまう。


ヴァルダスが切り出す。

「まず、魔王対戦のルールをご説明します」

直人は気乗りがしないが、一応聞く態勢で、

「聞こう」

「今回は、B50のダンジョン魔王同士の戦いです。

 しかし、魔王Lvはそれまでの経緯もあり違います。

 佐倉魔王殿はLv43ですが、お相手、

 今回は”ザルゴス”というお名前ですが」

ヴァルダスはひと呼吸置く。

「Lv48となります」

直人は息を飲む。

俺より5Lvも上だ。

挿絵(By みてみん)


ヴァルダスは続ける。

「協会の外に、闘技場がございます。

 大変広い場所でして、二重、三重の結界が張ってあります」

「更に、協会専属の治癒師が控えておりますので、

 万が一の場合もご安心を」

(万が一って…)


直人は動揺を見せぬよう努めて冷静に聞く

「もし、死ぬような致命傷だったら、復活との関係は?」

ヴァルダスは頷きながら、

「ごもっともな疑問です。

 佐倉魔王殿は現在復活258年ではありますが、

 協会闘技場の結界内であれば、その制約はございません。

 魂が離脱することが無い結界となっています」


直人は一瞬安心する、が、

「死ぬ事もある、と?」

ヴァルダスは

「概念としての死はございませんが、事象としての死はございます」

「事象って…」

「ですので、復活ペナルティをお気になさらずとも結構です」

直人は呆れるが、これが”魔界の常識”というやつらしい。

これ以上、そこを突いても仕方がない。


ヴァルダスが続ける。

「戦い方は自由です。武器、魔法、スキル、アイテム、制限はございません」

直人は寒気がする。

(俺は逃げ足と訳わからんスキルしかないぞ)


「勝負は、時間内にどちらかが倒れるまでです」

「倒れるとは?」

「戦闘不能状態です」

直人は苦虫を噛み潰すような顔になる。


「但し、今回は、B50の最初の戦いですから、

 勝ち負けに関わらず、ペナルティはございません」

「ペナルティとは?」

「B60以降は、負けた魔王様とダンジョンがマイナス10段階となります」


(今の俺にはあまり関係無いじゃないか…)

「降参とか無いのか」

「降参は無くはないですが、ペナルティになる可能性があります」

「ペナルティ?」

「その状態により、一定期間の補給停止、並びに上納の追加となります」

ヴァルダスは一息つき

「そして、勝った魔王様は、Lvが3つ上がります。上納も暫く猶予されます。

 なお、決着がつかない場合は立会人の裁定により引き分けとし、

 両者Lv1の上昇となります」

さらに、

「B70以降はもう少し追加のお話がございますが、今はこのくらいにしておきます」


直人は否応なく乗せられたレールの上を走っているが、

兎にも角にも理不尽極まりない。

「わかった。さっさと終わらせよう。どうせ俺は戦えん」


すると、ここまで黙っていたミカゲが口を開く

「あなたのスキルは貴重ですよ」

直人は少し睨みながら

「俺は戦いたくなどない。破りとか仕方ないから対応しているだけだ」

ミカゲは

「Lvを上げる事は、あなたに必要なお話では?」

「それとこれは別だ。門は俺が守る」

ミカゲは少し目を細めた。

「守る為にも必要ですが…まあ、今はこれで良いでしょう」


ヴァルダスが、

「では、闘技場にご案内致します。こちらへ」


案内されて、広い協会の建物を出ると、

そこにそびえ立つ要塞のような建造物が現れた。

でかい。大きい。広い。端が見えないぞ。

挿絵(By みてみん)


入口も結界で守られているらしく、

ヴァルダスが何やら呪文を唱えたり、空を切る文字のようなものをなぞっている。

入口の扉が開き、中に入る。


長い暗い廊下の先にある光に向けて歩き、

そのトンネルを出ると、広大な敷地があった。

中央に一人の魔人?が立っている。

入ってきた自分たちを睨んでいる。

立っているだけで、地面の砂がじりじりと後ろへ逃げている。

挿絵(By みてみん)


ヴァルダスが直人に言う

「こちらがザルゴス魔王です」


直人は、これから始まる”惨劇”を想像しながら、

初めて”食物連鎖”の下流の気持ちを理解した気がした。


(つづく)

およそ魔界における最弱魔王の直人。

果たして、この勝負は?

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― 新着の感想 ―
やっぱりなろうはイラスト付きで見れるのが迫力ありますね!
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