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「リモート魔王」――改善してたら魔王に定義されました。家族との絆が削られる魔王に…  作者: 遠藤 世羅須
第四章 「世界編」―真実の重み

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第四章 第1話 そしてB50

魔界の奥深さを感じた直人。

現実を守る為、ダンジョン拡張を続ける。

運用は順調に進み、当座の目標にまで届く。

ダンジョンが生き残り標準と言われたB50に達した。

そして、直人はLv43になっている。

ダンジョン設計は、B20までを通れる層にした。

各フロアボスは置かず、階層もシンプルに。


その代わりに、

各階ボス部屋の扉を迷宮扉にした。

「当たり」でなければ通り抜けられない。

毎回当たりが変わるギミック。

魔鉱石消費も低レベルになる。

これは効いた。

並みの冒険者だと、B1すら抜けない。

代わりに宝箱隊に命じ、上層階に宝箱を増やし、

中位以下持ち帰り品を増やした。

撤退誘導が無人でも機能する造りになった。


そして、ボスも増えた。

B21~B30は再生可能ボス。

B30には追加で迷宮扉。

B31~B40は追加雇用をして戦えるボスたちを置いた。

新規追加ボスたち。

・エルダーミミック

・デスワーム

・アマルガム

・デュラハン

・ケラウノス・レックス

・シャドウ・フェンリル 

・ベヒーモス

・ライトニング・バジリスク

・オーガジェネラル 

・鋼狼将 ヴァルカン(元魔王)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


今回は魔獣が多い。

中でも異色はヴァルカンだ。

破りに自ダンジョンを破られ、野に下っていた。

デーモンロード配下からの情報があり、

来てもらった。

最初は敗残兵のような目だった。

さらに、破りの話になると、声のトーンが一段落ちた。


B41~B50は既存の戦えるボスたち。

最下層B50はデーモンロードでアンカーとした。


そして、B31に大部屋を移し、集合迎撃態勢を取る。

これで、二度来た勇者は、その都度、ボスを集めて撃退した。

勇者相手ならば、もう安心して任せられるほど統治が効いている。

ただし、勇者の際は、ボスたちは全員出さない。

当番制のようにして、戦わせる。

これが意外と効果があり、ボスたちの戦意高揚に役立った。


そして、何と、破りは、通算4回も来た。

最初の破りをB11で撃退してから、その後3回。

皆、単独だった。

最後の魔人の際は、だいぶ苦戦はしたが、

既に直人のバグが、スポットで当てる事ができるようになっていたので、

もはやダリオンを待たずとも、ボスたちでも押し返せるようになっていた。

都度、直人はLvアップした。

Lvを上げたいのではない。

しかし、門の安定化に必要な事と、将軍などからの圧もあり、

”上がってしまった”。

最初の頃のLv上げに苦しんだ頃が大昔のようだ。

そう言えば、最初にミリアが現れてから、

まだ、高々半年も経っていない。

魔界の時間進行が早いので、

現世より何倍も多くの時間を過ごしているが、

これは、いわば逆浦島太郎だ。


それにしても、Lvアップしても、

相変わらずUIに門の不安定表示が出る。

ひなの熱も続いている。

病院でも、原因不明だ。

一時幼稚園も休ませた。

当のひなは、熱の無い時は、相変わらず元気ではあるが…


Lvが上がった現在は、復活が、確か258年……

100年を超えたあたりで、一度美沙が、

ひび割れたような笑いを洩らした。

「そう……なのね……」

もう、現実感が無さ過ぎて感覚が麻痺してしまった。

童話の「眠れる森の美女」でも、眠りは高々100年。


ミュート5分も、44日。

全く絵空事だ。


美沙に話すのも、もう、ほぼジョークを言ってる感覚だ。

美沙も、ある意味慣れてしまったようで、

表情の変化もなく「あ、そう」で終わりだ。

諦めとも、絶望とも違う、テレビドラマのセリフを聞いている感覚?

「直人がおとぎ話の主人公に見えてきた」

「俺もドラマで演じてるようだ」

挿絵(By みてみん)


”一度死んでみるか”という冗談を言おうと思ったが、喉元で止まった。

当然だ。

おとぎ話だから流せるのは”数字”だけだ。


ある時、美沙が真剣な顔で聞いてきた。

「あなたは強いの?」

即答で

「俺は弱い。だが、皆の協力で強いダンジョンになっている」

「でも、あなたが戦うのは危険なのね」


返す言葉が見つからなかった。

最初に破りが来た時の恐怖は今思い出しても冷や汗が出る。

「俺が戦わなくても、強いから大丈夫だ」

むしろ自分に向けて言うように言葉をつなぐ。

しかし、美沙の悲しそうな目線は何よりも心に刺さった。


しかし、ひなの熱などは現実で起こっている事だ。

俺のことと関係しているのか?

俺が魔界から良からぬものを持ち込んでいるのか?

少しひなと離れた方が良いのか?


一度、ミリアに聞いた事がある。


「ミリア、俺が魔王として成長すると、現実で不都合が起きるのか?」

ミリアはニコニコ笑みを浮かべながら、

「魔王さまが成長して困ることはありません♡」

ミリアをじっと見つめながら、

「嘘では無いだろうな」

「はい♡」


そして、協会から帰った日にも聞いた。

「ミリア、あの最後の声は何だ」

「魔界の影の声です♡」

「何だそりゃ」

「とても大事なお言葉です♡」

今までの通りのミリアだった。

挿絵(By みてみん)


仕事も引き続き休んでいる。

会社には、1か月に一度状況報告だけしている。

病院も定期的に行っている。

当然、魔王…などとは言ってない。

言ったら…、多分、入院…。


ミカゲも定期的にコンタクトを取ってくる。

素材も定期的に送ってくる。

そのお陰だろう、新たな記憶欠けはここのところあまり感じない。

ただ、忘れてしまったことは、思い出せないままだ。

これは辛い。

仕事が遠ざかっているので、仕事への影響はあるかもしれない。

復帰の際の不安要素は確かにある。


そういえば、B50で、他魔王と対戦があると言ってたな。

何だ対戦って。

今だって俺は戦いなど出来んぞ。

魔王が戦えないというのは一種のジョークみたいなものだが、

実際、バグ以外ほぼ何も出来ない。

スコープで当てられるようになったくらいだ。

出来る事と言ったら、シズクに鍛えられた、魔王装備を使うくらいだ。

足先コントロールと、新たに掴んだマントを利用する方法で

「逃げ足」は早くなったと思う。

今は、角を意識して、魔術コントロールを訓練しているくらいだ。


ダンジョン自体は、うまく回っていると思う。

農園も拡充する必要があったので、当初からは、3倍くらいにはなっている。

シリカが、マンドレイクを上手く活用するように改良してくれたり、

農園の作物を増やしてくれたので、

色々な魔獣への対応も滞りなく進んで、食料不満は起こっていない。

挿絵(By みてみん)


下層のボスたちは、暇を持て余すくらいで、

ボス同士で危ない戦いしていると聞く。

これには、俺も釘を刺したが、暇な事は事実だ。

狩猟休暇だけでは、腕が鈍るという事らしい。


シュレも仕事をしてくれる。

この前、この大陸の中で、一番のダンジョンを調べてきた。

B68だと。

俺の所より18層も深い。

そして、逆に、もっと浅いダンジョンも出来ているとのこと。

そして、その浅いダンジョンが早速破られている事も。

また、破りが増えているという事だな…

魔界の輪廻はきりがない。


そして、UIにメールが来る。

【宛先】魔王佐倉直人

【要件】魔王対戦について

【差出】ヴァルダス


ナンシーではない、ヴァルダスからだ。

「魔王佐倉直人殿。

 B50到達おめでとうございます。

 つきましては、かねてよりお知らせしておりました

 魔王対戦を組ませて頂きました。 

 日時 魔界歴 NF 12●●年□□□日

 場所 魔王協会闘技場

 ダンジョン整理後にお出で下さい」


直人は、口の中が渇く。

心臓の音がノイズになる。

「ダンジョン整理後」

何だこの言葉は…

「ミリア、これは何だ」

「お片づけです♡」

「そういう事じゃない。負けたら戻れないとかあるのか?」

「負けなければ♡」

挿絵(By みてみん)


シズクが割って入る。

「魔王の中には、本当に相手を殺す者もいるとのことです」

直人は驚きで目を見開く。

「何だと!?模擬戦ではないのか?」

「はい。本来はそうなのですが、魔王にも色々いると前魔王さまは仰っていました」

直人はしばし沈黙。

「だから、身を清めて来いと…」

ミリアがニコニコしながら

「大丈夫です。死んでも復活してもらえます♡」

「お前、何て事言ってるんだ」


シズクが

「闘技場には、回復魔術使いが控えているそうです」

「回復って…」

直人は、改めて魔界の恐ろしさを実感する。

「断れないのか」

ミリアが

「はい。補給が止まります♡」


何故そんな戦いに行かなくてはならないんだ。

今更だが、理不尽極まりない。

魔界の常識には、いつまでたっても慣れる事などない。

俺は現世の父親だぞ。

(ひなとのまおうごっこの方が良いのだが…)


直人が心で叫んだその言葉は、魔界の闇の奥底に吸われていくようだった。


(つづく)

戦えない魔王、直人への試練が訪れる。

魔王対戦。

そこに潜むのは魔か邪か。

次話、心の準備を迫られる。

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