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「リモート魔王」――改善してたら魔王に定義されました。家族との絆が削られる魔王に…  作者: 遠藤 世羅須
第三章 魔界でも社畜でした

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第三章 第29話 嵐の後に

遂に破りに打ち勝った直人。

喜ぶが、その後の憂鬱が始まる。

玉座の間に戻った直人はUIを開く。

現実に戻ろうとしたのだが、

UIにメッセージが出ていた。


【魔王Lv】Lv14→Lv19(破り撃破・確保の為)

【ミュート5分】20日

【復活】57年


直人は驚く。

(復活57年……)

「そうか。破りでも上がるって言ってたな、お前」

「しかも一気にLv5も上がるのか」


ミリアがニコニコする。

「はい♡おめでとうございます♡」

「おめでとうって、復活57年だぞ……」

「魔界では一瞬です♡」

「一瞬って…お前いくつだよ」

挿絵(By みてみん)


直人は戦闘勝利で胸が弾んだが、つかの間の喜びだった。

復活57年、もう、美沙に報告できなくなる気がした。

晴れやかな気持ちが、一気に萎える。


それでも、

「戻る」

「はい♡行ってらっしゃい♡」

(またこちらがホームの送り出し)



現実に戻る。

魔界に行ってから、わずか5分も経っていない。


美沙が

「早かったわね。帰ったという事は、無事に終了という事ね」

と笑顔になる。


直人は、一瞬表情を曇らせるが、

「ああ、破りはやっつけた。だが……」

「どうしたの?」


直人は言いよどんだが、

一拍おいて

「Lvが上がって、復活が57年になった」


美沙の笑顔が消える。

少し逡巡している様子の後、


「57年……、私、いないかな……」


直人は息を飲む。

言葉が出ない。

報告をしたかった喜びが空中に消えていく。

美沙の瞳が潤んでいるように見える。


「でも、俺は無事だ。死にはしない」

美沙は作り笑いをする。

「うん、直人が無事ならいい」

そう言う声が、少しだけ掠れていた。

直人は手を握ったまま、しばらく無言で見つめた。

挿絵(By みてみん)


「ひなの熱はどうだ」

直人は話題をそらし、ひなを見に行く。

布団で寝ている。

まだ微熱があるようだ。

「おとなしく寝てたよ」

「そうか、もらった薬が効いてるのかな」

家族の無事。

それこそが、直人が求めるもの。


しかし、まだ終わったばかりの”向こう”が気になる。


直人は、

「ちょっと行って来る。後始末だ」

美沙が

「行ってらっしゃい」

直人がPC前からすっと消える。

美沙は、直人が居た場所を見つめながら、

「毎回、慣れないなぁ。

 実体が帰ってきてないみたい」

と呟く。



玉座の間。

UIを開くと、多数のワーニングメールが。

順番に開く。

【祝】破り撃退

【至急報告】破り撃退の件

【訪問予定】魔王協会より訪問

【要報告】破り戦闘詳細報告

【要定期報告】担当ナンシー

……


様々なメールが来ている。

一つ一つ確認しながら返していると、

ミリアが

「来ました♡」

「何だ?」


答える間もなく、2人の影が入って来る。

(入って来たという事は協会権限を持つ者か?)


VDとMKだ。

「突然、お邪魔します」

予告もなしか。

挿絵(By みてみん)


「いきなり、何事だ」

VDが言う

「破り撃破。おめでとうございます。さらに、破りを確保しているとのこと」

そういうことか。

「牢に入れてある。用があるならそちらへ」

MKが言う

「破りには後で話を聞きます。

 本日は、お祝いと、お話があります」

「話とは」


MKが口を開く。

「まず、非礼をお詫び申し上げる。

 私の名はミカゲ、こちらはヴァルダスと申します」

「本名か。それで?」

「Lv14、B20台前半時点での破り撃破は稀有な事ゆえ、

 大変驚くと同時に、感謝を伝えに来た次第」

「それはどうも」


ヴァルダスが継ぐ

「ついては、是非撃破の経緯についてお聞きしたいので、

 協会本部にお出で頂きたく存じます」

「そんな大層な事か?」


ミカゲが言う

「魔界側を救済する勇者クラスが現れたという言い方で伝わりますかな」

「大げさだろ」

「いや、単にあなたの強さで勝ったのではない。

 統治と采配、そして固有スキルで破りを止めた点が特異です」

「俺は忙しい。それに、こちらの人間じゃない。面倒に巻き込むな」

「既に巻き込まれてますよ。門の事とか。

 更に、破りはこれで終わりではありません」


直人はミカゲを睨む。

「それは脅しか」

「違います。協会はお手伝いする側です。

 魔鉱石もお役に立ったはずですし、

 特上素材は――記憶保持に効果あったと思いますが」

「それに、今回の件で、上納はしばらく不要で結構です。

 さらに、巡回をしていた魔人も訪問させないよう手配致します」


直人は言葉を飲み込む。

(確かに、特上素材の効果はあったと思う。上納不要。また交換条件か)

「わかった。どうすればいいんだ」

「明日、協会に来て下さい。歓迎致します」


ミリアが突然

「私がお連れします。魔王さま♡」

一瞬、疑念が浮かぶが、

「わかった。行こう」


ヴァルダスが

「あ、破りは連れて行きますが、よろしいですね」

「巡回魔人と繋がっているぞ」

「はい。取り調べは私どもで」

「隠蔽じゃないだろうな」

「これは失礼致しました。後ほど正式な報告書でお知らせいたします」

「なら、好きにすればいい」


二人は、慇懃な礼をして去って行く。


「ミリア、協会はどんな所だ」

ミリアはニコニコしながら、

「偉い人がたくさんいます♡」

そうだろうな。

”偉そうな”人の間違いじゃないのか?


直人は気を取り直し、

メールを処理していく。

そして、ふとナンシーに会うのかと思いを巡らす。

会ったら、文句を言わずにいられるだろうか。

いや、たぶん無理だ。

などと考える自分がいる。


UIで配置を確認する。

B1ブラッドスライムは今回撃破され、再生中とある。

B14ドラゴンキマイラは深手の傷の手当が長引き、現在休暇扱い。

B15マスターオーガは致命を受け長期休暇治療中となっている。

B16エルダートロールも大打撃を負ったが、魔人による再生で、配置されている。

B17デーモンジェネラルは回復中となっている。

挿絵(By みてみん)


他、ボス、食料、宝箱、農園なども異常はないようだ。

日次報告も来ている。


今回は破り撃破はしたが、こちらもだいぶ被害を受けてしまった。

直人は、傷を負ったボスたちをねぎらうために

ミリア、シズクたちと各階層に出向く。

B1ブラッドスライムの再生状態を診て、

B16エルダートロールの早期回復を褒め、

B17デーモンジェネラルに声を掛ける。

ジェネラルは、傷を負った事よりも、戦闘での己の不甲斐なき働きを嘆く。


直人はひとり言のようにつぶやく。

「彼らは大事な同志だ。俺の運用で守る」

同行のシズクが、

「魔王様、それが統治の到達点かと」


そして、玉座の間に戻りUIを開く。

赤いワーニングが出ている。


【門】不安定(弱)


何故だ!?

Lvも上がっている。階層増やしてボスも増えた。

揺らぐ要素など無いはずだ。

むしろ安定していいのだが……


直人は冷や汗が出る。

何が原因だ?

「ミリア、なぜ門が揺らぐ」

ミリアは返答まで一拍おいて、

上目遣いで、

「色々な事があります♡」

「色々って……、お前何を隠している」

「魔王さまのLv上げの目的は変わりません♡」


聞いた俺が間違っていた。

こいつから今欲しい正確な情報は無理だった。


直人は揺らぐ心で、遠くを見ながら呟く。

「やはり魔界は勝って終わる世界ではないな」


(つづく)

※ 次話、第30話が三章最終話となります。

  その後、総集編もございますが、

  投稿スケジュールを一部変更させて頂きます。

  次話  第30話 9月12日(土)17時

      総集編 9月19日(土)17時

  以上、よろしくお願いいたします。

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