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「リモート魔王」――改善してたら魔王に定義されました。家族との絆が削られる魔王に…  作者: 遠藤 世羅須
第三章 魔界でも社畜でした

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第三章・第3話 情報担当

直人は、まだ魔界の事がよくわからない。

ミリアに聞いても曖昧。

素材の効果のほども不明。

色々モヤモヤしています。

現実に帰ると、身体が重かった。

寝込むほどでは無かったので、

直人は、努めて平静に朝の家族対応を終え、

出かけるのを見送った後、

Zoom、Slackルーティンをこなす。


しかし、今日も一瞬、出てこない言葉があった。

(まただ…、あの味を我慢したが、効果あったのか?)

美沙の探るような目もきつかった。

そして、UIに出る門の不穏。

(どうして門が揺らぐ?)

ここで考えてもわかるずもない。


会議が一息ついた所で、ミュートし、魔界へ。


玉座の間、

今、直人の中の基準が揺れている。

魔王協会。

他の魔王。

このダンジョンが世界の端。

門の不安定。


ミリアの説明は、最低限だった。


直人は玉座に座ったまま、ミリアを見た。

「何故、門が揺らぐ」

ミリアは

「魔王さまのマナが育ってないからです♡」

「まだ足りないのか」

「はい♡」


直人は、気を取り直し、

「再度聞く。協会の目的は何だ。誰が決めてる。何を見てる」

ミリアは即答しない。

その“一拍”が、直人の胃を冷やした。

「……いっぱいあります♡」


直人は頷かない。

「曖昧だな」

「魔王さまにとって、今必要なのは“提出”です♡」

「提出はやる。だが、提出の先を知らないままは危険だ」

ミリアは肩をすくめる。

「うふっ♡」と笑う。

その笑いが、今日は少しだけ刺さる。


ミリアは“教える側”だが、“全部は教えない”。

直人は結論を出す。

(別ルートで情報を取る)


直人はデーモンロードを呼ぶ。

空間が沈み、影が立ち上がる。

「……魔王」

直人は結論から入る。

「協会と魔界の情報が足りない。策はあるか」


短い沈黙のあと、デーモンロードが言った。

「情報が欲しいなら、情報を取れる者を持て」

直人は頷く。

「つまり」

「部下を雇え」


直人は一拍置く。

「情報担当」

「そうだ。戦闘力ではなく“目と耳”だ」

直人は確認する。

「リスクは」

「裏切る。嘘。売る。そういう者も来る」


直人は頷いた。

「面接する。契約で縛る」

デーモンロードの影が少し濃くなる。

「契約で全ては縛れん、支配が必要だ」

直人は短く返す。

「支配したいんじゃない。守りたい」

影が薄れた。

残ったのは、結論だけ。

情報担当を雇う。


直人は杖のUIを開いた。

最小限の“募集”を走らせる。

【募集】情報専門

要件:調査/隠密

報酬:裁量(小)/地位/食事改善(応相談)


ミリアが楽しそうに言う。

「食事改善♡」

直人はミリアを見て

「お前は食事どうしてるんだ?」

ミリアはニコニコ。



ともかく、一度現世へ戻る。

午後のZoomをこなし、夕方の家族との時間を過ごす。

家族が寝静まった後、

寝室で家族の寝顔を確かめ、

失いたくない温度を心に刻み込んでから



——直人は再び、玉座の間に戻ってきた。

いよいよ面接の時刻だ。


シズクが無言で控える。


直人は玉座の間に、“面接”の場を作った。

「ミリア。選んだ候補は来たか」

「はい、来てます♡」

直人は小さく息を吐き、シズクを見る。

シズクは無言で立っている。


ほどなくして、扉が開き、入ってきたのは、小さな影だった。

猫に似ているが、猫ではない。

二足で立ち、外套を羽織り、尻尾がゆっくり揺れる。

目が、人の目のようだが、こちらを射抜くような鋭さがある。

近づいて来る。歩き方に音がない。

挿絵(By みてみん)


シズクがそっと背後の剣に手を添える。


「……ケットシー、だね?」

直人が確認すると、相手は軽く片手を上げた。

「そうにゃ」


直人は順に聞く。

「今日は?」

「暇だから散歩のついでにゃ」

直人は言い換える。

「仕事も探してる?」

「美味しい餌があるか探してるにゃ」

「何が出来る」

「探る。見る。消えるにゃ」


直人は確認する。

「消える、の意味」

「捕まらないって意味にゃ」

ミリアが後ろで楽しそうに囁く。

「便利♡」

直人はミリアを見ない。便利は危険だ。


「協会に詳しいか」

ケットシーは尻尾を揺らす。

「詳しいとも知らないとも言えるにゃ」

直人は頷かない。

「曖昧だな」

「曖昧が仕事にゃ」


直人は判断を切り替える。

“具体”が出ないのは情報屋の型。

なら、評価は別軸だ。

「成果で評価する。まず一つ」

直人は淡々と言う。

「この世界の“地雷”を一つ教えろ。今すぐ役に立つやつ」

ケットシーは目を細めた。

「……対価が無いにゃ」


直人は答える。

「対価は後。まずは“試験”だ」

「試験が好きにゃ」

「好きじゃない。必要だからやる」


ケットシーは一歩だけ近づき、声を落とした。

「地雷は、“報告”にゃ」


シズクが背後の剣に手を添えたままケットシーを睨む。


直人の眉がわずかに動く。

「報告?」

「出し方を間違えると、武器にも鎖にもなるにゃ」

ミリアが微笑む。

「もう刺さってる♡」


直人は続ける。

「それ以上は?」

ケットシーは肩をすくめた。

「今日はここまでにゃ」

(小出しか)


直人は判断する。

今は追わない。追うほど逃げる。

「分かった」

直人は淡々と告げる。

「もう一度、面接に来い。その時は“条件”を出す」

ケットシーが尻尾を揺らす。

「条件は嫌いにゃ」

直人は返す。

「嫌いでも要る。俺の配下なら」


ケットシーは笑って、踵を返しかけた。


その瞬間。

玉座の間の空気が、ひとつ震えた。

直人の胸の奥が冷える。

侵入者の気配。

直人はまず確認する。


最小の表示が出る。

【侵入】B1 → B2


ミリアがにこにこする。

「通れる階にしたので♡」

直人は頷く。設計通りだ。

問題は“どこで返すか”。

ケットシーに

「少し待て」

「はいにゃ」


直人は結論を出す。

「B3で返す設計だ」

次にUIでデーモンロードに指示する。

「現場はデーモンロード統治線で対応。俺はここで状況判断する」

シズクの視線がわずかに鋭くなる。

だが動かない。

直人が“任せる”判断をしたからだ。


暫くの後、空気が戻る。

侵入の気配が引く。


【状況】撤退


直人は息を吐いた。

入口で殺さず、奥で返す。

この方式が機能している。

直人が視線を戻すと、ケットシーはまだ扉の近くにいた。

逃げない。探るような目で、見ていた。


直人は確認する。

「今のを見て、どう思う」

ケットシーは尻尾を揺らす。

「いい匂いがするにゃ。狙われる匂い。

 あと——守る匂い。退屈しない職場だにゃ」

直人は一拍置いた。

(両方か。厄介だが正しい)


直人は結論を言う。

「次の面接をする。今度は“仕事”として来い」

ケットシーが目を細める。

「……いいにゃ。 次に来る時は、

 あんたの『取っておき』を見せてもらうにゃ」


直人は首を振らない。頷かない。

「条件次第だ。必要なら出す」

ケットシーは満足そうに笑った。

「じゃあ、また来るにゃ」

そう言って、音もなく出ていった。

残ったのは、玉座の間の静けさと、胃の奥の冷たさ。


シズクがそっと剣から手を離す。

周囲の圧が静まっていく、


直人はミリアを見ずに言った。

「次で見極める」

ミリアが

「魔王さま、慎重♡」

直人は小さく頷いた。

「慎重でないと、門に来る」


世界は広い。

そしてこちらを見ているものがいる。

直人は、次の面接の事を考える。

取っておきのもの――。

それを用意する事が、未来への扉のような気がした。


(つづく)

やはり、重要なのは「情報」。

その為には、対価が必要。

直人君、どうしますか…

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