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リモート会議してたらダンジョン管理者になって、改善してたら魔王に定義されました。略称「リモート魔王」  作者: 遠藤 世羅須
第二章 魔王編 通勤魔王

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第二章 第25話 閃き

いくら運用で改善しても、そもそも魔王の実力が伴わなければ、張りぼての魔王。

直人は強くならなければと、焦りばかりが先行する。

未知の分野への挑戦が続く。

今日も訓練部屋に来る。

魔物たちの遊び場だが、改めて見ると色々参考になる。


まず、ゴブリンたちは木剣で遊んでいるが、単なるお遊びではない。

木剣の振りが途中で止まり、角度だけ変えて“当てる”音がする。

受け手も避ける、かわす、流すそれぞれの形。


そしてスライムたちは、「誘導」が出来るように練習しているように見える。

リザードマンたちも格闘戦しているが、――受け身が美しい。


皆、ただ遊んでるだけではない。

俺が運用する仕様に合わせようとしている。


じゃあ、俺はどうだ?

確かに、運用改善はしてきた。

issueを切り、仕様を直し、ダンジョンを回してきた。

だが、それだけでは守れない。

階層を作ってLvを上げても、その力を出せなければ意味がない。


ワーウルフたちが持ってきた高マナ素材は、シズクの調理待ちだ。

時間がかかるらしい。

それを食って記憶を安定させるためにも、

俺は体を魔界の仕様に慣らさなきゃいけない。


どうすれば良い?


シズクと共に訓練部屋へ。


UIを開き、呼び掛ける。

「デーモンロード」

「何だ、魔王よ」

「教えを乞いたい」

「よかろう、そちらに向かう」


声だけでも”圧”があるのに、姿を見せられると、空気ごと支配される。


「魔力、力の使い方を教えてくれ」

「ほう、学ぶか」

「頼む。今は張りぼての魔王だ」

「よろしい。学びは重要だ」


デーモンロードはおもむろに近づき、

「ならば、感じてみろ」と言う

近づくに連れ、魔力?の圧が大きくなる。

何だこの圧は?


「感じる。魔力が多いからなのか?」

「違う。ならばこれでどうだ」


デーモンロードは一歩ずつ遠ざかる。

遠ざかっていくが、”圧”が変わらない。

むしろ増大する感じがする。

どういうことだ?


「わかったか。距離の問題じゃない。この場が、俺のものだからだ」

「できる気がしない」

「当然だ。魔王はただ魔力を持っているだけだからな」


「持っている魔力は感じるか?」

直人は脂汗を滲ませながら頷いた。

「ああ、少しは」


デーモンロードは容赦なく距離を詰め、低い声で命じる

「ならば、その感じた魔力を”包み込む”ようにイメージしてみろ。

 手からこぼれる砂を留めるようにな」


目を閉じて、感じている魔力らしきものに意識を集中させる。

精神を集中し、感じようとする。

何となく感覚を掴めそうだが、すぐに”散って”しまう。


「難しい」


「では、これでどうだ」


次の瞬間、デーモンロードの掌に火球が灯った。

そのまま、ためらいなく投げてくる。


「ちょっ、何を…」

「魔力で避けてみろ」

そんなこと言われても。

火球が飛んで来る。

必死で魔力を包み、防御しようとするが、散ってしまう。


「熱っ!」

当たれば火傷だが、シズクが訓練部屋の結界を使い致命を避ける。

――それでも熱い。


「物理で避けるのではない。魔力を集中して避ける、散らすのだ」

(くそっ、言われてる事はわかるが・・・)


その時、後ろから冷たい声

「心を開いて感じて下さい」


シズクだ。

「異界の魔王さま、先日も言いましたが、魔界への心の扉を開けて下さい」


そう言われてもと思ってみるが、正論だ。


「具体的に何が必要だ」

デーモンロードが

「簡単に言おう。自分の感じた魔力を受け入れるのだ」

「そして身にまとい、全身でその鎧ごと前に押し出せばよい」

(それが簡単か?)


今まで俺は現実社会の運用で、このダンジョンを仕様改善していた。

しかし、ここは魔界だ。

魔界には魔界のルールがある。当然だ。

そちらに合わせろという事か?


いや、そうじゃない。

現実を捨てるんじゃない。

魔界に染まるのも違う。

どちらか一方じゃなく、俺が使える形に“混ぜる”んだ。


直人は感じている魔力らしきものを受け入れようとする。

曖昧模糊として掴みようがないし、身にまとうなど尚更。


試行錯誤し、何度も”こぼれる”事を繰り返す。

しかし、そうこうしているうちに、


突然ひなの顔が浮かぶ。


驚くと共に、浮かんだひなの姿が愛おしく、抱擁しようとした。

ひなを抱きしめるようにすると、その優しさが、

そこに感じる魔力を掌で包み込める感覚になり、

掌の内側に体温のような温もりを感じ、

指先に微かな振動が伝わった。


手の中の温もりが、ひなの笑顔に重なった。


掴めたのか…


デーモンロードが

「掴んだようだな」


「わかるのか」


「わかる。まだ最初だがな」


デーモンロードがまた火球を作った。

「いくぞ」


もう一度目をつむり、魔力を”抱きかかえる”ように包む。

ひなを守るイメージを抱きながら、”壁”で守ろうと意識を集中する。


(ひなを……守る!)


直人が目を開いた瞬間、彼の周囲の魔力が「意図」を持って実体化した。

飛来した火球が、直人の目の前に展開された

防壁ファイアウォールに激突し、

エラーを吐き出すように霧散する。

守る感覚が、火球の衝撃を受け止める“壁”になった。


火球をはじく事が出来た。


「出来た」

挿絵(By みてみん)


デーモンロードが

「よし、その感覚を持ち、訓練を続けるが良い」


シズクが淡々と言った。

「これで、初心者から初期レベルになりました」


身も蓋もない。

だが、胸の奥にだけ熱が残った。


直人は小さく息を吐く。

「……次は、“守る”を運用じゃなく、力でやる」


ミリアが囁く。

「魔王さま♡ いま、少しだけ“魔界側”の顔でした♡」


デーモンロードが最後に低い声で言う

「これが本当の始まりだ。

 だが、貴様がまだ見ぬ高みがある事を忘れるな」


よし、俺は強くなり、守るべきものを守る。

直人は息を吐き、掌の余熱を感じながら夜の静けさを聞いた。


守るために動いた手が、ほんの少しだけ確かな重さを取り戻していた。


(つづく)

きっかけを掴んだ直人君、

やっと、ここから本来の魔王道が始まることになります。

しかし、そこはそれ、直人君流の魔王道としての成長です。

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