表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リモート会議してたらダンジョン管理者になって、改善してたら魔王に定義されました。略称「リモート魔王」  作者: 遠藤 世羅須
第二章 魔王編 通勤魔王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/45

第二章 第18話 食料危機

【PV4000到達感謝です】

階層増やす決断した直人、しかし、ダンジョンでは不穏な空気が漂っていた。

門の揺らぎ。

B4の増設を急ぎたい。門を安定させる“厚み”が要る。だが——


ダンジョンの空気が、妙に荒れていた。

いつもなら訓練部屋の方から、

金属音と「うおー!」みたいな陽気さが聞こえる。

今日は聞こえない。

代わりに聞こえるのは――地の底からうめくような音だった。


直人は杖のUIを開いた。

そこに、赤い通知が並んでいる。

【食糧:不足】

【士気:低下】

【意見箱苦情】「配給所で小競り合い」


直人は唇を噛む。

(そりゃそうだ。殺させない運用にした。撤退させる。

 でも、撤退させたら……肉が落ちない)

背後から、ぬるい声。

「魔王さま♡ 反乱の香り♡」

直人は目を閉じて、深呼吸を一つだけした。

「想定内だ。ミリア、あれを始めるぞ」

次の階層を造り、レベルを上げるためには、圧倒的な魔物の増員が必要だ。

そのためのインフラ投資だ。


訓練部屋の隣、普段は魔物がだらだらしている休憩区画に、

急ごしらえの“集会所”を作った。

テーブルは石材、椅子は木箱。

木箱には、なぜか「持ち帰り箱」と刻印がある。

直人は見なかったことにした。


そこに並ぶのは、代表者たち。

ゴブリン隊の班長グブ。

トロルの料理当番。

ワーウルフの狩猟担当。

そして、デーモンロードは来ない。ボスは雑務に出ない。

代わりに――

配下の魔人が立っていた。

書類を抱えて。

顔が「総務」だった。

書類の一枚目に、赤字で「懲戒規定(案)」が見えた。

直人は見なかったことにした。

挿絵(By みてみん)


魔人が咳払いをする。

「魔王さま。食糧に関して、現場の声を――」


トロルが鍋を抱えたまま言う。

「肉がない。魔獣も死なないから食えない」

ワーウルフが低く唸る。

「獲物がいない。侵入者は逃げる。狩りに行けと言われても困る」


直人は会議で詰められる管理職のように頷きを繰り返す。

「討たせないし、逃げさせてるからな」

全員の視線が直人に刺さる。

刺さるが、直人は刺さったまま言う。

「供給を増やす。殺さずに食料を増やす」


一瞬、沈黙。

次に、トロルが聞き返す。

「どうやって」

直人は杖の画面を表示した。

「生産する」

ミリアが嬉しそうに言う。

「農園♡」


直人は杖で新規部屋のメニューを開く。

増築は“クリック一発”ではない。

このダンジョンは、現実と同じで――工数がいる。

【新規部屋:追加】

候補:農園(未解放)


直人は画面を見て、静かに言った。

「……資材足りない」


結局、資材調達は“現場”に振る。

デーモンロード配下(総務魔人)が指示を回す。

オークが石材化班、リザードマンが土木班、

トロルが運搬、ゴブリン隊が工作班。


直人は現場の動線を引くだけに集中した。

以前、シズクやミリアから聞いていた「作物」だ。

【作業指示】

・採掘:B2通路外壁(崩落禁止)

・予定作物:無限キノコ、増殖魚、マナミート


シズクが控えめに頷く。

「妥当です」

直人は内心で安堵する。

(戦闘メイドに“妥当”と言わせた)


問題は、農園の“中身”だった。

水源。光源。温度管理。

魔界の地下で、農業。

普通に考えれば無理だ。


直人はミリアを見る。

「……これ、誰が設計する」

ミリアは笑った。

「魔王さま♡ エルフです♡」

直人は確認する。

「雇えるのか」

「雇えます♡」

「条件」

「食事♡ 居住♡ 権限♡映え♡」


直人は眉を寄せる。

「最後は趣味だよな」

ミリアが涼しい顔。

「エルフは、土と水に口出します♡」

直人は淡々と返す。

「現場が回る口出しは歓迎。映えの口出しは却下」

ミリアが指を鳴らす。

「呼びます♡」

“すぐ来る”のは都合が良すぎるので、直人は止める。

「待て。契約書を作る。KPIも」

ミリアが目を丸くする。

「農園にKPI♡」

「治安対策だからな」


翌ダンジョン日。

(念のため一度戻り、またミュートしてきた)

農園予定地――増築中の巨大区画に、ミリアが連れてきたのは、

妙に目が据わったエルフだった。

ベテランに見える。顔が“百年単位の職人”だ。


エルフは直人を一瞥して言った。

「……魔王? 人間?」

直人は胸を張らない。

「異界から来た。農業は素人だ」

エルフは頷く。

「素直は良い。嘘つきは土が嫌う」

ミリアが得意げに言う。

「この方、魔界農務の達人です♡」

直人が手を上げる。

「まずは要件から」


直人は契約UIを出す。

【雇用:エルフ(農園長)】

職務:農園設計/栽培指導/生産安定化

報酬:食事改善/居住区画/資材優先権

福利:『完全オーガニック魔素の専用温室』付与


エルフが笑った。

「シリカと申す。契約する魔王は初めてだ」

直人は淡々。

「現場は雇用が支える」

ミリアが拍手しそうになって止める。

「魔王さま、板についてる♡」

直人は一瞬、目線をミリアに向ける。


そして、改めて

「作れるのか。無限キノコ、増殖魚、マナミート」

シリカは指を三本立てた。

「無限キノコは可能。増殖魚も可能。だが、条件がある」

直人は頷く。

「何だ」

「水だ。水源が弱い。今のままだと“増えない”」


直人は杖UIを見る。

水源設備が「未設置」だ。

ミリアが笑う。

「魔王さま♡ 水、どうします♡」

シリカが即答。

「掘れば良い。地下水脈を読む」


直人は総務魔人を見る。

「掘削班を追加。安全最優先。崩落絶対回避」

総務魔人が真顔で言う。

「崩落時は安全確認できる迄、食料生産できません」

ワーウルフが即反応

「崩落絶対阻止」

総務魔人が言う

「ご安全に」


ミリアが囁く。

「魔王さま、完全に管理職♡」

直人は聞こえないふりをした。


直人は、再び現世に戻り、無事を確認して戻ってくる。


そして――

農園の設備が揃う。


まず、無限キノコ。

見た目は普通のキノコ。

ただし、切っても切っても生える。

切り口が“じわっ”と再生する。

直人は眺めて言う。

「……こわい」

シリカは平然。

「食べ物だ。怖がるな」

シズクが頷く。

「厨房で制圧すれば問題ありません」

直人は一拍置く。

「制圧って料理用語じゃないよな」


次、増殖魚。

水槽――いや、池ができた。

水面に小さな波紋が広がり、

最初の一匹がふわりと分裂するように二匹に増えた。

次の瞬間、数が倍になり、また増えて……

直人は思わず息を呑んだ。


直人は杖の画面を見る。

【警告】魚:増殖速度が想定超過

【提案】抑制:捕食者の投入(小)


直人は即答しない。

「……捕食者って誰だ」

ミリアがにっこり。

「スライム♡」

直人は頷く。

「採用。抑制は“食べて調整”が一番平和」

シズクが淡々と補足する。

「食べて太ったスライムを私が制圧(調理)します」

直人は胃を押さえた。

「……この世界の平和の概念は“食べて回す”だな」


最後、マナミート(人工肉)。

シリカが言った。

「魔素を繊維化する。噛みごたえを作る。味は――調整次第」

シズクが静かに一礼。

「調整は私が担当します」

直人は返す。

「味見だけする」

ミリアが小声で囁く。

「魔王さま、成長♡」


直人は再び現実に戻り、

会議をこなし、家族と過ごし、再度来てみる。


数日(ダンジョン日)が経つ。

配食の列が変わった。

押し合いが減る。

意見箱には投書が無くなった。

代わりに増えたのは、申請だ。


グブが板を出す。

『転職希望届(農園)』

ボゴが続く。

『配置転換希望(魚係)』


直人は目を細める。

「……申請文化、まだ続くか」

ミリアが涼しい顔。

「魔王さまが現実で使うから♡」

直人は一拍置いて言う。

「……俺、教育してない」


農園では、魔物たちが働いていた。

ゴブリンがキノコを切り、スライムが池を掃除し、

リザードマンが水路を整備し、トロルが運搬している。

なぜか皆、妙に真面目だ。

挿絵(By みてみん)


シリカが腕を組んで言う。

「働けば腹を満たすものを得られる。

 腹が満ちれば刃は収まる。

 他の作物も追々増やす」

直人は頷く。

「統治の基本だな」

ミリアが嬉しそうに言う。

「魔王さま♡ いい魔王♡」

直人は、一言。

「運用だ」


その瞬間、杖のUIに新しい通知。

【完了】農園:稼働開始

【改善】反乱予兆:沈静化

【想定】人口:増加(※食糧改善のため)


直人はゆっくり画面を閉じた。

食糧が改善すると、人口が増える。

人口が増えると、また管理が増える。

どこまで行っても――仕事だ。

階層増設で人口は必要だ。

杖のUIを開く。


その瞬間、別の赤が一つだけ残っていた。

【門:不安定化(軽度)】


直人は画面を閉じずに、次の項目へ指を滑らせた。

【課題】

・農園拡張(設備不足)

・水源増設(恒久)

・人員再配置(転属希望:増)


直人は小さく息を吐いた。

「転属か……。定期異動させるか」

ミリアが、誰にも聞こえない声でクスクスと笑った。

「よっぽど恐ろしい支配体制ですよ、それ♡」


農園の奥で、無限キノコが静かに増えていた。

増え方が“自然”だった。

ミリアが、誰にも聞こえない声で笑った。

「夜より、よっぽど好き♡」

直人は気づかないふりをして、仕事を続けた。


(つづく)

食料事情を改善したので、ようやく階層増築に取りかかれる。

直人は傷む心で前に進む。


※ お知らせとお詫び

  他作の名前をうっかり使ってしまっていましたので、訂正入れました。 

  訂正部分:直人の妻の名

       誤)美咲

       正)美沙

  申し訳ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ