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「リモート魔王」――改善してたら魔王に定義されました。家族との絆が削られる魔王に…  作者: 遠藤 世羅須
第一章 定義してください

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22/83

第一章『定義して下さい』総集編

第一章『定義して下さい』の総集編です。

お時間厳しい方は、これだけ読んでいただけますと、概略がわかるかと。


第一章は、巻き込まれた会社員・佐倉直人が、

“異界の管理者”として定義され、

最後には家族を守るため自分の意思で“魔王”を引き受けるまでの話です。

朝6時半。

佐倉直人(32)は、目覚ましより先に“家”に起こされるタイプだった。

「パパー! みて! きょうの うんこ、ながい!」


寝ぼけた脳が反射で仕事モードを起動し、直人は思った。

(……うんこの定義を……)脳が起きない・・・

「……すごいね。健康だね」

適切な表情が見つからなかったので、うなずきで代替した。


その日も在宅勤務。Zoom会議、Slack通知、資料修正。

いつも通りの“普通”。

普通だった、はずだ。

机の上のノートPCが、ふいに“変な画面”を出すまでは。


【異常事象発生】


事象名:管理者コンソールの出現

発生地点:佐倉直人 自宅PC

付随現象:画面右端に“推しキャラ”の外見をした女性ミリア出現

備考:対象(佐倉直人)が一時的にパニック状態になる


「いやいやいや、待ってください。ミリアって、あの……推し……」

直人は椅子の上で挙動不審になり、次に冷静を装い、最後に諦めた。

ミリアが涼しい顔で言った。

「こんにちは♡ 直人さま。管理者、就任おめでとうございます♡」

「待て待て待て……え、何? 俺、夢? 過労? いや睡眠は取ってる。たぶん」

挿絵(By みてみん)

【初期対応】

実施:ゴブリン運用(巡回)を“定義”

目的:侵入者対応の標準化(受付/誘導/牽制/深追い禁止)

結果:ゴブリン隊が“妙に丁寧”な役所対応に変質

侵入者――冒険者パーティが踏み込んできたとき、

     ダンジョンは戦場ではなく窓口になった。


冒険者パーティがやってくる。

すると、

グブが一歩前に出て、妙に丁寧に頭を下げた。

「侵入者さま。こちら、通行申請はお済みでしょうか」

剣士が固まる。

「……通行、申請?」

ゴブリンBボゴが板を出す。

『侵入申請書(簡易)』

ゴブリンCニョがペンを差し出す。

「こちらに目的を……」


直人は椅子からずり落ちかけた。

「受付するな! ダンジョンだぞ!」


冒険者たちは「管理者がいる」と警戒しながらも、

快適だが腹立つ導線に乗せられ、

真正面から戦えないまま少しずつ折られていく。


そして、やっと戦闘になる瞬間、

ゴブリン隊が仕掛ける――が、真正面からは突っ込まない。

横から挟み、距離を保ち、牽制だけして深追いしない。

剣士が叫ぶ。

「ちょ、こいつら逃げないけど、来ない! うざい!」

火球は撃ちどころがない。矢は遮蔽物に吸われる。


直人は画面越しに呟いた。

「……運用って、こういうことだよな」

ミリアが笑った。

「はい♡ 直人さま、最適化が得意です♡」

「褒めるな。褒めると止まらなくなる」

挿絵(By みてみん)

【ダンジョン管理者定義】


直人はまず、ものすごく当たり前の疑問を口にした。

「……待って。これ、時間配分どうなってるんだ?」


ミリアが、涼しい顔で即答する

「直人さまがミュートを押すと、ダンジョン側が加速します♡」

「あと、現実の会議が長ければ、こっちは夜になります♡」

「俺向けに最適化されるな。俺はユーザーじゃない、被害者だ」


それと、

「直人さまが『すみません』って言うたび、ゴブリンが一匹増えます♡」

「次に、現実で『持ち帰ります』って言うと、ダンジョンに“持ち帰り箱”が増設されます♡」

「やめろ! 世界のKPIを俺に寄せるな!」


【バックアップ更新】


更新:戦闘バックアップ定義 v1.1

内容:オーク投入の許可基準を厳格化

理由:現場過剰火力による事故防止(崩落・火災・漏れリスク)

直人は“強い部隊”を増やせば終わる世界じゃないと悟る。

強くすればするほど、事故が起きる。

そうすると、現実と二重インシデント。

「……俺がやってるの、攻略じゃなくて管理だな」

ミリアが嬉しそうに頷く。

「魔王♡」

「魔王じゃない」


【現実側インシデント】


Zoomで経営層が“怖い笑顔”を向ける。

リーダーが咳払いした。

「すみません、顧客が“謝罪の文言”を求めてます」


「えー……本件、顧客から“全社停止”の示唆が——」

「佐倉くん、顧客には“まず謝罪”だ。分かるね?」

直人の喉が、反射で「すみません」を準備する。

しかし、

「……遺憾です」

経営層が眉をひそめる。

「遺憾は政治だ」

(それはそうだけど…)

挿絵(By みてみん)

――ピロン。


その瞬間、直人のSlackに個別DMが飛ぶ。

妻:ひな、熱っぽい。迎えは私が行くけど、来れる?

娘:パパ まおうごっこ きて

直人は即座に返信する。

直人:状況把握。今30分で区切る。帰れる目途つける。ひな、熱測って。

現実の仕事、家庭、異界の管理。

同時に回すと、どれかが落ちる。


落ちたのは――異界だった。


そうとは知らない直人は、

病院に寄り、ポカリを買って、ひなに飲ませて、家に帰る。

熱は落ち着き、三人で夕飯を食べる。――普通に戻る。

だが普通の裏で、異界は“進む”。


家族の前ではPCを開けない。

夜。ようやく一人になって、直人は恐る恐るPCを開いた。

そこには、仕事メールの山と、異界ログの地獄が同居していた。

「……ミノタウロス、倒されてる?」


【放置による崩壊】


事象:ダンジョン側、重大インシデント発生

内容:フロアボス(ミノタウロス)撃破

結果:扉の解放/接続

備考:管理者不在時間の増大が原因


ログの文章は、やけにビジネス文書だった。

ミノタウロス:撃破(死亡)


【外部接続判定:成立】

接続先場所:幼稚園(施設名:××幼稚園)


直人は、血の気が引くのを感じた。

接続先として表示されたのは――ひなの幼稚園だった。

「やめろ!そこはひなの幼稚園だ!ひなに手を出すな!」


「……俺のせいで、扉が開いた……」

挿絵(By みてみん)


【幼稚園・門・ミリア先生】


翌朝。

ひなが心配だから送っていく体裁で幼稚園へ行くと――

「おはようございます♡ 直人さま」

“ミリア先生”が、最初からそこにいたみたいに出迎えた。

挿絵(By みてみん)

直人の脳が一瞬「いつもの先生」だと処理してしまい、

次の瞬間、吐き気がした。

(……魅了だ)

さらに幼稚園の一角に、結界の気配。

“門”の輪郭が見える。

現実に異界が刺さっている。


直人はミュートを入れる。

現実で黙る。異界で動く。

ミリア先生――いやミリアと並び、門をくぐる。

空気が変わる。匂いが違う。音が遠い。

そして、隣のミリアの服装が異界仕様に切り替わる。

青いダイヤのネックレスまで。

「……やっぱり、現実じゃない」


ミノタウロスの部屋には、角の痕跡。煤けた壁。倒れた松明。霧。

そして“扉の解放”を示す赤い残滓。


直人は三行で優先度を切った。

最優先は安全、次に復旧、最後に再発防止。

――異界だろうが現場は現場だ。まず火種を潰す。


【管理者の杖・雇用・勝負】


“管理者の杖”が姿を現す。

迷宮形状の変更。修繕。雇用。


フロアボス面接も始まった。

ドラゴンは「狭い・安い・飯まずい」で辞退。


第二候補はデーモンロード。


最終的に直人はデーモンロードと対峙し、

勝負をして、直人は“地の利”で勝つ。


そして直人は禁じ手を押す。

「現実に手を出さないなら、定義なしで雇う」

「現実でも禁じ手です♡」

「知ってる。だからこそ効く」


自分に戦闘の才能がないことを思い知りながらも、

“任せる”判断で彼を採用する。

自分が戦えないからこそ、支配と現場を分担する。

それが直人の管理だった。


【封印条件】


最後の大仕事は、現実世界に繋がる門を閉じること。

封印コマンドは現れたのに、発動条件だけが隠されていた。

試しても動かない。

その時、聞こえてきたのが、ひなの無邪気な声だった。


「パパ、まおうごっこしよう」


直人はピンとくる。

魔王になることが条件か。

手続きを踏み、玉座のある豪華な部屋へ。

座るとステータスが解放され、“魔王”になる(なったはず)。

だが最後の鍵は――現実に戻って、魔王を“定義”することだった。


【第1章ラスト】

深夜。妻と娘が寝たあと。


【定義登録:未】

直人は手が震える。指が伸びない。深呼吸をする。


そして、現実側のテキスト欄に打ち込んだ。


魔王の定義:

「現実を守るために、異界を支配し、門を閉じる者」

入力が確定した瞬間、画面が静かに光った。


【定義登録:完了】

直人が「魔王」になった瞬間だった。


ミリアが画面の中で、満足そうに微笑んだ。

「おめでとうございます♡ 魔王さま♡」


【封印:発動条件達成】


直人は封印コマンドを見る。

封印が、初めて“押せる”状態になっていた。

現実の静けさの中で、異界の扉が最後に呼吸する。


最終確認。

【最終確認】封印を実行しますか?

YES / NO

直人は、YESを押した。


次の瞬間、画面が真っ白になる。

音が消える。空気の密度が変わる。

時計の秒針が――止まったように見えた。

封印処理:1% … 7% … 18% … 93% … 99% …

接続先:幼稚園/物置裏(推定)

対応:魅了レイヤーを一時隔離

注意:隔離は削除ではありません


直人の手が止まる。

「削除じゃない?」

背後から、ぬるい声。

「削除って、こわい言葉ですよね♡」


【警告】門は閉じますが、“残留”が発生する可能性があります。


直人は息を飲んだ。

「……やめろ。続きを出すな」


(第1章 定義してください 完)


お読み頂きありがとうございました。この後第二章「魔王編」が始まります。是非またお越し下さい。

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― 新着の感想 ―
わかりやすい総集編で素晴らしかったです。これだけ単発でも確かにダイジェストとして、十分に成立しそうな気がします。振り返ってみて、改めてとても面白かったです。今回も楽しく読ませて頂きました。
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