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リモート会議してたらダンジョン管理者になって、改善してたら魔王に定義されました。略称「リモート魔王」  作者: 遠藤 世羅須
第一章 定義してください

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第20話 魔王定義 そして封印

いよいよ最後の大仕事が待っている。直人は色々わからないままに現実を受け入れ、家族を守るために進む。

直人は迷宮の外周を確認する。

デーモンロードはフロアを統治し始めていた。

通路の空気が落ち着き、影が整列している。

「……支配って、こういうことか」


デーモンロードが淡々と言った。

「門を閉じるなら、貴様が“位階”を得る必要がある」

直人が眉をひそめる。

「位階?」

「権限だ」

直人はミリアを見る。

ミリアはにやにや笑う。

「ほら♡ 権限♡」


直人は思った。

(杖は権限)

(封印は最上位)

(つまり、俺はまだ最上位じゃない)


その瞬間――

遠くから、声がした。

幼稚園からの声じゃない。

もっと近い、もっと柔らかい。

「パパー」


直人の背筋が凍る。

現実の声が、ここに届く?

「パパ、まおうごっこしよう」

ひなの声だった。


直人は息を止めた。

これは錯覚か。魅了か。

それとも、門が開いているから聞こえるのか。


ミリアが、満足そうに言った。

「聞こえましたね♡」

直人が低く返す。

「……聞かせたな」

「ヒナちゃんが呼んだんです♡」

「都合よく言うな」


しかし直人は、ひなの言葉の中に“条件”を見た。

まおうごっこ。

魔王。


直人はピンと来る。

「……魔王になることが条件か」

ミリアが、答え合わせをしないまま笑った。

「どうでしょう♡」

答えない。

答えないが、その顔が答えだ。


3 手続き(魔王への扉)


直人は深呼吸した。

嫌な予感しかしない。

だが、門を閉じるには、進むしかない。

杖のUIに、新しい通知が出る。


【権限昇格フロー(推奨)】

魔王認証:未

玉座セッション:未

定義登録:未

(※一部項目は封印されています)


直人は呻く。

「また封印」

ミリアが明るく言う。

「手続きです♡」


手続き。

この世界の“手続き”は、ゴブリンの申請書から始まっていた。

そして今、魔王ですら手続きが必要らしい。


グブが整列して出てきた。

妙に丁寧に頭を下げる。

「管理者さま、魔王昇格の申請でございますか」

ボゴが板を出す。

『魔王昇格申請書(簡易)』

ニョがペンを差し出す。

「こちらに“魔王になる目的”を……」


直人は顔を覆った。

「目的欄があるのかよ」

ミリアがにっこり。

「目的、大事です♡」


直人はペンを取る。

目的欄に書く。

「現実を守るため」


書いた瞬間、空気が変わった。

迷宮の壁の奥で、何かが“認識”した音がした。

これは、この世界の規約に通った。


次の紙が出る。

『玉座利用申請(本人確認)』

『魔王名(仮)登録』

『現実干渉禁止誓約(重要)』

『魅了の範囲:園児除外(必須)』


直人は即座に丸を付ける。

園児除外。必須。

絶対。


デーモンロードが低く言った。

「よい。貴様は支配を乱用しない」

直人は吐き捨てる。

「乱用する暇があるなら寝たい」


手続きが終わった瞬間、迷宮の奥に“扉”が現れた。

昨日の扉とは違う。

もっと静かで、もっと重い。


【魔王の扉】

ミリアが、嬉しそうに手を差し出す。

「行きましょう♡」

直人は一歩だけ遅れて歩き出した。

(現実に戻るために、魔王になる)

(矛盾してる)

(でも、やる)

扉をくぐると、空気が変わった。


4 玉座の部屋(解放されるステータス)


そこは、豪華だった。

露骨な豪華さ。

黒い絨毯、金の縁、妙に機能的な照明。

そして中央に、玉座。

玉座だけは、ゲームのやつだった。

挿絵(By みてみん)

直人は笑いそうになって、笑えなかった。

「……ここに座れって?」

ミリアがにっこり。

「座ってください♡ 直人さま向けです♡」

「やめろ、最適化すんな」


直人が玉座に座った瞬間、視界にステータスが展開する。

業務ダッシュボードの形で。


【魔王ステータス:解放】

管理者権限:L3 → L4

形状変更:上限解除(局所)

雇用枠:+1

結界設定:可視化

監査ログ:編集不可(※コンプラ)

封印:実行権限取得(条件は別)


直人は眉間を押さえた。

「封印、まだ条件あるのかよ」

ミリアが笑う。

「最後のカギは“現実”です♡」

玉座の肘掛けに、最後の通知が出た。


【封印コマンド:発動条件】

条件:魔王を定義すること

定義場所:現実側

定義形式:テキスト(簡易)

(※定義が確定するまで、封印は実行できません)


直人は、言葉を失った。

定義。現実。テキスト。

最悪に“直人向け”だ。

「……ここで魔王になっても、だめなのか」

ミリアは涼しい顔。

「現実で魔王にならないと、門は閉じません♡」

直人は立ち上がった。

玉座が背中で重い。

「戻る」

ミリアが頷く。

「戻りましょう♡」


5 現実:まおうごっこ(そして定義)


直人は結界を抜け、幼稚園への門の所に出た・・・つもりだった。

ひなは幼稚園にいたはず。


しかしここは、幼稚園じゃない。

自宅だ。どういうことだ?


戻る時に違和感はあった。

身体が浮くような感覚。

周囲の景色が一瞬闇に沈んだ。

足元の黒い絨毯がフローリングの感触に変わり、

空調の微かな音が耳に戻ってきた


結界……なのか……。


ひなが、布団から顔を出している。

現実の時間が動いた。

いつの間にかミュートが切れている。


直人は、自宅のリビングにいた。

さっきまでの迷宮の豪華さが、嘘みたいに狭い。

ひなが、布団の中から言う。

「パパ、まおうごっこしよう」

直人は膝をついた。目線を合わせる。

「……いいよ。やろう」

妻がキッチンから声をかける。

「元気なら少しだけね」

「少しだけ」

ひなは嬉しそうに笑う。

「パパがまおう」

直人は頷いた。

「うん。パパが魔王」

ひなは腕を伸ばす。

「じゃあ、まおうは、ひなをまもる?」


直人は、そこで完全に理解した。

魔王とは。

支配者じゃない。

勝つための称号じゃない。

現実を守るための役割だ。


直人は低い声で、しかしはっきりと言った。

「守る。魔王は、守る」

ひなが満足そうに頷いた。

「じゃあ、ゆうしゃは、ねる」

「勇者は寝ろ」

「うん」


ひなが眠りに落ちるのを見届けて、直人はそっと立ち上がった。

妻が小声で言う。

「仕事、戻る?」

直人は頷く。

「うん。……でも今日は、“定義”だけ」

妻は意味が分からない顔をしたが、何も聞かなかった。

聞かない優しさが、現実の結界だ。

直人はノートPCを開いた。

画面の端で、管理者の杖のUIが待っていた。


【定義登録:未】

直人は指を置き、息を吸う。

そして、現実側のテキスト欄に打ち込んだ。

魔王の定義:

「現実を守るために、異界を支配し、門を閉じる者」

挿絵(By みてみん)


入力が確定した瞬間、画面が静かに光った。

【定義登録:完了】

【封印:発動条件達成】


直人は、喉の奥で息を飲んだ。

笑いは出ない。

でも、もやもやが少しだけ形になる。

ミリアが画面の中で、満足そうに微笑んだ。

「おめでとうございます♡ 魔王さま♡」


直人は低い声で返す。

「……これで終わりだ。門を閉じる」

封印コマンドが、初めて“押せる”状態になっていた。

直人はカーソルを合わせる。

現実の静けさの中で、

異界の扉が、最後に呼吸する。


最終確認。

【最終確認】封印を実行しますか?

YES / NO


直人は、YESを押した。

次の瞬間、画面が真っ白になる。

音が消える。空気の密度が変わる。

リビングの時計の秒針が――止まったように見えた。


直人は反射で立ち上がりかけて、椅子の脚が床を擦りそうになり、

慌てて力を抜いた。

物音を立てるな。妻が起きる。


画面が暗転し、進捗バーが出る。

封印処理:1% … 7% … 18% … 93% … 99% …

接続先:幼稚園/物置裏(推定)

対応:魅了レイヤーを一時隔離

注意:隔離は削除ではありません


直人の手が止まる。

「削除じゃない?」

背後から、ぬるい声。

「削除って、こわい言葉ですよね♡」


【警告】門は閉じますが、“残留”が発生する可能性があります。


直人は息を飲んだ。

「……やめろ。続きを出すな」


(第1章 定義してください 完)

お読み頂き誠にありがとうございます。これにて第一章「定義して下さい」終了となります。タイトル回収ですが、直人にとっての不穏な終わり方です。この後第二章「魔王編」が始まります。一章以上に直人にとって色々な事が起こります。ミリアとのコンビも更に絶好調?になっていきます。是非とも続けてご支援頂けますと嬉しいです。

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