第380話 ハーイ!アーリン!
「ハーイ!アーリン!セナ!お久しぶり!」
私とセナが中庭でいつもの日課の稽古をしていると、一号が突然声を掛けてきた。
ビックリした私は防御を忘れてセナに良い一撃をもらってしまった。
「痛い!いや。もうお久しぶり!毎日毎日今か今かと待ってたんだから!」
私は痛みで頭をかかえながらもうれしさのあまりしどろもどろになってしまった。
「みんなを呼んでくる!」
セナはあわてて家の中へと入って行った。
私は速攻で一号に抱き付いたんだけど、よく見たら知らない子がいっぱいいるじゃないの。しかもなんかみんなサオリやイサキみたいな顔してるわ。あれ?なんか一人、耳がとがったのもいるわ。もしかしてエルフ?
「ねえ。この子達って?」
「うん。そうだよ。新入団者だ。」
「やっぱり。私、アーリンよ。よろしくね。」
私がぺこりと頭をさげるとそれを察知してそれぞれ簡単に挨拶を返してくれたが私の知らない言葉だった。もしかしてジパン語かしら。
「ああ、そうそう。こいつらオレやサオリみたいな転移者で王国人でもないから王国語は通じないよ。」
私が怪訝な顔をしていると一号が答えてくれた。
「やっぱりそうなんだ。で、一人だけ毛色の違うすごい美人さんがいるんだけど、もしかして?」
「さすがはアーリンだな。抜け目ない。そうだよ。エルフだよ。」
「エルフ!私、亜人を初めて見たわ。」
私が大きい声でエルフなんて言うもんだから、何事かとエルフ(フローラ)がこっちを見た。あわてた私は意味もなく頭を下げてしまった。亜人だって同じ人間なのに変な態度をとるのは良くないよね。失敗、失敗。
「その事も含めて詳しい事はみんなの前で言うから。」
そう言って一号はアイテムボックスから椅子を出すと中庭に並べ始めた。
ほどなくして家の中にいたみんなが出てきた。みんな、一号とリオ、イサキ、ホノカと再会を喜び合っていた。
サオリが船組のエイハブとマームを連れてくると一号はエールとオレンジジュースをテーブルに並べ始めた。
「みんな!まずは再開を祝して乾杯だ!」
「「「「乾杯!」」」」
ちょうどお昼時だった私達は一号の出してくれた料理と酒やジュースをたしなみながらそれぞれの近況を話した。私は一番興味のある人物のフローラの元へと行った。他の旧メンバーもそれぞれ新メンバーに話しかけていた。通訳は一号にサオリ、ホノカもしてくれた。
「ああ。ちょっと遅れたけど、新人のみんな、自己紹介しようか。まずはみんなが興味津々のフローラから。」
「フローラです。エルフです。みなさん。よろしくお願いします。」
一号に促されてフローラが自己紹介したけど今度は片言の王国語だった。たぶんこの挨拶は前もって練習してきたんだろうな。みんなは拍手で受け入れた。
新人のみなさんの挨拶が一通り終わった所で一号がまたとんでもない事を言い出したんだ。
「新人さんもいっぱい増えてオレ達の家も手狭になった。そこでジパンに新しく家を建ててそこに拠点を移そうと思うんだけど。」
「ジパン?王国を捨てるの?」
私はあわてて質問した。
「いやいや。話は最期まで聞いてくれ。アーリン。王国は絶対に捨てはしないよ。オレやみんなの生まれ育った国だからね。この家もそのまま残して、住んでるみんなもそのままここで今まで通りの冒険者活動をしてくれれば良い。ただしオレや新人のみんなはジパンに建てた家に住んでそこで新たに冒険者活動を行うってだけさ。」
「そこの拠点には私達古参組でも住めるの?あと、また振り分け試験でもするの?」
「うん。今のところは希望者がいれば全員受け入れるつもりでいるけど。でもアーリン。ジパンに住むって事は右も左も分からず、言葉も何も通じない外国に住むって事だぞ。それにおいそれとは王国に帰れなくなるかもしれないぞ。行きたいみたいだけどよく考えた方が良いぞ。」
「でもアメリやサオリもいるんでしょ。」
「ああ、イサキもね。」
「そうしたら全然大丈夫じゃないの。今度こそ私は連れて行ってもらうからね。」
私は必死にアピールした。だって強くなるためには一号と離れてはだめだと気づいてるからね。それにおいそれと帰れないって言っても、サオリがいればワープですぐに帰れるから大丈夫じゃないの。
「分かった。分かった。アーリンはジパン移住組に決定だ。他のみんなもアーリンみたいにすぐ決断しなくて良いからじっくり考えてから決めてくれ。新人のみんなやサオリ達はジパンに戻るけど、オレはしばらくの間、こっちにいるからその間に決断してくれれば良いよ。」
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結局の所、ジパンに移住するのは私の他はセナと一号の従魔のクロエだけだった。クロエと同じく従魔のエイハブとマームも行きたがっていたが住処であり拠り所の海賊船をジパンまで持ち込めないと言う事で泣く泣くあきらめていた。でもあの勢いならいつかは海賊船でジパンまで行くと言いそうね。王国本部の本部長はエイハブが務める事となった。魔物のエイハブが本部長とはとんでもない話であるが、戦闘力、人間性?、一号からの信頼性ともずば抜けているため他の人間の隊員からは特に文句は出なかった。まあ表向きは渋い素敵なイケてるおじさまだからね。本性を隠していれば外交上も問題なしだわ。
ジパンでの新居が完成するまでの間、私達新参の王国組もイサキ家に居候する事になったんだけど、その御殿の立派さには驚いちゃった。まるでお貴族様のお館なのよ。それもそのはず、イサキのご先祖様はジパン建国の英雄だって言うじゃないの。本来ならイサキ家がジパンの王族でもおかしくはないのよね。でもこの国ジパンは偉い人の地位を投票で決める民主国家なんだって、だから王族でも貴族でもないらしいけどイサキがお嬢様なのは間違いないわ。だってこんな立派なお屋敷に住めるんだもの。うらやましい。
ところで肝心のジパンなんだけど、私達の王国とぜんぜん違うの。まず住んでる人何だけどさ。みんな黒目黒髪でサオリみたいな顔してるの。外国に来たって実感できるわ。だから逆に私や一号、リオ、セナの王国人は珍しいみたいでどこに行ってもじろじろと見られるわ。まあ私達が異邦人なんだから仕方ないけどさ。そう言えばホノカを始め、新人さん達はみんなサオリみたいな異世界転移者でジパン人みたいな顔をしているわね。そこらへんもここジパンに新拠点を決めた理由でしょうね。一号自体も異世界転移者みたいなものだから。
私達の共通語は一応王国語なんだけど、ホノカ以外の新人が誰も王国語を話せない事から、これからジパンに住む事だしジパン語で話そうと言う事になったわ。おかげで夕食の後は毎日イサキを先生にしてジパン語の特訓よ。私はこういうお勉強事は得意だったはずなんだけど、一号を始めとする異世界転移組には敵わなかったわ。彼女らはあっと言う間にジパン語を習得して行ったわ。これじゃまるで王国人が頭悪いみたいじゃないの。王国人の名誉のためにも私はできの悪いリオとセナを居残り特訓させたわ。二人ともぶうぶう文句言ってたけど、一号が、嫌なら王国に帰っても良いよと言ったら急に大人しくなって目の色を変えて勉強しだしたわ。
そんな感じで昼はダンジョンで冒険、夜はイサキ教室でジパン語の勉強をしていたらあっという間に半年が過ぎて、私達の新居が大方完成したわ。
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