第378話 コウメイじゃなくてすまないんだけど
「おい!コウメイじゃなくてすまないんだけど。」
「え?アメリ?」
「アメリなの?」
ユウとトシコが同時に声をあげた。そして声の聞こえる方、わたしの方を見た。
「アメリ!」
わたしはあわてて懐に手を入れてこの前拾った一号の式紙を取り出した。
「ちょっと広い所に置いてくれないか。すまんけど。」
「あっ!」
ただの紙がしゃべったものだから、わたしはびっくりして式紙を落としてしまった。式紙はあっという間に式神、つまり一号へと形を変えた。
「いてて!おい!ホノカ!もうちょっと丁寧に扱ってくれよ!痛いんだけどさ!」
「アメリー!」
わたしは構わず一号に抱き付いた。抱き付いたのはわたしだけじゃない。フローラ以外全員が抱き付いた。そして声を上げて泣いた。今度の涙は絶望の涙じゃない。希望の涙。歓喜の涙であった。
「でもなんで?」
少し落ち着いたわたしはみんなに抱き付かれて少し困っている一号に聞いた。
「ああ、どうやら二号達がこの島に来たみたいだな。それでオレも復活したって訳さ。」
「ええ。アメリさん達の召喚に成功したとお母さんから今、念話の伝言が来たわ。」
なるほど二号が近くに来たおかげで式神の一号が復活できた訳ね。式神は術者の近くでないと力を持てないらしいから。それでフローラのお母さんが言ったって事は二号達はエルフの里にいるのかしら。
「みんな!喜ぶのはまだ早いぞ!ホノカ!状況を説明して!」
わたしはあわてて、迫りくるオークジェネラルと二匹の雑魚オークの事、さらにはオーク軍団本体の事を一号に話した。
「わかった!オーク軍団本体は二号達に任せるとして、まずはその三匹だな。そこのエルフっ子さん。ここの場所をもうちょっと広くしてくれるか。他のみんなは魔法の呪文を唱えて。」
「フローラです。わかりました。」
「「「わかった!」」」
一号のてきぱきした指示に答えてフローラは木や草を倒してちょっとした広場を作った。他のみんなは魔法の呪文を唱え始めた。
やがてオークジェネラルを先頭にして三匹のオーク達は草むらから躍り出た。突然何もない空間に出た物だから三匹のオークはつんのめって出てきて無防備だった。
「よし!撃て!」
「「「ファイアーボール!」」」
「エクスプロージョン!」
一号の合図でわたし達は一斉に魔法を撃った。二匹のオークは魔法の一斉攻撃に簡単にやられたが、さすがはオークジェネラル、まだ耐えていた。
「とどめ!」
一号は縮地で距離を詰めると目にも止まらない早業でオークジェネラルの首をはねた。
「トシコ!後にしろ!フローラ!右前方の木を倒して!みんなは呪文!」
一号は倒れたオーク達を回収しようとしたトシコを制して、フローラにはオークのあぶり出しを伝えた。悔しいけどわたしなんかじゃ到底及びもしないリーダーシップだ。一号一人加わっただけでいとも簡単にオーク軍団を次々と撃破して行く事ができた。二号達が駆けつけた頃にはオーク軍団は粗方壊滅していて、最後に残ったオークジェネラルはサオリが斬り払った。
「よし!生き残りはもういないようね。じゃあみんなで戦利品の回収といくよ!」
辺りを見回して鑑定で敵がいないのを確認して二号が言った。
「やったー!うわーん!」
やっとオーク軍団から解放されたんだ。わたしは安堵感から泣き崩れてしまった。トシコもユウもエリナもフローラまで大泣きしていた。
「よし。よし。ホノカもみんなもよく頑張った。」
二号はわたしをやさしく抱きしめて頭をなぜてくれた。わたし達美少女戦隊二軍はしばらくの間、泣き続けた。
「みんな!本当にごめんね。このバカのせいで死ぬような危険な目に会わせてしまって。」
泣いていたわたし達が落ち着いてきた頃、そう言って二号は一号の頭を小突いて謝った。
「すまない。」
一号にいたっては深々と頭を地面にこすりつけるまで下げて土下座までした。
「いや。いや。お二人とも頭をあげてください。悪いのはうかつに魔法陣を踏んだわたしなんですから。ごめんなさい。すみませんでした。」
ユウも土下座した。
「まあまあ、全員無事だったから良かったじゃないの。謝るのはもう終わり。それよりさぁ。そこの美人さんの事を教えてよ。」
サオリはエルフのフローラの事が気になってしょうがないみたいだった。
「あ、自己紹介します。フローラと申します。」
「え!日本語?」
フローラが自己紹介を始めたがその日本語にサオリがビックリした。もちろんその事も含めてフローラは語った。二号の方は一号からの念話である程度分かっていたのでサオリ程はビックリしなかった。
オーク軍団の回収はアイテムボックス持ちの一号、二号、トシコが中心になってみんなでやった。
「よっしゃ!オーク達の回収も粗方済んだし、後は家に帰って祝勝会を開こうぜ!ホノカ達の武勇伝を聞かせてくれよ!」
最後に一号がリーダーらしく締めようとした。
「あのう。マナが溜まるまでしばらくはお家の方には帰れないと思うんですけど。」
フローラが申し訳なさそうに言った。
「え!」
「ごめんなさい。」
フローラは頭をさげた。
「いや。うちにはサオリさんがおられるから。」
「うん。ここは王国のあった世界でもないし、わたしたちの地球でもないからわたしのワープじゃ戻れないみたい。」
「え!」
「じゃあ。もう戻れないの?」
二号が血相を変えてフローラに詰め寄った。
「だ、大丈夫です。マナが溜まれば戻れますから。」
「そのマナってのはどれくらいで溜まるの?」
「はい。普通は早くて一週間ほどなんですけど、二回連続で大量に消費していますから今回はもっとかかるかと思います。」
「一週間ね。」
そう言うと二号はブツブツと独り言を言っていた。
「もう。仕方ないなあ。みんな!一週間のお休みよ!バカンスを楽しもう!」
「やったー!」
まずはサオリが歓声をあげた。そしてサオリは王国語でリオとイサキに伝えた。
「「やったー!」」
遅れてリオとイサキが王国語で歓声をあげた。
「それでフローラ、悪いんだけどしばらくの間、みんなでお世話になりたいんだけど?」
「もちろん喜んでお世話でもなんでもします。みなさんにはエルフの島を助けていただいた多大なる恩がありますから、全力でおもてなしさせてもらいます。わたしの念話を受けて母も祖母も料理を始めました。エルフ流海の幸、山の幸のフルコースを楽しんで行ってください。」
「やったー!」
「カニもあるんだよね。」
王国語で聞いたリオとイサキの食いしん坊二人は時間差で喜んだ。もちろんアメリ二人とサオリも大喜びであった。
「ねえねえ。エルフの里からここまでくる間にきれいな浜を見つけたんだけど、海は泳げるの?」
「もちろん泳げますよ。水が凄く澄んでいてきれいな魚もたくさんいてほんとにきれいなんだから。超おすすめです。」
サオリがフローラに聞いてきた。サオリは食うより遊びの方が良いみたいだった。
「あ。でもわたし、水着を持ってないんだけど。」
「水着?大丈夫。あなたにはホノカの水着が合うよ。良いでしょ?ホノカ。貸してあげても。」
「も、もちろん。喜んで。」
サオリはスリムなフローラの体を一通り見わたした後に間髪入れずにわたしの名前をあげた。ええそうですよ。わたしとフローラはペチャパイ姉妹ですよ。ふんだ。
「じゃあさあ。フローラのお母さんとおばあさんも料理を作るまで時間がかかると思うんだ。料理ができるまでの間、海で泳ぐってのはどう?」
「どう?って誰に言ってんだ?サオリ。」
「もちろん。ポンコツのあんたじゃなくて二号の方よ。」
「誰が・・・」
「良いわね。大賛成。みんなの水着も出すわ。バカンスを思いっきり楽しもう。」
一号が文句を言いかけたのを遮って二号が言った。わたし達は二号を先頭に海までの道を急いだ。この短い期間だったけど何度も死ぬような目に会ってわたし達二軍は随分成長したと思うけど、あの少し頼りなかった二号もたくましく成長しているみたいだった。
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