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8/11

その日オイラは課題の作文には一切手を付けなかった。

その代わり、癒菜は作文がもうすぐ完成しそうだと、嬉しそうにオイラに言った


「楽勝、楽勝」


「一体なんて書いたんだよ」

「えへへ、読む?」



癒菜は上機嫌でニマニマと笑いながら、オイラに2枚の作文を渡してくれた。




『私の香り

神田 癒菜


私の今の体臭は、無味無臭です。

ちょっと汗の匂いするけど、無味無臭という事にします。


そう友達に話すと、友達は「癒菜は畳みの香りがする」と言いました。


茶道部に入っているから、だそうです。

私は畳みの優しくて落ち着いた香りが大好きです。

なので友達にそう言われて嬉しかったです。


ソフトクリーム売っているおばさんには「青春の香りがする」と言われました。多分、私が学生だからでしょう。 』



その他にも癒菜の作文には兄や両親、サイトで知り合った人などから聞いた自分の香りが書かれていた。


夏院先輩も癒菜の香りについて"畳"と答えていた辺りになんだか笑ってしまった。


そして最後は『色んな人の私の印象が聞けて面白かったです』で締めくくられていた。



「成る程な〜」


言いながら、オイラは癒菜に作文を返す


「参考になりそう?」


得意気な笑みを浮かべて作文をとった癒菜は、なんだか誇らしげだ。

その顔に少しだけ苛立ちを覚えたから、オイラは少し意地悪を言ってみた。



「参考にさせて貰うよ。引き続き宿題も頑張ってね」


「……そうでした」



誇らしげな顔が一瞬にして消え失せ、代わりに顔をうつ向かせて癒菜は分かりやすく落ち込んでいた。


本当に、表情豊かで面白いやつ。




そんな事を考えたその時、隣に座って本を読んでいた桜が、わざとらしく音を立てて本を閉じた。


なにやら、怒ってらっしゃる?




「寿くん、癒菜ちゃん。図書館では静かに、だよ」


口元を人差し指で押さえて、桜はまるで図書館のお姉さんみたいにオイラと癒菜を注意した。


「ごめん」

といって謝ると、またいつもの穏やかで優しい表情の桜に戻ったけど、なんだか普段怒らない人が怒ると怖い


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