魔物襲撃!これは策略か偶然か
グレイス辺境伯の屋敷をでたユウリ、ケイン、アルバート、バルドリックの4人と兵士たちは3つのチームへと分かれ、ルグナード領周辺の魔物討伐を開始した。
北側にあるルグナード領への門を守りつつ、周辺の魔物を討伐するバルドリックチーム。
ルグナード領の東側の魔物を討伐するアルバートチーム。
ルグナード領の西側の魔物を討伐するユウリ、ケインチーム。
ルグナード領は南側が断崖絶壁となっており、守るのは3方向のみとなる。
1チーム10人態勢と少数精鋭で、現場に緊張感が走る。
「警戒は怠るな!我らがルグナード領は絶対に守り抜くぞ!」
「「オオーー!!」」
バルドリックの言葉で、チームの指揮を上げる。
「戦闘に不慣れな者は後方に一度って。魔物を誘き寄せて、広い場所で戦うおう」
アルバートは冷静に兵士たちに指示を送り、現場の混乱を避けている。
「Cランク以上の魔物は僕とケイン君で相手をするから、兵士の皆さんは雑魚を倒してもらえますか?」
「私達も共に戦います!」
ユウリの言葉に納得できない兵士が声を上げた。
ケインがすかさず兵士とユウリの間に入り、間を取り持つ。
「師匠はなにもお前たちの実力を軽く見ているわけではない。師匠はSランク冒険者だ、下手すれば戦闘に巻き込まれる可能性がある。無駄な死傷者を出さないための最善の策なのだ」
ケインの言葉に兵士たちは引き下がる。
「ありがとうケイン君。兵士さん達への指示はケイン君に任せるよ。僕は巻き込まないように少し離れた場所で戦うよ」
「分かりました」
それぞれ戦い方は違えど、ルグナード領を守るための最善を尽くそうとしている。
全チームが配置へ着き、最初に戦闘を開始したのはユウリ、ケインチームだった。
周辺の森から複数の魔物が現れ、襲い掛かってきた。
「ケイン君は、ホワイトベアと雑魚をよろしくね。僕はそれ以外を始末するよ」
「わかりました。全員位置につけ!」
ケインは兵士に指示し、全員が戦闘態勢に入った。
ユウリはAランクの魔物2体とBランクの魔物3体を少し離れた場所へと誘導する。
「極寒のルグナード領にいるはずのない魔物も多いな、やっぱり誰かが仕組んだことなのかも」
ユウリは考え事をしながらも、攻撃をかわし、ルーンバスターで敵を叩き潰す。
「ほっ!」
ユウリは高く跳躍し、魔物から魔物へと飛び移るように攻撃していく。
一方ケインは、兵士たちの指揮をとりながらBランクのホワイトベアを相手にしていた。
「ハァッ!」
ケインはホワイトベアの攻撃を跳ね返し、勢いよく切りかかる。
「グオー!!」
ホワイトベアの腕を切り落とし、ホワイトベアは地面に倒れる。
兵士たちもCランク以下の雑魚を相手に必死に戦っている。
「!伏せろ!」
ケインは何かに気づき、兵士たちに指示する。
上空に巨大な影が合わられ、ケインの指示通りに兵士たちは地面に伏せた。
ドンという大きな音と共にAランクの魔物であるキングオーガが落ちてきた。
「ごめーん!ちょっと飛ばしすぎちゃった!」
後を追ってユウリが戻ってきた。
「師匠!」
ユウリの後ろには魔物たちが倒れており、そのうちの1匹を飛ばしてきたようだ。
「どうやら第一波は終わったみたいだね、他のチームも無事だといいけど」
ユウリの心配も虚しく、他のチームも襲撃を受けていた。
「引け!ここは僕が相手をする」
アルバートチームはスノードラゴンの群れに襲われていた。
「ハァ!!」
キンッ!と音を立ててアルバートの剣が氷に包まれたスノードラゴンの体表にあたる。
アルバートは渾身の力を込め、スノードラゴンの体を切り裂く。
アルバートのユニーク武器『ドラグレイヴ』はスノードラゴンとは相性がいいが、Aランク級の魔物を5匹も相手するのは至難の業だ。
兵士たちは矢に火をつけ、対抗している。
「ブレイズ!」
アルバートはスキルを使い、剣に炎を纏わせる。
アルバートは飛び上がり、スノードラゴンを切りつける。
炎を纏った剣はスノードラゴンの体氷を溶かし、首を切断した。
「グアー!」
激高した1匹のスノードラゴンが後ろの弓部隊に向かってアイスブレスを吐き出した。
「しまった!」
アルバートは他のスノードラゴンの尻尾に捕まり、守りに行くことができない。
アイスブレスを喰らえばたちまち体が凍り付き、最悪死に至る。
兵士たちは少しでもダメージを軽減しようと盾を構え、伏せる。
「クソッ!」
アルバートは守りに戻ることができず、その場にいた全員が絶望した。
兵士は皆目をつむり、衝撃を待っていたが、一向に衝撃が来ることはなかった。
兵士たちが目を開け、体を起こすとそこには、スノードラゴンの口にハンマーをねじ込み、ブレスを防いでいるユウリの姿があった。
「ユウリ!」
アルバートはスノードラゴンの尻尾を切り落とし、頭に剣を突き刺す。
ユウリも口から引き離したルーンバスターでスノードラゴンを粉砕した。
アルバートがユウリに駆け寄ろうとした時、ユウリが兵士たちの前に立ち言葉を放った。
「アル!後ろは僕が守る、今は目の前の相手に集中しろ!」
その言葉を聞き、アルバートはスノードラゴンへと視線を向け、再び剣に炎を纏わせる。
アルバートは叫びながらスノードラゴンへと飛びかかった。
「『ドラグニエル』!!!」
剣の炎は勢いを増し、スノードラゴンを真っ二つに切り裂いた。
「ハァ、ハァ、ハァ」
アルバートは息を荒らげながらもユウリ達の方を向き、剣を突き上げた。
その瞬間兵士たちは歓喜の声を上げ、喜びを分かち合った。
「よくやったね、アル。カッコよかったよ」
「ユウリ、どうしてここに?」
「僕たちの方も襲撃に遭って、一足先に片づけてきたんだよ。バルド君のところも襲撃に遭ってるみたいだったから、そっちはケイン君と兵士さん達に向かってもらってる」
ユウリはアルバートに状況を説明した後、周囲に魔物の気配がしないことを確認し、バルドリック達の元へと向かった。
しかし、ユウリ達がルグナード領の門前へ着いた時には戦いは終わっており、一度屋敷へと戻ることになった。
「やはり、他のところも襲撃に遭っていたか」
バルドリックを中心に報告を進めていく。
「襲撃されたタイミングがほぼ同時だったことから、何者かによる策略か、または何かに引き寄せられている可能性があるね」
「引き寄せられて?」
「うん、今回襲撃してきた魔物達は本来この地域に生息しない魔物まで混ざっていた。しかもそのどれもが高ランクの魔物ばかり。もし誰かの策略で連れてこられたのだとしたら、その人は結構な手練れってことになるけど、そんなことができる人なんて、この国には僕くらいしかいないんじゃないかな?」
「確かに、複数の、しかも高ランクの魔物を一斉に襲撃させるなんてこと、師匠クラスじゃないとできないか」
「でしょ?だから、引き寄せられている可能性のほうが濃厚になるんだけど、最近なにか変わったものを領地に入れたりした覚えはある?」
「あっ!アレは今どこにある!今すぐ持ってこい!」
バルドリックは何かを思い出し、部下に持ってくるように命じた。
「アレって?」
「実は数日前にルグナード領に初めて来たって言う冒険者の男が、ギルドに変わった杖を持ってきてな。珍しい杖で、希少価値の高そうなものだったから、うちの小規模なギルドでは買い取れないと言ったんだが、少額でもいいから買い取ってくれと言われてな、今は家の宝物庫に保管してあるはずだ」
バルドリックから説明してもらっていると、廊下から大きな叫び声が聞こえてきた。
「うわーーー!」
急いで声のした方に向かうと、廊下の突き当りの部屋の前で、兵士の一人がしりもちをついていた。
「どうした!?」
「あっあれを」
兵士の指さす方向を見ると、禍々しい紫色の光を放つ1本の杖が浮いていた。
「アレが話していた杖?」
「ああ、だが、あんな光を放ってはいなかったぞ!」
アルバートが鑑定をかける。
「呪われているね。何の呪いかは分からないけど、間違いなくあの杖が今回の騒動の原因だよ」
杖が放つ禍々しい光と魔力で近づくことができない。
「あの杖を壊さないと」
どうにかして杖に近づこうとしていたとき、兵士の1人が息を荒らげながら入ってきた。
「そっ外に!魔物が!」
いそいで部屋の外に出ると、ルグナード領全体を囲むように魔物が群がっており、空には複数のドラゴンが飛んでいた。
「この杖が呼び寄せたのか?」
あまりの魔物の多さに全員がその場に立ち尽くした。
「今は立ち尽くしている場合じゃないよ!兵士の皆さんは領民の非難を最優先に、僕とケイン君、アルとバルド君は手分けして魔物を討伐するよ!」
ユウリの指示でそれぞれが自分のやるべきことへと向かって行動をし始めた。
「いざ、最終決戦といこうか」




