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緊急クエスト発令⁉最北の領地へ緊急招集!

あれから数日、アルバートはユウリの家に入り浸り、一緒に生活をしていた。

相変わらずケインとは小言を言い合っていたが、一緒に鍛錬をしたり、依頼をこなしたりと、仲は縮まっているようだ。


「全く、お前はいつまで入り浸るつもりなんだ。師匠に迷惑をかけるな」


ユウリ、ケイン、アルバートの3人は、仲良くギルドに向かっていた。


「ユウリは迷惑がってなんかいないだろ?俺と一緒に暮らせて嬉しいはずだ!」


「その自信は一体どこからくるんだ?」


ケインとアルバートはユウリの後ろで言い争っている。


「2人とも仲良くなったよね~。最初はあんなに険悪だったのに、今じゃ並んで歩いてるんだもん」


ユウリは肩に乗っているモコを撫でながら話しかける。


「仲良くなどありません!」


「そうだよユウリ!変なこと言わないで!」


「もう、頑固なんだから~」


他愛のない話をしていると、あっという間にギルドに到着した。

ギルドの中には、すごい数の冒険者が集まっており、その中心にギルド長のアーノルドがいた。

アーノルドは3人に気づくと、大きな声で呼びかけた。


「丁度いいところに来たな、今しがた王国からのクエストが発令された」


クエストとは、受注期間が長い通常の依頼とは異なり、国や領主などから発令される緊急性の高い依頼のことである。


「今回のクエストはちと厄介でな、アステノン王国の最北の領地ルグナード領に複数の魔物の群れが発生したらしい。目撃されている魔物の種族はバラバラだが、そのどれもがCランク以上の魔物だと報告が上がっている。このままではルグナード領が壊滅しかねないということで、国の全域のギルドに協力要請が来たわけだ」


「ルグナード領に魔物とは、珍しいですね。ルグナード領は年中雪が降り積もる極寒地帯、住み着いている魔物もホワイトベアやスノーラビットなど、種族も限られているはずなのに」


「近隣の森で何かが起こったか、それとも誰かが手引きしているか」


「まだ何とも言いきれないけど、可能性はあるかもね」


3人は考察を膨らませる。


「うちのギルドからはCランク以上の冒険者は問答無用で参加してもらうつもりだ。参加した全員に報酬が与えられるそうだが、危険なクエストだということは重々承知している。命の保証もない。だが、この国を守るために、どうか尽力してほしい」


ギルド長は深々と頭を下げた。

しかし、冒険者の中には不満や不安を抱く者もおり、乗り気な冒険者は少なかった。

その様子を見たユウリは、迷うことなくギルド長に告げた。


「アーノルドさん、そのクエスト、僕ら3人が引き受けるよ」


ユウリの言葉に周りにいた冒険者がざわつき始める。

ギルド長も顔を上げ、大きな口を開けて驚いている。


「なっ何を言ってるんだお前は!いくらお前がSランク冒険者だからと言っても、今回ばかりは生きて帰れるかどうかわからんぞ!」


「うん、そうだね。でも、ここにいる冒険者全員で挑んだって、無駄な犠牲者が増えるだけだと思う。それなら、この3人で行った方がいいと思うんだ。もちろん、アルとケイン君も無理にとは言わないけど、2人がいかないなら、僕1人で行くつもりだよ」


ケインとアルバートは顔を見合わせて頷き、再びユウリの顔を見て言った。


「僕もその意見に賛成だよ。雑魚が何人いたって邪魔になるだけだしね」


「僕はどこまでも師匠について行きます!」


「ありがとう、2人とも。で、どうかな?アーノルドさん」


アーノルドは3人の覚悟の決まった顔を見て、真剣な顔で言う。


「わかった、許可しよう。だが、3人とも必ず生きて帰れ。これはギルド長命令だ」


3人は大きく頷いた。


「ならば早速出発の準備をしてくれ、ギルドに有るポーションや武器は好きな物を持って行っていい」


「なら、アーノルドさん、アレを持ってきてもらってもいいですか?」


「あっああ、アレか、待っていろ、すぐに持ってくる」


そう言ってギルド長は武器庫へと向かっていった。


「待っている間に僕たちはスキルガチャを回そう。2人ともポイントはある?」


「はい!ゴールドガチャが1回と、シルバーガチャが2回引けます!」


「僕はゴールドガチャが2回とシルバーガチャが1回引けるよ」


「じゃあ、アルはそのまま引いて、ケイン君には不足分のポイントを送るから、ゴールドガチャを2回引いて。僕は残ったポイントでブロンズガチャを引く」


「ユウリ、君がブロンズスキルにこだわっていることは知っているけど、今は緊急事態なんだから自分もゴールドガチャを引くべきだよ」


「そうですよ師匠!今回は本当に命の保証がない危険なクエスト、ゴールドガチャでユニークスキルを手に入れるべきです」


「2人とも初めて意見があったね。でも、僕はゴールドガチャは引かないよ。僕のポイント的に、ゴールドガチャを引けるのは1回だけ、今ゴールドガチャを引いたところで使えるスキルが手に入る可能性は低いし、それならブロンズガチャを引いて、スキルのレベルを上げる方がいいと思うんだ」


2人はユウリの正論に言葉を詰まらせる。

その隙にユウリがケインにポイントを送り、残ったポイントを全てブロンズガチャにつぎ込んだ。


「師匠!」


「ほら、迷ってる時間は無いよ!2人とも早くガチャを引いて!」


ユウリに急かされて、ケインとアルバートもガチャを引く。


「2人とも、何かいいスキルは手に入った?」


「僕は、瞬間移動のスキルと連撃強化のスキルが手に入ったよ。シルバーは毒無効のスキルだった」


「僕は、気配察知のスキルと衝撃派のスキルでした!」


「割といいのが手に入ったね」


「師匠は何のスキルを手に入れたんですか?」


「僕は、」


ユウリの言葉を遮るように、ギルド長が武器庫から戻ってきた。


「持ってきたぞ!」


ギルド長が持ってきたのは大きなハンマーだった。


「これは、師匠の武器ですか?」


「うん、ダンジョン制覇した時に手に入ったユニーク武器『ルーンバスター』。持つと詠唱無しでスキルを使うことができるんだ」


「師匠!ダンジョンを制覇したんですか!」


「そうだけど、今はそんなこと話してる暇はないよ」


「はっはい!すみません!」


ケインは慌てて謝る。


「ケイン君のもユニーク武器でしょ?どんな効果があるの?」


「僕の武器は『ヴァリアント』です。使用者の潜在能力を引き出す効果があります」


「僕のもユニーク武器だよ。名前は『ドラグレイヴ』、ドラゴン討伐に特化した武器だね」


3人はお互いのスキルや武器について共有し合う。


「よし、準備はできたね!ルグナードに出発しよう!」


「ルグナード領の安全地帯にワープマーカーが設置してある。転移装置でそこに飛んでくれ」


ギルド長に言われた通りに3人は転移装置でルグナード領に向かった。

転移した先はルグナード領を治めている辺境伯の屋敷の中で、同じ年くらいの男が声をかけてきた。


「もしかして、要請を受けてきてくれたギルドの冒険者か?」


「はい、ケスティアのギルドから来ましたSランク冒険者のユウリです」


「君が噂のSランク冒険者か!俺はグレイス辺境伯が長男、バルドリック・グレイスだ。気軽にバルドと呼んでくれ」


ユウリはバルドリックと握手を交わす。


「そっちの2人はお前の仲間か?」


「僕はアルバート、Aランク冒険者だよ」


「僕はケイン、Bランク冒険者だ」


2人も握手を交わす。


「バルド君、今どういう状況になっているのか、教えてもらえるかな?」


「ああ、こっちに来てくれ」


バルドリックに連れられ、領地が一望できるであろうバルコニーに案内された。

その先の景色を見て、3人は顔をしかめた。

バルコニーから見えた景色は、魔物の襲撃に遭い、崩壊した領地だった。


「昨晩、急に魔物達が襲撃してきてこの有様だよ。死傷者も少なくない。一度は辺境伯の私兵で追い払ったんだが、まだこの辺をウロチョロしている魔物も多くいる。家を失ったものはこの屋敷で匿っているが、この調子で襲われては、ここも危険になるだろう」


「君も戦ったの?」


バルドリックの顔や体には所々傷がある。


「ああ、俺こう見えて冒険者業もやっててさ、一応Aランク冒険者なんだ」


「Aランク冒険者一人ではどうにもならないレベルってことか」


「そういえば、僕たち以外に冒険者が見当たらないが、他のギルドからは来なかったのか?」


「いや、来てくれたんだが、大体の冒険者がCランクでな、太刀打ちできないと判断して返したんだ。こちらとしても無駄な犠牲は出したくないからな」


「他の冒険者を置いてきて正解だったみたいだね」


「君達で最後だったから、正直助かったぜ。まさか、国唯一のSランク冒険者が強い仲間を引き連れてきてくれるとは思わなかったがな!」


それから3人は、確認されている魔物の詳細やお互いの戦力について共有し合った。


「俺の武器『グラキエス』はこの領地に代々受け継がれているユニーク武器だ。氷の魔法を纏っていて、振るうと魔法が発動する。致命傷を与えるには少し弱いが、足止めはできるぞ」


「ここにいる4人と、ルグナード領の私兵だけで全ての魔物を討伐しないといけないのか。骨が折れそうだね」


「ああ、準備ができ次第、領地の周りにいる魔物を討伐しに向かう」


ユウリ達は荷物を置き、戦闘の準備を整える。


「ユウリ、お前その軽装備で戦うのか?」


ユウリはいつものフード付きローブに吐き潰された皮のブーツ、とても戦いに挑む格好とは思えない。

ケイン、アルバート、バルドリックは鎧を身に着けているため、ユウリの軽装が目立っている。


「僕はこれで大丈夫だよ。鎧とか、動きにくいから来たくないんだよね」


聞いていた兵士たちも驚いている。


「これがSランク冒険者の余裕ってかやつか!」


バルドリックはニカっと笑い、ユウリの背中をバンバンと叩く。


「それじゃあ、行こうか」


ユウリの合図で4人とルグナード領の兵士たちは魔物討伐へと向かっていった。

《登場人物紹介》

バルドリック・グレイス 21歳

グレイス辺境伯の一人息子。

冒険者としても活動しており、Aランク冒険者とかなりの実力をもつ。

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