わだかまりは酒と共に
アルバートと分かれたユウリ達は買い物を済ませ、家に帰った。
そのまま夜まで家でモコの観察をしたり、部屋の掃除をしたりして、ゆっくり過ごした。
しかし、ユウリはあまり元気がない様子で、昼間のことを気にしているようだった。
「師匠、昼間の事を気にしていらっしゃるのですか?」
ユウリを心配したケインが、紅茶を片手に話しかける。
「うん、ちょっと言いすぎちゃったかなって」
ユウリは明らかに悲しそうな顔をする。
モコは心配そうに見つめ、顔にすり寄る。
「彼はどうしてあんなに師匠に執着しているのですか?」
ユウリはうつむいたまま話し始めた。
「アルのお父さんも冒険者だったんだ。僕のお父さんが巻き込まれた事故に一緒に巻き込まれて亡くなって、お母さんの方も病気で亡くなってるから、境遇が似てるんだよね。昔は誰にでも優しくて共通の友達とかもいたんだけど、両親がなくなった頃から様子がおかしくなって、今みたいに執着するようになったんだ。きっと、もう大切に思っている人を亡くしたくなかったんだと思う」
「そんな理由があったのですね」
「アルは元々冒険者になるつもりはなくて、僕が冒険者になる事もものすごく反対してた。でも僕が引かないから、自分も冒険者になって、率先して危険な依頼を引き受けて。今回も無事に帰ってきてくれて嬉しかったのに、こんなことになっちゃって」
ユウリの目には涙が浮かぶ。
ケインはユウリの肩をそっとなで、慰めた。
「きっと仲直りできますよ。僕も少しなら仲良くできそうですし」
「うん」
紅茶を飲みながら話をしていると、ドアを叩く音が聞こえた。
「こんな時間に誰でしょうか」
ケインが立ち上がり、ドアを開けると、そこにはメイリーとその後ろに隠れたアルバートの姿があった。
「夜分にすみません、今日は兄がご迷惑をおかけたみたいで、お詫びをしにきました」
メイリーが籠いっぱいのお詫びの品をケインに手渡す。
「メイリーにアル、こんな時間にどうしたの?」
奥からユウリも顔を出し、2人を出迎えた。
「ユウリさん!この度は兄がご迷惑をおかけしました!」
「メイリーが謝る事じゃないでしょ?」
ユウリは何度も頭をさげるメイリーをなだめた。
「ゆっユウリ、あの、僕、謝りたくて」
メイリーの後ろに隠れていたアルバートがユウリに声をかけたとき、ユウリの目に涙を拭いた後があることに気づいた。
アルバートはすぐさまユウリに駆け寄り、両肩を掴んだ。
「泣いてたの?どうして?何があったの?もしかして此奴に何かされたんじゃ」
先走った解釈をするアルバートの頭にケインが拳をつき下ろした。
「いたっ!何するんだ」
「師匠から離れろ、落ち着いて、まずは話をちゃんと聞け」
ケインの冷静な態度に、アルバートも冷静さを取り戻す。
「ごめん」
ユウリは落ち込むアルバートの頭に手を当てて、優しくなでる。
「もういいよ、アルが僕の事大事に思ってくれてること知ってるもん。でもね、僕も同じくらいアルのこと大事に思ってるんだよ?いつも率先して危険な依頼に行ってくれるけど、無事に帰ってきてくれるか、いつも心配してる。今日だって、無事に帰ってきてくれて嬉しかったのに、あんな事になって、僕、悲しかった」
アルバートはユウリを抱きしめる。
「ごめん、ごめんね。いつも自分のことばっかりで、ユウリの気持ち考えれてなかった。本当にごめん」
「ううん、僕こそ酷いこと言ってごめんね」
2人はしばらく抱き合って、お互いに謝った。
「それと、謝る相手は僕だけじゃないでしょ?」
ユウリに諭されたアルバートは立ち上がり、ケインとメイリーの方を向く。
「すまなかった。ユウリに悪い虫がついたんじゃないかと思って、失礼な態度をとってしまった。メイリーも、迷惑かけて、ごめん」
アルバートは二人に頭を下げた。
「もういいよ、気にしていない。だが、今度師匠を悲しませてみろ、タダじゃおかないからな」
「もう人様に迷惑かけちゃダメだよ?」
無事に仲直りを済ませた4人は、ユウリの家に泊まる事にした。
ユウリはアルバートとケインのために酒を開け、メイリーが持ってきたお詫びの品を肴に晩酌を始めた。
「正直僕はまだ認めてはいないぞ!ユウリの側にいるなら、せめて僕ぐらい強くならないと!」
「お前なんてすぐに追い越してやる!師匠の隣に相応しいのはこの僕だからな!」
へべれけになり、打ち解けたケインとアルバートはお互いにマウントを取り合っていた。
「ほんとに懲りたんですかね?まだユウリさんを取り合ってますよ」
「2人ともお酒が入って、本音が隠しきれてないみたいだね」
「おじいちゃんが、『酒は飲んでも飲まれるな』って言ってました」
「僕らがお酒飲めるようになっても、ああはならないようにしようね」
ユウリとメイリーはぶどうジュースを飲みながら、高ランク冒険者のだらしない姿を眺めていた。
ー翌朝ー
「うぅ~、頭が割れそうだ」
「ユウリ~、水を持ってきてくれ」
見事に二日酔いになったケインとアルバートがリビングに転がっていた。
「メイリーは?」
「もう仕事にいったよ、まったく二人とも飲みすぎ」
ユウリはそんな2人を横目に、モコのお世話をしている。
「ユウリ~、頭が割れそうだよ、膝枕で頭を撫でてほしい」
「お前、師匠に迷惑をかけるな」
酔っ払い2人が性懲りもなく小競り合いをしている。
「2人ともうるさい!具合悪いんだからもう寝たら?僕はモコと買い物に行ってくるから」
わめいて倒れている2人を置いて、ユウリは町へと出かけて行った。
「酒は飲んでも飲まれるな~、だよね」
ユウリはモコにそう話しかけながら町の方へと消えていった。




