弟子入り志願は突然に
ギルドを出て家に帰ったユウリは獲得したスキルの整理をしていた。
「うーん、スキルのかぶりが多くなってきたな。俊足はレベルMAXの5レべまでいったし、脚力強化と腕力強化ももう少しでレベルMAXになっちゃう。ブロンズスキルは中身が全て解明しきれないほど多いらしいけど、僕の運が悪いだけなのかな」
ユウリはベットの上で足をバタバタさせながら、不満そうな顔でステータス画面を見ている。
スキルはかぶるとレベルアップし、レベル1~レベル5まで上げることができる。
レベルアップができるのはブロンズスキルだけで、シルバースキルとゴールドスキルはレベルを上げることができない。
「あっ、そういえば新しいスキルも手に入ったんだっけ」
ユウリはステータス画面をスクロールしていると、スキル欄にNewの文字がかかれたスキルがあることに気づいた。
<スキル:鑑定 見たモノのステータス画面を見ることができる>
「鑑定ってブロンズガチャでも手に入るんだ、薬草採取の依頼とか楽にできそうだなー」
それから2時間近くステータス画面を眺め続け、気づけばすっかり深夜になっていた。
「わー!もうこんな時間!明日は朝から魔物討伐の依頼があるから早く寝ないと!」
ユウリはランタンの火を吹き消し、布団にもぐり込み眠りについた。
ー次の日の朝ー
「うーん、良く寝たなー」
ユウリはカーテンを開け、日差しを浴びながら背伸びをする。
「うん、時間も大丈夫そう。いつもは寝坊してギルドに寄らずに依頼に行くから、帰ってきたときに凄く怒られちゃうけど、今日は時間に余裕があるし、ギルドに顔を出してから行こうっと!」
ユウリはいつもの大きなバックパックを背負って、ギルドへと向かった。
ギルドに向かう途中、朝市で買った大きなフランスパンを齧りながらギルド近くの道をあるいていると、ギルドの前で立っている人影を見つけた。
ユウリがギルドに近づいていくと、ギルド前に立っていた人物がユウリに気づき、近づいてきた。
「お待ちしておりました!師匠!」
「きっ君は昨日の。たしか、”貪欲の武士団のベイン”!」
「”銀翼の騎士団のケイン”です!」
「ごっごめんね~、名前とかあんまり覚えられなくて」
ギルド前で待ち構えていたのは、銀翼の騎士団の団長ケインだった。
「どうしたの?こんな朝早くに、何かの依頼?」
「いえ、昨日の無礼をお詫びしたく、師匠のことを待っていたのです」
「えっ!そうだったの?別に気にしなくてもよかったのに」
どうやら相当な時間待っていたらしく、必死に謝ってきた。
「昨日の事なら本当に気にしなくていいから。じゃあ、またね」
ユウリがケインを振り切り、ギルドに入ろうとすると、勢いよく腕を掴まれた。
「おっお待ち下さい!今日はもう一つお願いがあって来たのです!」
ユウリはその先の言葉を聞きたくなくて、言葉を挟もうとするが、ケインの圧に押され負けてしまった。
「僕を弟子にしてほしいのです!!」
ユウリはなんとなく察してはいたが、予想通りの言葉に困った表情をする。
「うん、なんとなく予想はついてたよ。師匠って呼ばれてるのにも気づいてて気づかないふりをしてたんだけど」
「なんと!僕の思いに気づいていらっしゃたのですね!流石師匠です!」
「隠す気なかったよね?ていうか、話聞いてる?」
ケインはユウリの腕を掴んで離さず、ニコニコとした笑顔でユウリの顔を見つめている。
「いや、嫌だよ。弟子なんてとるきないもん」
「そこをなんとかお願いします師匠!僕は師匠の人柄と強さに惚れ込んでしまったのです!是非師匠の御側で学ばせていただきたい!」
「いやいや、僕の側にいても学べることなんてないよ~。僕これから行くとこあるから離してほしいんだけど」
「弟子にしてくれるまで離しません!師匠!」
ユウリとケインが揉めていると、ギルドのドアが勢いよく開いた。
「やかましいわ!朝っぱらから何を騒いでおる!」
ドアを開けたのはギルド長のアーノルドだった。
ギルド長は揉めていた2人の顔を見て、深くため息をついた。
「はぁ~、お前たちか、まだ懲りていなかったのか?」
ギルド長は2人の顔をじろりと睨む。
「いえ!今日は師匠に弟子入りに来たのです!」
「弟子入り?」
「はい!昨日の師匠の戦いの腕と人柄に惚れ込みまして、是非弟子にしていただこうと!」
ユウリはギルド長に助けてくれと視線を送る。
ギルド長はまた深くため息をつき、口を開いた。
「事情は分かったが、ここで騒ぐな。近所迷惑だ!」
「僕だって騒ぎたくて騒いでるわけじゃないんですよ!今日は魔物討伐の依頼に行くから、依頼の受注をしに来ただけなのに~」
ユウリはギルド長に泣きついた。
「魔物討伐の依頼ですか?是非お供させてください!」
ギルド長は頭を押さえ、少し悩んだ後、何かひらめいたような顔をした。
「ユウリ、今日の依頼は確か、Bランク級の魔物の群れの討伐だったよな?」
「はい、そうですけど」
「なら、此奴も連れてってやれ」
「えーーー!!!」
「此奴はBランクだから同行させても問題ないし、弟子にするかどうかは、此奴の実力を見てから判断すればいい」
「う、分かりました」
「ありがとうございます師匠!」
ユウリは渋々承諾し、手続きを済ませ、魔物の討伐に向かった。
目的地までは距離があり、ユウリは道中、ケインからの質問攻めにあっていた。
「師匠はあの有名な冒険者であるバング殿のお孫様に当たると伺ったのですが、本当ですか?」
「本当だよ、今の僕の強さも、おじい様あってのものだから」
「なるほど、師匠が強く優しいのにも納得がいきますね」
「?どういうこと?」
「実は僕、白銀のバングの物語の大ファンでして。小さい頃、寝る前に良く聞かせてもらっていたのです」
「白銀のバングの物語?そんなのがあるの?」
「王都では有名な話ですよ?ご存じありませんか?」
「うん、おじい様はあまり自分のことをお話になられなかったし、アーノルドさんや他の冒険者の人たちから聞くぐらいで、冒険者だったころのおじい様のことはあまり知らないんだ」
「ならば、僕がお話ししましょう!」
そうしてケインは白銀のバングの物語を話し始めた。
白銀のバングはとても強く、何度も魔物に襲われた村の危機を救ったり、稼いだ賞金を寄付したりと、強く優しい人物だったらしい。
「へぇ~、あながち間違ってもないかもね。おじい様は強かったし、有名な冒険者とは思えないくらい貧乏だったし、優しかったって言うのはちょっと疑問だけど」
「優しくはなかったのですか?」
「優しいというか、厳しい人だったよ。でも、今ではあの厳しさも優しさだったんじゃないかって思うこともあるけどね」
「素敵なおじい様だったのですね。羨ましいです」
「そういえばケイン君って、平民じゃないよね?さっきも王都って言ってたし、所作や言動の端々に気品さを感じるというか」
「はい、貴族の出です。伯爵家の三男でした」
「冒険者になるの大変だったんじゃない?」
「結構叱られました。でも、憧れを捨てきれず、半ば無理やり」
「そんなに憧れてたのに、弱いものイジメなんてしてたの?」
「恥ずかしながら、貴族として平民に舐められる訳にはいかず、高圧的な態度をとっていたら、やめるにやめられなくなりまして」
「そういうことか」
「ですがもうそんな態度をとらなくても良くなりましたし、これからはありのままの自分で過ごしていこうと思います!」
「どうゆうこと?」
「実は僕には親が監視をつけていて、昨日師匠に負けたことも報告され、平民に負けた負け犬がいる資格はこの家にないと、勘当されてしまいましたから」
「うそ!ごめんね、そんな事情があったなんて知らなくて」
「いえ!むしろ清々してますよ!これで自由に冒険者ライフを歩めるわけですから」
ケインは清々しい顔で話している。
ユウリはその表情にすこし安堵した。
「そういえば、銀翼の騎士団の仲間たちはどうしたの?」
「ああ、銀翼の騎士団は解散しました」
「えぇ!なんで!昨日僕がボコボコにしちゃったから?」
「いえ、そんなことはありません!昨日の決闘の後、皆で話し合って決めたのです。彼らはそれぞれ、自分の道に進むことにしたから、解散してくれと言われたのですよ」
「よっよかった~。心をへし折っちゃったのかと思ったよ~」
「そんなことは決してありませんよ!」
ケインはユウリの不安そうな顔を見てあたふたしている。
「そっか、安心した」
ユウリの安心した様子を見たケインはまた話をし始め、あっという間に目的地にたどり着いた。
「よし、ここからは戦闘モードだからね!無駄話は無しだよ!」
「はい!師匠!」
「っとその前に、ステータス画面を見せてくれる?一応どの程度戦えるのか知っておきたいから」
「わかりました!すぐに出しますね!」
「いいよ、鑑定で勝手に見させてもらうから」
ケインは驚いた表情を見せて言った。
「師匠はブロンズコレクターだと伺っていたのですが、鑑定のスキルをお持ちなのですか?」
「そうなんだよ、昨日手に入れたんだけど、僕もビックリしちゃった。やっぱりブロンズスキルは奥が深いな~」
ユウリは感てのスキルを使ってケインのステータスを見た。
「へぇ~、君ちゃんと強いじゃない。シルバースキルが多いけど、ゴールドスキルもしっかりあるね」
「はい!昨日も引きました!」
「そういえばそんなこと言ってたね、何を手に入れたの?」
「この身体強化というやつです」
「なるほどね、ブロンズスキルでいう脚力強化や腕力強化がレベルMAXの状態で一度に使えるってことか」
「師匠も持っていらっしゃいますよね?昨日も使っていらっしゃったような」
「僕のは色々なスキルを重複してかけているだけだよ」
「いくつぐらいかけていらっしゃったのですか?」
「昨日は4つかな、俊足と脚力強化と腕力強化、あと忍び足もかけてた」
「たった数秒でそのスキルを全てかけたのですか?スキルは唱えないと使えないと言うのに」
「うん、ちゃんと唱えたよ?早口は得意だからね」
「なるほど、師匠はは早口がお得意なんですね!覚えておきます!」
「そんなことはどうでもいいから。スキルも大丈夫そうだし、さっそく魔物を倒しに行くよ」
「はい!師匠!」
準備を整えたユウリとケインは魔物の住む森の中に入っていった。




