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話し合いへ

 王城内の屋敷。

 リノがすみれ姫に語りかける。


「ところですみれ姫様、貴方達の旅の目的は悪魔を倒すことではないのでしょう?」

「ちがう。だけど、悪魔を許すことはできない」


 すみれ姫はきっぱりと答える。

 許せないものは許せないのだ。


「私は、人は好きなことを好きと言ってやり、好きなものを好きと言って愛でるために生きるのだと思っております。ですので、すみれ姫様も、そのために、それを見つけるために旅に出られるのがよろしいかと思うのですが」


 実際には、すみれ姫はレーナとミシェルを高位精霊にするために旅をしており、歌が好きでレーナとミシェルと共に歌を歌えるようにと、旅をしている。


「だが、ここにいれば、悪魔が襲ってくるのだろう?」


 それでもすみれ姫は、悪魔を倒さないことには納得ができない。

 大好きな人、ラテを悪魔に殺されたのだ。

 しかも、ここにいれば、リノを狙って悪魔はやってくるはず。


「わかりません」

「さっき来たではないか」


 かいせいとキリエのことだ。


「襲ってくるかどうかがわかりません」


 そう。

 二人は決して襲おうとしてきたわけではない。


「どういう意味だ?」

「すみれ姫様は、さっきの男に勝てますか?」


 突然、リノが話を変えた。


「……」


 すみれ姫はかいせいに勝てるという自信がない。

 風魔法で強化したミシェルのファイアトルネードとレーナのエクスプロージョンの爆発でもあの男は取り逃がした。

 レーナとミシェルと一緒に魔法をまき散らすかのように撃ちこんでもまったく当たらなかった。

 かいせいはキリエを抱いたままだったにもかかわらず。

 しかも、相手は攻撃を一切してきていない。


(すーちゃん、あれは高速移動じゃない。転移だよ)

(うん。前に戦った悪魔は高速移動だった。それでも追い詰められなかった。でも、あの男は転移。攻撃が当たらない)

「だけど、次は!」


 すみれ姫はそれでも勝つと意気込む。

 しかし、リノがその悪魔、かいせいについて説明を始める。


「あの男は、かいせいと言い、私の甥っ子みたいなものです。確かに悪魔の血を継いでいますので悪魔と言えば悪魔ですが、正しく悪魔とは言えません」

「どういうこと?」


 悪魔と言えば悪魔だが、悪魔ではない。

 すみれ姫には理解できない。


「それは言えませんが」


 かいせいは悪魔ではあるが、天使にもなっているとは、リノは言えないのだ。


「それに、悪魔と言っても、あの男は、すみれ姫様が憎しみの対象としている悪魔ではないのです」

「では、あの少女は?」

「あの子は純粋に悪魔です。なぜ、かいせいといたのかわかりませんが、何かしようとした場合、かいせいがすべて対処するでしょう。それに、あの子があなた方が慕っていた人間を殺した本人ではないのでしょう?」

(ちがう。男だった)

(うん。大人だった)


 レーナとミシェルがリノの言葉を肯定する。


「すみれ姫様。提案です」


 リノがすみれ姫の目を見て、そう言った。


「ん?」

「私には、あの悪魔の娘がなぜここにいるのか、なぜかいせいといるのかわかりません。が、かいせいがあなた方の攻撃からあの子を守った以上、かいせいと何らかの関係性があります。あの悪魔の少女は、こちらにお任せいただけませんか? もし、万が一にもあの少女が人を傷つけようとしたときには、かいせいに殺させます」


 キリエが人を傷つけたらかいせいが殺す。

 キリエが人を傷つけるような悪魔ならかいせいが殺す。

 リノはそう言ったのだ。

 だが、そうそう納得ができる者でもない。


「そんなのわからないじゃないか! それとも、お前達の自作自演じゃないのか! お前が、お前達がラテを殺したんじゃないのか!」


 すみれ姫が風の刃の魔法陣を全展開する。

 リノは多数の風の刃に狙われているにもかかわらず、冷静に返す。


「誓ってあなた方に害をなそうなどと思っておりません。この世界の人族に仇をなそうと思ってはおりません」


 リノは一呼吸おいてすみれ姫に言う。


「すみれ姫様、貴方は、他の高位精霊様と同じですか?」

「?」

「すべての高位精霊様が同じように、すみれ姫様が慕ったラテという人物のことを慕いますか? すべての高位精霊様がそこまで感情をあらわに悪魔のことを憎んでいますか? 私は、親しいものを殺されたことがありません。ですので、すみれ姫様の心の苦しさを同じく理解できるとは言えません。ですが、これだけは言えます。全く同じ考えを持つ高位精霊様、人族、そして、悪魔はいません。個人レベルではなおさらです。なぜなら、私は唯一無二の私ですから。すみれ姫様は唯一無二の高位精霊様です。同じように、あの悪魔の娘とあなたの親しい人を殺した悪魔は違うのです」

「だけど、あそこに来ただろう」

「あれはおそらく、かいせいが何かを相談に来たのです。決して、私を狙いに来たわけではないのです。殺意も感じられていません」


 その話を聞いて、レーナとミシェルが気づく。


(あれ、早とちり?)

(悪魔だから悪だというわけじゃないと?)


「それに、人間だって、人を殺します」


 リノは言い切る。

 確かにすみれ姫は、人間にナイフで襲われた。

 それを思い出した。

 言葉をなくしたすみれ姫に、リノは提案する。


「会ってみませんか?」


 すみれ姫は、しばらく考えた後、すっと立ち上がった。


「すみれ姫様?」

「会いに行くのだろう?」


 そのすみれ姫の返事に、リノはキルリスに命じる。


「馬車を。ローゼンシュタイン邸に行きます」

「はい」





 馬車に乗るすみれ姫とレーナとミシェル。

 リスベルとアシュリーも一緒に行くようだ。





 ローゼンシュタイン邸に着いたリノとすみれ姫達。


「かいせい様はいらっしゃいますか?」


 リノがメイドに尋ねる。


「はい。今、レノ様とお話をされておりますが」

「では、通してください。同じ件です」

「はい。かしこまりました。それではこちらに」


 すみれ姫はリノについて行く。


「こちらのお部屋です」


 と、メイドが案内してくれた部屋の前に、一人の少女が立っていた。

 すみれ姫は拳を握り締めるが、今はその時ではないと堪える。


 トントントン


「リノです。かいせい様、入れていただきたいのですが」


 バタバタバタ、と音がし、ドアが開く。


「リノさん。どうぞどう……」


 かいせいが、すみれ姫に気づく。


「えっと、お久しぶり? どういうことです?」


 すみれ姫に軽く挨拶をして、リノになぜここにいるのかと確認するかいせい。


「話し合いに来ました。その娘も一緒にお願いします」

「……キリエも入りなさい」


 かいせいがキリエも招き入れる。


「あの、リノさん、この屋敷もなくなるってことは」


 かいせいは不安な顔でリノに尋ねた。


「ないです。話し合い次第ですが」

「可能性はあるってことですか……」




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