謁見
三人と二人は王都グリュンデールを目指す。
トコトコと。
ぽよぽよと。
夕方には、王都グリュンデールに近づいたことがうかがえてくる。
だだっ広い畑が広がっているのだ。
しかも、その遠く先には、巨大な街。背の高い城壁が横に広く広がっている。
しかも、畑には、レーナ達には見慣れない、いや、ある意味前世で見知った物がたくさん走っている。
(ミシェル見て、あれ、トラクターだよね?)
(ほんとだ。人が乗っているし、リヤカー引いてる)
(なんか、急に近代化したように見えるんだけど)
(あれ、乗れたら楽だよね)
「あれ、乗れぬのか?」
レーナとミシェルの会話を聞いていたすみれ姫がレーナに尋ねる。
しかし、答えたのはリスベル。
「あれは農作業用で、農家さんが使っている物です。タイミングが合えば乗せてくれるかもしれませんけど、皆さん、荷物積んでいますよね」
(あれ、なんでここまで見なかったのかな?)
「ここしかないのか?」
レーナの疑問を代わりにすみれ姫が尋ねる。
「各領、各国、欲しいんですけど、高いんですよ。この街は、農家さんに国が貸し出しているんです。それで、この街は人も集まるし、異様に発展もしているんです」
((なるほど))
五人は王都城門までやってきた。
「はい、冒険者三人ね。ふむふむ、精霊様とお姫様? すごい名前をつけたね。ま、かわいいからいいか。通っていいよ」
身分を確認する門兵の感想に、アシュリーが頬を染める。
アシュリーが頬を染めたのは、かわいいと言われたからではない。
自分のネーミングセンスに少し素に戻ったのだ。
「すごい名前って言われた」
「まんまでいいと思うぞ」
パーティ名を気にしていないすみれ姫がアシュリーをフォローした。
((おお?))
驚いたのはレーナとミシェル。
すみれ姫のフォローにレーナもミシェルも感動したのだ。
あのすーちゃんが人を気遣ったと。
「で、どうするのだ?」
「まだ明るいので、王城へ行って、事を済ませてしまいたいのですが」
リスベルがリノからの依頼をまず終わらせようと提案する。
「いいぞ」
特に急ぐことが見つけられないすみれ姫はリスベルの案に承諾する。
皆は、街の中心にある、金ぴかなお城を目指した。
(あのお城、和風だけど、すごい趣味だね)
(ほんとね。なんで、屋根まで金ぴか? しゃちほこなんて、親子になって並んでるし)
レーナとミシェルは、和な城に豪華絢爛さを持ちこんだこの城の設計者のセンスを疑う。
いや、この城を建てろと言った初代国王のセンスか。
クシュン
グリュンデールから南、ローゼンシュタインの屋敷でグレイスがくしゃみをした。
ちなみに、グレイスは城を建てろと言っていない。
グレイス配下の緑ドラゴン族、建設部門担当のトドマツが建てたがったのだ。
五人は掘を渡り、神社の敷地内に入る。
(すごい。神社があるよ)
(ほんとね。神様、いるのかしら?)
「神様がいるのか?」
ミシェルの疑問をすみれ姫が声にし、リスベルが答える。
「武の神様と、守護の神様、それから、身代わり猫神様が祀られているそうですよ」
(なるほどー)
(ほんと、和、っぽいわ)
「和ってなんだ?」
(そういう国があるのよ)
(和の国って言うね)
「そうか。そこへも行くのか?」
(……行けたら行けるといいね)
(そうね)
レーナとミシェルが遠い空を見上げた。
リスベルは、特に気にする様子もなく天守閣まで歩いて行く。
ここまで職質など、受けていない。
それくらい、この街は危険性が少ないのだと思われる。
それに、未だにリスベルはキザクラ商会衣装だ。
キザクラ商会に勤めるエルフのステータスは、この国では特に高い。
天守閣入り口にて、
「リノ様より承った依頼を達成したので、面会をお願いしたいのですが」
リスベルが受付に面会の問い合わせを入れる。
「少々お待ちください」
受付の巫女は、部屋を出て行った。
しばらくすると、別の巫女がやって来て、
「ご案内いたします」
と、受付から出て来て、天守閣奥へと歩いて行く。
リスベル達は、巫女について行く。
廊下を歩き、折り返し階段を上へ上へと上がって行く。
そして、最上階、ある部屋のふすまの前で、
「リノ様。お客様とお連れしたしました」
と、巫女は部屋の中に声をかけた。
「うむ、入ってもらえ」
と、中から声がしたところで、巫女は膝をついてふすまを開け、リスベル達に入るよう促した。
「失礼いたします」
リスベル達が部屋に入る。
そこには、三人のエルフ、そして、人間が一人いた。
「リスベル、お勤めご苦労さまでした。それで、精霊達は?」
リノは、すみれ姫とその左右に浮いているレーナ、ミシェルに視線を合わせたので、そこに精霊が三人いることはすでに把握している。
リノと一緒に座っている仮面をした二人のエルフも同じように、すみれ姫達に視線を送っていた。
「はい。すみれ姫様、そして、レーナ様とミシェル様です」
リスベルに紹介され、レーナとミシェルは光を灯す。
「あ、ああ。確かに、このような低位精霊は見たことがありません」
リノが感嘆の声を上げる。
「ささ、ソファに座ってください」
レーナとミシェルは早々に、レノ達を見て、グレイスの妻達と同じ匂いがすると感じる。
つまり、絶対に勝てないと。
すみれ姫、レーナ、ミシェル、リスベルとアシュリーがソファに座る。
「お茶でよろしいでしょうか」
キルリスがお茶を用意する。
五人分。
レーナとミシェルの分もだ。




