魔物討伐の報酬
何が起こった……
赤ドラゴン族たちがその様子を見ていると、
三つ首ドラゴンの口から吹き出され続ける煙の中から、さっきの少女、すみれ姫が現れた。
「ま、まさか、本当に倒したのか?」
赤ドラゴン族隊長が、歩いて近づいてくるすみれ姫に声をかけた。
「ん。で、これの討伐証明の部位はどこだ?」
「……嬢ちゃんが倒したことは、私が証明しよう。だが、これ、王城へ運んでいいか?」
「討伐証明部位が無いと魔物討伐の報酬がもらえない」
すみれ姫はお金を稼ぐ方法を覚えたのだ。
しかし、すみれ姫のその、ホーンラビットと三つ首ドラゴンをひとくくりにしたような発言に、隊長は目を丸くする。
「嬢ちゃん、これ、全体が討伐証明部位だ。それで、持ち運べないだろう? こっちでグリュンデールの王城に運んでおく。報酬はグリュンデールの王城か冒険者ギルドで受け取れるようにしておくから。それでいいか?」
「ん、助かる」
「で、なんとなくはわかるが、どうやって倒したのか、教えて欲しいんだが」
「お腹に入ってドーン」
すみれ姫が端的に答える。
レーナとミシェルがやったのだが。
やっぱりか。
そう、天を仰ぐ隊長。
誰がそんなことをするだろうか。
思い付きすらしない。
真似もできない。
今後の参考にもなりやしない。
「教えてくれてありがとう。ちゃんと運んどいてやるから。必ず、グリュンデールの王城に行くんだぞ」
「わかった」
「名前は?」
「すみれ姫」
聞かれた通り、自分の名を名乗るすみれ姫だが、レーナが忠告した。
(あ、すーちゃん、冒険者パーティと紐付けた方がいいから、パーティ名は精霊様とお姫様って)
「冒険者のパーティ名は、精霊様とお姫様」
レーナに言われ、すみれ姫はそう名乗る。
「……すごい名前だな。わかった。ちゃんと報告しておく」
すみれ姫は赤ドラゴン族隊長のその言葉に満足し、洞窟への穴に飛び込み、戻って行った。
「隊長、今の、なんだったんです?」
「知らん。でも、目の前に現実がある。あ、そうだ。応援はもういらないと連絡を」
「はい、承知しました」
この話は、ローゼンシュタインのグレイスにも伝わる。
「え? 三十メートル級の三つ首ドラゴンが現れた? で、それがいとも簡単に倒されたって?」
グレイスが目を丸くする。
報告したのは、以前、四十メートル級と戦い、命を落とした最強ドラゴンのさつき、現おりひめだ。
「どうやったの。物理攻撃も魔法攻撃も効かないよね?」
「それが、体の中に入って爆発魔法を放ったと」
「体内で? どうやって体内に? 食べられたの? 咀嚼されたら死んじゃうじゃん」
「それが、高位精霊ではないかと……」
グレイスは合点がいく。
「精霊化……。そうか。その手があったか」
と、グレイスは共に報告を聞いていたレイとドライア、そしてディーネに視線を送る。
三人は精霊だ。
いざと言う時には……。
グレイスの思考を読んだ三人は、グレイスに向かって頭を下げた。
「「「勘弁してください」」」
一般的には、この手は実は使えない。
高位精霊は基本、我関せずだ。
よって、高位精霊が三つ首ドラゴンを倒したというのは、よっぽどの気まぐれか何らかの目的があったことになる。
つまりは変わり者精霊だからこそ、何かを倒そうとしたということ。
そして、そんな精霊はいない。
今回の三つ首ドラゴンの討伐は、そんなごく稀の変わり者がたまたまいたということになる。
だが、グレイスには心当たりがある。
レーナと美鈴。
「ただいま」
すみれ姫がリスベルとアシュリーの前に降り立つ。
「何があったの?」
アシュリーが状況を尋ねてくる。
当然だ。
何があったのか気にならないわけがない。
アシュリー達からは見えていなかった。
「魔物を討伐してきた。大きかったからグリュンデールの王城に運んでくれると」
「運んでくれる?」
「うん。赤いドラゴンがそう言った」
「グリュンデールの王城へ?」
「うん」
「じゃあ、グリュンデール王城へ行かなきゃね」
グリュンデール王国の王都へ戻ることが必要になったと判断したリスベル。
自分の役割と使命と併せて王都へ戻ることを提案する。
「あの、そういうことなら、引き返しませんか? もう、リュックが一杯になりそうです」
(すーちゃん、街に戻ろう?)
「街に戻る」
すみれ姫たちは、洞窟の入口で再び野営をし、翌日には街に戻った。
街の冒険者ギルドに着いたすみれ姫達。
「魔物討伐をしてきましたので、換金をお願いします」
アシュリーがが受付嬢に報告する。
「それでは、こちらのカウンターに……」
ドン!
リスベルとアシュリーが運んできた二つのリュックがカウンターに置かれた。
目を点にする受付嬢。
「えっと」
「これ全部だ」
結局、金貨二十枚にもなった。
「三日間でこれだけ……」
という受付嬢のつぶやきは無視された。
リスベルとアシュリーは、すみれ姫達の許可をもらい、キザクラ商会へ行く。
リスベルは、慣れがあるからと、キザクラ商会衣装の替えを。
アシュリーは、ガーリーなソフィローズを。
二人とも、下着も忘れずに購入だ。
さらには、二人とも、丈夫そうな黒のコートも買い求めた。
さらに、リスベルは剣を。
アシュリーはナイフを武器として買った。
合わせてきっちり金貨二十枚分。
すみれ姫が持っているお金を除き、パーティ資金としては再び無一文になった冒険者パーティ精霊様とお姫様は、グリュンデール王都へと向かう。
「おっかね、おっかね、おっかねはとっても大事だよー」
((っほい!))
「なっかなかふえないおっかねはね」
((っほい!))
「だけどすぐになっくなるよ」
((っほい!))
「だかーらどうーかはなれなーいでー、ふーたりーの((こころのーようにー))」
「でもーねおかねはーまわるのよー、私たちーの((たーびーのよーうにーーーーー))」
「あの、すーちゃん……」
リスベルが申し訳なさそうに尋ねる。
「ん?」
「その楽し気な歌は何です? そりゃ、私達、確かに散在しましたけど」
「歌を歌うのは楽しい。好き」
((あはははは))
「私達、役立たずですけど、また稼ぎますから。荷物持ちますから、どぶ攫いもしますから」
「それはイヤー!」
リスベルの覚悟に、アシュリーは頭を抱えて首を振った。
((あははははは))




