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この世界の天敵、三つ首ドラゴンとの戦い

 赤ドラゴン族の隊長と呼ばれた男は、声の発生源に顔を向ける。

 そこには、薄紫色の着物を着た少女が立っていた。


 あの服、かつてのこはる様に似ている……もしかして……。


 隊長は、急旋回して、すみれ姫の前に人型となって着地した。


「もしかして、ドラゴン族の……あれ、違う。誰? っていうか、子供がいていいところじゃない。危険だから逃げろ!」


 と、勘違いしたことを理解した隊長は、すみれ姫を突き放し、戦闘へと戻ろうとする。


「なあ、倒していいのか?」


 すみれ姫が何でもないかのように、隊長の背に再び問いかける。

 隊長はイラっとして振り向き、すみれ姫に投げやりに言った。


「倒せるもんなら倒してもらいたい。しかし、あれは物理攻撃も魔法攻撃も効かない、この世界の天敵だぞ? 危険だから逃げろ、離れていろ!」


 と、隊長はすみれ姫に言葉を投げ捨てて飛んで行った。


「レーナ、ミシェル」

(魔法効かないってさ)

(私、嫌な予感しかしないんだけど)

「ということで」


 と、すみれ姫が精霊化し、光の玉となった。


(すーちゃん、本当にやるの?)


 すみれ姫は、乗り気になれない二人を置いて飛び上がってしまう。

 そして、


「キャシャー!」


 と、叫び声を上げて赤ドラゴン族を威嚇している三つ首ドラゴンの真ん中の首の口の中へと入って行った。


(ええい、私達も!)

(仕方ないわ、行きましょう)

(中でつながっているのかなー)


 と、レーナとミシェルも、左右の口の中にそれぞれ入って行った。





 レーナは、三つ首ドラゴンの右の口から食道を通って行く。


(うーん、ねちょねちょ。気持ち悪い。これ、どこまで行くのかなー)


 ミシェルも同じく左の食道の中を通って行く。


(まさか、自分から食べられる日が来るとは思ってもみなかったわ)





 三つ首ドラゴンに異変が起こる。


「おい、こいつ、突然苦しみだしたぞ!?」


 三つ首ドラゴンの真ん中の顔が苦痛に歪んでいるように見える。

 それを左右の首が心配そうに見つめる。

 いまなら攻撃は来ない。

 そう隊長は判断する。


「今だ、ブレスは来ない。全員攻撃!」


 赤ドラゴン族達は、一斉に三つ首ドラゴンに攻撃を仕掛けた。

 しかし、鉄壁の防御を誇る三つ首ドラゴンは苦しみに耐えるだけだ。





 そんなことは知らないレーナとミシェル。


 シュポン! シュポン!


((お、出た)

(あ、ミシェル!)

(レーナ!)

(三つ首ドラゴンって、口と食道は三つだけど、胃袋は一つなのねー)

(でも、空胃でよかったわ)

(そうね、なにかが溶けかかったぐろいの見たくないしね)

(で、すーちゃんは?)

「おーい」


 と、上の方から声がかかる。

 二人が上を眺めると、そこには、食道から頭だけを出したすみれ姫が。

 つまりは、すみれ姫はのどを通り過ぎる前に実体化してしまい、のどつまりを起こしてしまったのだ。


(すーちゃん、何で人型に戻っちゃったわけ?)

(ほんと、おかしい)

「むう」


 すみれ姫はもう一度精霊化して、胃袋の中に降りてきた。





 のどつまりが取れた三つ首ドラゴン。


「キャシャー!」


 怒りに任せてブレスを撃ちまくる。


「全員退避ー! 暴れ出したぞ、距離を置け!」


 赤ドラゴン族が再び三つ首ドラゴンから距離をとる。





 レーナがすみれ姫に声をかける。

 なぜここに来たのか、どうやって三つ首ドラゴンを倒すのか、理解したのだ。


(ねえ、すーちゃん。倒し方は理解したよ。でも、どうやって出るの?)


 すみれ姫は食道の出口に視線を送る。


(私、三つ首ドラゴンのう〇こになるの嫌だからね)

「う〇こ? なれるのか?」

(お尻から出るの嫌だって言ってるの)

「う〇こ、見たことない。なったこともない。初めての経験?」


 すみれ姫が未知の体験に興味を示してしまう。

 しかし、レーナは言葉強くすみれ姫人主張する。


(嫌だって言ってるじゃない)

「むぅ」


 そんな二人にミシェルが冷静に問う。

 ミシェルは二人の考えの具体がまだよく理解できていない。

 昔読んだ童話なら、腹の中で針を振り回すのだが。

 アイスランスか?


(はいはい。で、どうやって倒すの? 魔法を中から使うのはわかるけど。凍らせたら出られなくならないかしら?)

(燃やすんじゃないの?)


 と、いいつつ、そう言えば、と、レーナがすみれ姫に尋ねた。


(あれ、すーちゃん、風魔法で倒すつもりだった?)


 すみれ姫は風魔法しか使えないのだ。


「むぅ」


 唇を尖らせるすみれ姫に、レーナが提案する。


(よし、わかった。私もミシェルもすーちゃんももう一度食道にもどって、そこで、胃の中に爆発魔法を撃ちこむってのはどう? そしたら、私達、口から飛び出されるよね、きっと)

(ん。わかったわ。じゃ、レーナと私で爆発魔法ね)


 三人は精霊化し、それぞれ食道の出口でスタンバイする。


(それじゃ、いくよ。三、二、一)


((エクスプロージョン!!))


 ドッゴーーーーン!


 三つ首ドラゴンの胃の中でレーナとミシェルの魔法による大爆発が起こり、レーナ、ミシェル、すみれ姫は食道を逆に吹き飛ばされていく。





 三つ首ドラゴンを抑え込んでいた赤ドラゴン族達は、信じられない光景を目にする。


 ドオン!


 と、突然三つ首ドラゴンの胴体の内部が爆発したかのように膨らんだのだ。さらに、三つの口から


 ボフン!


 と、煙が上がった。

 そして、三つ首ドラゴンが、倒れ込んだ。




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