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冒険者の仕事とは

 冒険者ギルドに入り、リスベルとアシュリーは依頼が貼ってある掲示板を眺める。


「街を出ないですぐできそうな依頼はと……」

「リスベル、あった、あったよ!」


 アシュリーが見つけて持ってきた依頼書……。


「街のどぶさらい?」


 リスベルが顔をしかめる。


「……」


 元キザクラ商会支店長が、現王女が、どぶさらい。

 報酬は銀貨十枚。


 どうする、どうする。やるか、やるのか。


 背に腹は代えられぬと、リスベルは依頼書を持って受付に持って行った。


 しかし、依頼書とリスベルの冒険者カードを見た受付嬢の反応は当然のものだった。


「あの、ゴールドランクのリスベル様がカッパーランクの冒険者がやる仕事を取らないでください」


 だが、やらざるを得ない、やらせてもらいたいのはリスベルも同じ。


「あの、この子がカッパーランクなんです」


 アシュリーを前に押し出すリスベル。


 え、私がやるの?

 私王女だけど?


 リスベルにやらせようとしていたのか、アシュリーが一歩引く。


「冒険者カードを出してください」


 受付嬢はアシュリーに冒険者カードの提示を要求する。

 当然と言えば当然。


「あの、なくしてしまい……」


 アシュリーは、申し訳なさそうに答えた。


「再発行は銀貨十枚です」

「「……」」


 十枚? 

 十枚だと?

 どぶ攫いの報酬がすべてなくなるじゃないか。


「お願いです。銀貨一枚しか持っていないんです。再発行のためにもこの依頼をー」


 アシュリーが強くお願いする。


「はぁ。仕方ないですね。では、この依頼を特別に、ゴールドランク冒険者のリスベル様にお願いします。で、その依頼を受けた報酬として、アシュリー様の冒険者カードを発行します」

「……はい。お願いします」


 アシュリーがうなだれる。

 やっぱり報酬が冒険者カードになり、お金がもらえない。


「で、道具、持ってます?」


 受付嬢はさらに追い打ちをかける。

 もちろん、親切心だ。


「道具?」

「レンタル料、銀貨一枚です」

「「……」」





 こうして、街中で話題になる。

 黒のスーツを着たエルフと、ドレスを着た姫みたいな少女がどぶさらいをしていると。

 当然好奇の目にさらされた。





 冒険者カードを再発行してもらったアシュリーとリスベルは、公園のベンチで休む。

 においがついたまま。


「冒険者って、大変な職業なのね」


 アシュリーが再発行してもらった冒険者カードを見つめ、ぽつりと感想を漏らす。


「そうだね……」


 リスベルも空を見上げる。


「リスベルは何でゴールドランクなの?」

「ギルマス権限で上げてもらった」

「どうやって?」

「キザクラ商会職員は、基本的に鍛えているんだ。だから、武術も魔法も何でも人並み以上に使える。ただ、ランクにこだわりはないので、というか、冒険者としての仕事なんてしないので、それでよかった。いざと言う時でも、ゴールドのランクを持っていれば、何でもできるし……。お金と武器があればだけど」


 一文無しの二人が一緒にため息をついた。


「「はぁ」」


 くぅ。


 アシュリーのお腹が鳴る。


「アシュリー、お腹すいたよね」

「うん」

「宿に行こうか」

「うん。起きているかな、精霊様方」

「起きているといいけど」





 リスベルとアシュリーが宿に戻ると、当然のように、女将に嫌な顔をされる。

 もちろん、どぶさらいの噂もここまで流れてきている。

 まさか、お金が払えないなんて言わないよね、なんて疑問の目を向けられる二人。

 そそくさと、部屋へと上がって行く。


「ただいま戻りました」


 と、リスベルとアシュリーが部屋に入ったところで、すみれ姫に嫌な顔をされてしまう。


「その匂い……」


 リスベルとアシュリーは思わず土下座をする。


「すみれ姫様、申し訳ございません」

「すみれ姫様? 申し訳ございません」

(何を謝っているのかしら)

「何を謝っている?」


 レーナの疑問を口にするすみれ姫。


「まず、この汚れとにおいについて」

「……」

「アシュリーの冒険者カードの再発行をするため、どぶさらいの依頼を受けました」

(あれ、どういうこと? 姫様、お金ないのかな?)

「お金ないのか?」


 すみれ姫は再びレーナの疑問を口にする。


「「……」」


 リスベルは覚悟を決め、現状を告白する。


「申し訳ございません。お金も着替えも武器もありません!」

((「……」))

(どうしたらいいのかしら)

「どうしたらいい?」

「お金を稼ぎたく……」

(あれ、すーちゃん、この人たちと一緒に行動する必要ある?)


 そのレーナの言葉を理解したすみれ姫、リスベルとアシュリーに告げる。


「私達は先に行く。世話になった」


 すみれ姫がベッドから立ち上がった。


「すみれ姫様、待ってください、見捨てないでください」

「?」


 すみれ姫には、何のことやらわからない。

 見捨てる?

 見捨てるとはなんぞや。

 すみれ姫が疑問に思っていることを察したレーナが説明する。


(リスベルさん、一緒に行動したいって。でも、すーちゃんの気持ち次第だからって)

「何で?」


 すみれ姫はレーナに尋ねたのだが、リスベルが答える。


「確かに、確かに、すみれ姫様は私達を助ける義理などないとは存じ上げますが」

「なら、問題ない」


 すみれ姫は冷たく突き放す。


「……」

「うわーん」


 アシュリーが泣き出した。


「臭いよー、お腹すいたよー、休みたいよー」

「臭い」


 すみれ姫が泣いているアシュリーに追撃する。


「うわーん!」

(仕方ないなー。ミシェル、やるよ)

(はいはい)

((リムーブ))


 レーナとミシェルがリスベルとアシュリーの汚れとにおいを魔法で取り除く。


「「ハッ!」」


 クンクン。


 自分達のにおいをかぎ、汚れチェックをするリスベルとアシュリー。

 どちらもなくなっている。


「「ありがとうございます」」

(後はおなかを満たすのか)

(下の食堂でご飯食べられるんでしょ。後はお金の問題だけど)

(すーちゃん、お金、どうやって稼ぐのか聞いてよ)

「お金、どうやって稼ぐ?」


 レーナの頼み通り、リスベルとアシュリーに問いかけるすみれ姫。


「武器が手に入ったのであれば、森に入り魔物を狩ってこようかと」

(それは、みんなで行った方が効率いいのかな)

(そうよね、私達もここで寝ちゃったしね)

「皆で行くのか?」


 すみれ姫は、レーナの言葉に問いかける。

 しかし、答えるのはリスベル。


「あの、お付き合いくださるのです?」

「みんなで行った方が効率がいい?」


 同じく、すみれ姫はレーナに問う。


「そうとは思いますが、ご迷惑では」


 リスベルの答えに、レーナが感想を漏らす。

 それをすみれ姫が繰り返す。

 間違っているが。


(旅は道連れ世は情けよねー)

「旅はミシェルが弱音はけ」

(なんで?)


 突然振られたミシェルが、疑問の声を上げた。





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