リスベルとの再会
残されたアシュリーは茫然とする。
自分で稼ぐ?
私、姫なのに?
あれ、ちょっと待って。
冒険者カードは?
着替えは?
「なあ、街に入るのか?」
アシュリーと騎士とのやり取りと、その後のアシュリーの挙動不審な様子をを退屈そうに見ていた門兵がアシュリーに尋ねた。
「さっきのやり取り見ていたわよね。私が王女だってわかった?」
「ああ、家出娘だってことがな」
「……」
「帰ってやれよ、父ちゃん泣いてるぞ?」
「……」
「俺だって、娘に家出されたら泣いちまうよ」
「私、十五歳だからもう成人ですから」
「十五か、確かに成人しているかもしれないが、あんまり心配させるなよ」
はぁ。
アシュリーはため息をつく。
「あの、保護者のエルフ冒険者が先に入ってしまったので、入れてください」
アシュリーはこれ以上王女であることを主張してもダメだろうと、丁寧にお願いしてみる。
しかし、門兵は手のひらを上にして手を伸ばしてくる。
アシュリーは仕方ない、と、騎士から渡された財布を開けてみる。
「……」
アシュリーは銀貨一枚を取り出し、そして、財布を地面にたたきつけた。
「銀貨一枚って、全財産じゃない!」
「おいおい、財布をそんな風に扱ったら、お金の神様が逃げちまうぞ」
それもそうかと、アシュリーは、財布を拾い上げ、パンパン砂を落とし、ポケットにしまう。
「はい。全財産です」
と、門兵に銀貨を差し出した。
目をうるうるしながら。
手をぷるぷるさせながら。
「そんないい方されたら受け取れないだろうに」
門兵は頭をかりかりとかく。
「もういいよ。そのまま入りな。そのお小遣い、大事に使うんだぞ。それと、本当に冒険者なら冒険者カードの再発行してもらえよ」
「……ありがとう」
アシュリーは、ようやく街に入ることができた。
だが、リスベルはもうどこにもいない。
「レーナ様、ミシェル様、精霊様ー」
リスベルは大声ですみれ姫達を呼びながら、街中を走る。
(あ、あのエルフ、私達の事、大声で!)
(すーちゃん、あのエルフの口をふさいでもらえる?)
「ん。突風!」
ビュウン!
走ってくるリスベルの顔に突風が突き刺さる。
「ぐへっ」
突風が顔に当たったことで、リスベルは後ろ向きに倒れる。
そこへすみれ姫が近づき、リスベルの口を手でふさいだ。
「で、どうする?」
「んーんんんー、んんんんん」
リスベルが何か言ってくるが、すみれ姫は聞く気が無い。
なぜなら、すみれ姫が聞いた相手はレーナ達だ。
(黙ってもらいましょう)
「黙れ」
「……」
すみれ姫の真剣な目と命令に、リスベルは黙る。
(で、どうしようか)
(人気のないところへ行きたいわよね)
(宿がいいかな、夜通し歩いて来たし)
(そのまま寝ちゃう?)
「寝られる宿に連れていけ」
コクコク。
了承するリスベル。
(私達の事、口に出さないでって)
「私達のことを口に出すな」
コクコク。
(すーちゃん、離していいよ)
すみれ姫はリスベルを開放する。
リスベルは立ち上がり、すみれ姫に言う。
「それでは、ついて来てください」
リスベルは昨日まで宿泊していた宿へと歩き出した。
「今朝まで宿泊していた部屋をもう一度借りたい」
宿の女将に交渉するリスベル。
女将はもちろん、リスベル達の身分を知っている。
「承知いたしました。問題ないです。同じ部屋でよろしいでしょうか」
「一部屋でいい」
「お二人です?」
「……」
そう言えば、アシュリーはどうしたかな?
「一応、三人にしてくれ」
「わかりました。それでは、お泊りになられたお部屋ですが、まだ、片づけをしておりませんが、お使いください」
「ありがとう」
リスベルはすみれ姫を連れて、部屋へと上がって行く。
リスベルがドアを開けて、すみれ姫とレーナとミシェルを部屋に入れ、ドアを閉める。
閉めるや否や、リスベルは土下座をした。
「申し訳ありませんでした。高位精霊様にレーナ様、ミシェル様を見つけた喜びのあまり、ついつい、声を上げてしまいー!」
ところが、一方のすみれ姫、なんだかんだで疲れたのか、ベッドに横になってしまう。
((……))
そのままにしても、そのままな状況が続くだけ。
レーナはやむなし、と、机にあったペンで紙に文字を書く。
『人前では、わたしとミシェルはいないものとして扱って』
『この子はすみれ姫。すーちゃんと呼んであげて』
『リスベルさんの言葉は私達に伝わるけど、私達の言葉は、すーちゃんを通すから』
「はい。すみれ姫様ですね。実体があるということは、すみれ姫様は高位精霊ですよね」
レーナは金の光を灯して縦に揺れる。
「お二人は、すみれ姫様にお仕えしているのですか?」
レーナは斜めに傾く。
仕えているとは思っていない。
リスベルは聞き直す。
「一緒に行動されているのですか?」
レーナが縦に揺れる。
リスベルがレーナとミシェルに事情説明をとお願いをする。
「レーナ様、ミシェル様、実は私、キザクラ商会イングラシア支店支店長を首になりまして……」
自らやめたのだが。
「新たな職に就きました。今、仰せつかっている任務なのですが、それは、お二人をこの国の女王、リノ様のところへ連れて行く、というものです」
レーナとミシェルが目線を合わせて傾く。
なんで? と。
「どうか、私と一緒に、グリュンデール王都まで、王城まで行っていただけませんでしょうか?」
レーナはペンを動かす。
『すーちゃんの意思が大事だから、今は承諾できない』




