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家出……じゃなくてインターンシップ?

(ねえ、すーちゃん)


 立ち尽くしているすみれ姫にレーナが声をかけた。


「ん?」

(移動しない?)

「夜中なのにか?」

(目の前にこんなのあったらやだな)


 レーナは、二体の死体のことを言う。


「わかった」


 すみれ姫が立ち上がり、歩き出そうとする。


(あ、ちょっと待って、燃やしちゃうから)


 レーナがすみれ姫を止める。

 そして、証拠隠滅。


 ゴォッ!


 死体二つを取り囲むように、ファイアトルネードが巻き上がった。





 夜中にもかかわらず、すみれ姫は歩き続ける。

 レーナとミシェルはぽよぽよと。


(すーちゃん、どこまで行くの?)

「月も星も綺麗だから、追いかけてみる」

(ん。そうだね)

(私もいいと思う。いやなもの見た後は綺麗なものを見たいわよね)


 トコトコ、ぽよぽよ、トコトコ、ぽよぽよ



(あなたはー、空からー私ー達を見ててくれる、月とー星のー光ーで照らしてー)

(あなたはー、私達をー道びいーててくれるー、月とー星をーみちしーるーべにしてー)

((だからー私たーちは前にー進むのー))

((あなたーとおもいーを、ひとーつにしてー))

((月のー光はーやさしーくてー、星のー光はーちからーづよくー))

((わたしーは行くのー、行けるのー、どこまーでもー))

((あなたーがそうしてー))

((見守ってー、くれてるー、かぎりーーーーー))



(ねー、レーナ。いい歌だと思うけど、いやなことの後は明るい歌じゃないの?)

(そう? じゃあ、いつものいっちゃう?)

(いつものって……あれ? 仕方ないわね。あそれ!)



(せ、せ、セリコのチョコミントー!)

(あそれ!)

 ……



(すーちゃんがのってこない……)

(うん。すーちゃん、どうしたかしら)

「人間って、ラテみたいな人もいれば、あんな汚い奴らもいる。なんなんだ!」


 すみれ姫が両手のこぶしを握り、叫んだ。


((すーちゃん……))


 すみれ姫は、大きく、大きく息を吸う。

 そして、大声で歌う。



「せ! せ! セリコのチョコミントー!」


 突然のすみれ姫の大声に、レーナもミシェルも驚く、だが、



「せ! せ! セリコのチョコミントー!」

((あ! それ!))

「いくつーも食べたい! セリコーーーの((チョコミンーーートーーーー!))」



「ぐすっ」


 すみれ姫が鼻をすする。

 そして、大声で叫ぶ。


「うわーーーーーー!」

(すーちゃん……)

(すーちゃん……)

「わたしー! 進むからー! 前にー、前にー! 進むからー! らーーーてーーーー!」

((すーちゃん!))

((うわーーーーーーー! 私達もー! 進むからー! らーーーてーーーー!))


「行こう!」

((行こう!))


 キランキラン!





 三人は、グリュンデール王都の南にある、山脈に近い街に到着した。


「お嬢ちゃん、こんな朝早くに街に入るって、夜を通して歩いてきたのかい?」


 門兵がすみれ姫に声をかけた。


「ん」


 すみれ姫は冒険者カードを門兵に示す。


「え、お嬢ちゃん? お嬢ちゃんと言っちゃダメか。プラチナランク冒険者様? それなら、夜通し歩いて来ても大丈夫だな。すまない。子供かと思った」


 どう見てもすみれ姫は子供なのだが、確かに体にしては大きな剣を背負っている。


「急ぎの旅かもしれないけど、ゆっくりしてってくれ」

(すーちゃん、ありがとうって)

「ありがとう」





 すみれ姫が街に足を踏みいれる。

 その時、同時に、一台の馬車が街から出て行った。


 馬車の中にいたリスベルが急に振り向いて大声を上げた。


「精霊様、いた!」

「え?」


 アシュリーが眠そうな目をこすりながら声を上げる。


「ちょっと、止めて、止めてって」


 リスベルが騒ぐが、馬車は止まらない。


「アシュリー、止めるように言って!」

「馬車を止めなさい!」


 アシュリーが窓から顔を出して、馬車を止めさせる。


 止まった瞬間、リスベルが馬車を飛び出して、街へと走って行った。


「ちょっと、待ってよー」


 アシュリーもリスベルを追う。





 リスベルは、街の中に戻ろうと、門を駆け抜けようとする。

 が、


「ちょい待ち!」


 門兵に止められた。


「な、何?」

「身分証か銀貨一枚」

「キー! 今出て行ったところじゃない。ほら、冒険者カード!」

「入って良し」


 リスベルは街に駆け込む。


「待ってよー!」


 アシュリーも街に踏み込む。


「だから身分証か銀貨一枚だって」


 アシュリーが足止めを食らう。

 リスベルはアシュリーのことは気にせずに置いて行くが。


「冒険者カード? たしか、馬車の中の……、王女、王女なのよ、私。入れてよ」

「自称王女って、いっぱいいるんだ。うちの娘もお姫様ごっこしてるぜ」

「んもう! 私は本物だって」

「いいから、銀貨一枚。それが規則だ」


 そこへ馬車が戻ってきた。


「アシュリー様、予定通り、我々は聖王国へ戻ります。国王兼教皇様にはちゃんと伝えますので」


 お付きの騎士が聖王国へ帰ろうとする。

 あっさりと王女を置いて。


「なんて伝えるかわかっているんでしょうね」

「はい。王女様は家出です。って」

「違うわよ! 条約は無理だけど、協力はしてくれるって、って!」

「はいはい。で、殿下、これを」


 騎士はアシュリーにアシュリーの財布を渡してきた。


「これが無くなったら、自分で稼いでくださいね。陛下にはインターンシップだと伝えておきます」

「……」

「それでは」


 と言って、騎士と馬車は再び西へと向かって行った。




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