家族
すみれ姫はラテを家族と呼んだ。
家族をもう二度と失わない。
ラテを絶対に忘れない。
そのためにも、その誓いのためにも、ラテの剣が欲しい。
ラテの剣を手放したくない。
「お前さん、魔導士だろうに。それに、ラテの剣、でかくないか?」
すみれ姫は、断られたと思い、しょんぼりする。
「ま、いいぞ。そもそも馬車も使っていいんじゃないか、なんて言っちまったしな。ちなみに、冒険者が亡くなったらその遺品は、遺族の物。次いでパーティメンバーだ。ラテの遺族に関しては調べておく。いなかったら、馬車、売っていいな。金はお前のカードの紐づけておく。後で手続きしておいてくれ。登録前のパーティだったんだろう? まあ、家族みたいなものだ。背中を預けるんだからな」
バン!
「守れなかった」
すみれ姫が机をたたく。
だが、ギルマスは優しくすみれ姫を諭す。
「でもな、お前、剣が欲しいって、家族を失いたくないって言ったじゃないか。ラテとの旅は悪くなかったんだろう?」
すみれ姫の目から涙があふれる。
「ラテ……、ラテ……。」
すみれ姫は、ラテの剣だけをもらった。
その長さに、背負うしかなかったが。
「おい、それ、抜けないだろう」
ギルマスが笑う。
「笑ったな?」
すみれ姫は風魔法を使って剣を抜き、ギルマスにその切っ先を突きつける。
「お、おう。器用だな。悪かったって。しまってくれ」
シャキン!
すみれ姫が剣を背中のさやに収めた。
「行くのか」
ギルマスが少女のようなすみれ姫に声をかけた。
本当に一人で旅に出るのかと。
「うん。旅に出る。目的があるから」
「何なんだ、その目的?」
「家族と抱き合うことだ」
すみれ姫はそう言って歩き出した。
キラン!
すみれ姫はギルドから西門に向かって歩いて行った。
その背中を見送りながらギルマスと受付嬢が話し始める。
「あんな小さな子が旅をって言うか、あれで冒険者なんですね」
「まあ、あの魔法を見れば、納得だけどな」
「ねえ、ギルマス。家族と抱き合いたいって、なんだか不思議じゃないです?」
「何でだ? 子供らしくていいじゃないか」
「だってね、ほら」
と、受付嬢がギルマスに抱き着く。
「ほら、ギルマスも私に抱き着いてください」
ギルマスが顔を赤らめながら受付嬢の背中に手を回す。
「ね、家族なら抱き合えるじゃないですか」
「お、おい。お前、さりげなく、俺を家族にしたか?」
ギルマスはその手を離して飛びずさり、受付嬢は口をとがらせる。
「家族と抱き合えない事情があるのかもしれませんが、それって、寂しいですね」
「ああ、そうだな」
「ギルマス、家族になってください」
「ああ」
それ、俺のセリフじゃね? ギルマスは顔を染めた。




