ディフェルス商会
(この街の商会さんに届けるんだよね?)
(確かそうよね)
レーナとミシェルの二人は荷物をがさごそとあさる。
もちろん手も足もないので、風魔法でだ。
すると、目的となる一枚の紙を見つけることができた。
依頼書だ。
配達先は、グリュンデール領入口の街、ディフェルス商会となっている。
(ディフェルス商会、どこかな)
(すーちゃんに聞いてもらうしかないわね。だけど、どうしようかしら)
(冒険者ギルドに行くってのはどう?)
(そうね、それがいいかもしれないわ)
(すーちゃん、冒険者ギルドを探そう)
「わかった」
すみれ姫はそう返事をして、街の中の大通りに沿って馬車を進める。
(すーちゃん、あのかどっこの大きな建物)
「わかった」
すみれ姫は、冒険者ギルドの前に馬車を止めた。
(すーちゃん行こうか)
「ん」
すみれ姫は馬車から降りて冒険者ギルドへと入って行った。
カウンターでは、受付嬢が忙しそうにしている。
グリュンデールの隅にある街である。
森が近く、魔物の狩りにもってこいである。
冒険者が少ないわけがない。
すみれ姫は、カウンターの列に並ぶ。
当然、子供に見えるすみれ姫を怪訝な顔で見る冒険者は少なくない。
しかし、すみれ姫はそんなことを気にしたりしない。
ようやく順番が回ってくる。
「あら、お嬢ちゃん、どうしたのかな?」
(すーちゃん、冒険者カード見せて)
「ほい」
と、冒険者カードを姿を消しているレーナに向かってかざすすみれ姫。
(あ、前のお姉さんに)
すみれ姫は冒険者カードを受付嬢に見せる。
「え? プラチナランク?」
受付嬢は、カードとすみれ姫の間を行ったり来たりと視線を泳がせる。
「すみれ姫さんですよね。なんです? この年齢不詳って」
「わからないから」
「はぁ。で、どのようなご用件です?」
「ディフェルス商会を探している。ラテが受けた仕事。私達が運んでいる」
そう言って、すみれ姫は、レーナが見つけた依頼書を受付嬢に見せた。
「あの、ラテさんは?」
「いない。だから私がこうしてラテの代わりに持ってきた」
「どういうことです?」
「ラテの仕事をちゃんと終わらせたい。だから、ディフェルス商会はどこ?」
受付嬢は、ハァ、と、ため息をついて、
「ちょっと待っていてください」
と、すみれ姫に告げ、地図を書き始めた。
受付嬢は、地図を見せて、
「ここがこのギルド。この道をまっすぐ東へ向かって、二つ目を左に向かったらあります」
と、説明をしてくれた。
(すーちゃん、わかると思う。行こう)
すみれ姫と一緒に地図を眺めていたレーナが声をかける。
「なら行く」
すみれ姫は、お礼も言わずにギルドを出た。
すみれ姫は再び馬車に乗り、馬に指示を出す。
馬は、何もかもわかったかのように、歩き出した。
二つ目の角を曲がり、看板を見つける。
(すーちゃん、あったよ。ディフェルス商会)
「ん」
すみれ姫はその商会の前に馬車を止める。
そしてすみれ姫は馬車を降りて商会へと入って行く。
レーナとミシェルも姿を消したまま、ぽよぽよついて行く。
「いらっしゃいませ」
店員がすみれ姫に声をかけてきた。
「お嬢ちゃん、お遣いかな?」
男の店員は、ニヤリと笑顔を作るが、心底からの笑顔でないことは明白。
「ラテが運んでいた荷物をもってきた。受け取りと、サインを」
すみれ姫は依頼書を店員に見せた。
「なになに? んー。ちょっと待っててくれるかな」
店員は、店の奥へと入って行った。
「ローゼンシュタインからの干物が届いたと?」
店員と一緒に出てきたのは、太った男だった。
男は、すみれ姫を無視したかのようにすれ違い、外へと向かった。
その男は勝手に馬車に乗り込み、そして、干物の入った木箱を検分する。
「うーん。確かにローゼンシュタイン産の干物、十箱」
男は馬車から降りるなり、店員たちに指示を出す。
「おーい、この箱、運び込んでおけ」
そう言って、男は店の奥へ戻ろうとした。
店員達は、男の指示に従って、馬車から木箱を運び出してしまった。
「おい」
すみれ姫が店の奥に戻ろうとした男に声をかけた。
男は、振り返って見下すような目ですみれ姫を見る。
「なんだ、このガキは」
「ラテが依頼された荷物を持ってきた。受け取りのサインを」
「誰が何を持ってきたって? 私はローゼンシュタイン産の干物十箱を注文した。ただそれだけだ。だから誰がいつ持ってくるかは把握していない。お前が持っているのは、『ラテという冒険者が荷を運んで我が商会に持ってきた』ということを証明するための受領書だ。だが、お前はラテではないのであろう?」
すみれ姫は苦虫をつぶす。
「つまりだ、私は、この荷の代金は販売元に支払うだろう。だが、それにはサインできん」
「だけど、これにサインをもらわないと、ラテの仕事が終わらない!」
「だが、お前はラテという冒険者ではないだろう……お前、冒険者ギルドへ行っていろ。そこで話の続きをしよう」
そう言って、男は店の奥へと行ってしまった。
(すーちゃん、ギルドに相談しよう)
(そうよ。その方がいいわ)
レーナとミシェルに諭され、すみれ姫は店を出て馬車に乗り込んだ。




