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金のレーナと銀のミシェル

 ラテは確認する。

 すみれ姫は目の前にいる。

 にもかかわらず、突風は崖側から吹いた。

 なぜ?


 始めの落石を動かしたのは確かにすみれ姫だ。

 しかし、今のは違う。

 しかも、その威力も。

 すみれ姫の魔法の威力ですら目を見張るものだった。

 だが、今のはおそらく、その何倍もの、いや、何十倍かも知れない、それくらいのもの。

 それに、自分に風が当たらないように斜め上に向けて。

 そのため、大岩はすべて、吹き飛んだ。

 まるで撃ちだされたかのように。


 ゴロゴロゴロ、とラテに投げられて転がったすみれ姫。

 すかさず立ち上がり、走り出す。

 ラテに向かって。

 腰を落として固まっているラテに向かって。

 そして、ダイブする。


「ラテ! ラテ! ラテ!」


 キラン! キラン!


 レーナとミシェルが光る。


「すーちゃん?」


 ラテはまだすこし考えがまとまらない。

 だが、あの、感情表現の苦手なすみれ姫が自分に抱き着いて泣きじゃくっている。

 なぜ?


「えっと、すーちゃん?」

「ごめん。ごめん。ごめん。私が、私がうかつに岩を動かしたせい! ラテが、ラテが!」


 ようやく現実を理解してきたラテが、すみれ姫を抱きしめる。


「すーちゃん、ありがとう。ありがとう。助けてくれてありがとう」

「ううん。ちがう。私、私が岩を落とした。私がラテを危険な目に!」

「だって、岩を吹き飛ばしてくれたじゃない」

「私じゃない。私じゃないの」

「え? すーちゃんじゃない?」

「レーナ、ミシェル……」

「え? 誰?」


 ぽわんぽわん。


 金と銀の明かりが灯る。


(すーちゃん、しかたないなぁ)

(まあ、すーちゃんが、これだけ泣いているしね)


「すーちゃん、この金色と銀色の光は?」


 ラテが二つの光を交互に見ている。


「金色の方がレーナ、銀色の方がミシェル」

「えっと、えっと、お化け?」

((ズッ!))


 レーナとミシェルがこける。

 気持ち的に。


「ううん。精霊。友達。一緒に旅をしている友達」

(今まで隠れててごめん、って言って)

「今まで隠れててごめん、って言ってる」

「仕方ないわよ。私、精霊なんて、初めて見た。それに、精霊と友達なんて、そんなことばれたら、すーちゃん、つかまっちゃうよ!? だから、仕方ないよ。っていうか、友達を紹介してくれ嬉しい。ありがとう、すーちゃん」


 ラテは、ふと思い出す。


「もしかして、火魔法は」

「うん。レーナ」

「ありがとう、レーナ」


 金の光がぽよんと縦に揺れる。


「それと、助けてくれてありがとう、レーナ、ミシェル」


 金と銀の光がぽよんと縦に揺れる。


「この二人、言葉を理解できるのね」

「うん」

「まあ、いいわ。また崖崩れがいつ起こるともわからないから、とりあえず、ここを抜けましょう」


 ラテとすみれ姫が立ち上がった。


「すーちゃん、濡れちゃったね」


 と、馬車にすみれ姫を押して乗せるラテ。


「ラテも……」


 同じく馬車に乗りこんで来るラテを見ながらすみれ姫も言う。

 すみれ姫はラテに投げられて転がったため、ラテは地面にしゃがみこんだため、二人とも泥だらけでもある。


「すーちゃん、着替え、持ってるの?」


 あまりに少ないすみれ姫の荷物を見ながらラテは尋ねる。

 すみれ姫はポーチ一つしか持っていない。


「ラテは着替えるのか?」

「うん。泥だらけだし。濡れちゃったし。すーちゃん、着替え、無いの?」

「着替え……必要ない」

「え?」

「レーナ、ミシェル……」

((いいよー))

((リムーブ!))


 シュワン!


「え?」


 ラテが目を見開く。

 そして、くるくる回って、自分が来ている服を確認する。

 さっきまで濡れていた。

 泥だらけに汚れていた。

 だが、雨も汚れも今はどこにもない。


「もしかして、クリーンウォッシュの魔法、レーナちゃんとミシェルちゃんが使えるってこと?」

「くりーんうぉっしゅ?」

(そうって言って)

「そうだって」

「ありがとう! レーナちゃん、ミシェルちゃん」


 金のレーナと銀のミシェルが縦に揺れる。


「うーん。すーちゃんとレーナちゃんとミシェルちゃん。ずっと一緒にいたくなっちゃうわ……」


 ラテがそっとつぶやく。

 だが、三人には目的があることをラテは知っている。





「さ、また崖が崩れてくる前に行きましょう」


 ラテは馬車を動かした。



「「はるーのーあめーはー、つめたいー」」((うーはい!))

「「だけーどーおうまはー、すすーむよー」」((うーはい!)

「「にーもつーをつんでーー、((まえへーまえへー))」」

「「ぼーくらーのゆめもーつんでーー、((まえへーまえへー))」」

「「まーけるなー、まーけるーーーなーーー」」

「「((きいっとーまあってるー、あーーおーーいーーーぃぃ、そぉらぁあーーーーーぁぁぁ))」」



 すみれ姫が何度も歌うので、ラテも覚えてしまい、一緒に歌いながら馬車を進める。

 もちろん、レーナとミシェルの合いの手やコーラスはラテには聞こえていない。


「あははははは」


 突然ラテが笑った。


「ん?」


 すみれ姫が不思議がる。なぜ笑ったのかと。


「こんな楽しい依頼は初めてかも。すーちゃんのおかげだね。ありがとう」

「ん」


 すみれ姫もほほを染めた。



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