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歳をとらない病

 街道を北に向かう三人。

 一人はトコトコと。

 二人はぽよぽよと。

 レーナとミシェルは姿を消して。


 しかし、しょせん少女のトコトコ歩き。

 馬車に追い越され、馬に追い越され、人に追い越され。

 そのたびに、少女一人で歩いていることを疑問に思われるのか、視線を送られる。


 だが、すみれ姫は特に気にする様子もない。





 しばらく歩いていくと、街道が川に沿う。


(今度は、この川沿いにずっと行くのねー)

(まだまだ道のりは遠いねー)


 三人はトコトコぽよぽよと歩いて行く。





 夕方が近くなってくる。

 冒険者の街はローゼンシュタイン領の最北。

 よって、山脈を二つ越えるまで街はない。

 どうしても、野営となってしまう。

 これまでも森の中で夜を明かしてきたので特に気にもしないが。


(どうするー、今日はこの辺までにする?)

(そうね。何もないけど、精霊はご飯の心配もないし、すーちゃんも精霊化すれば襲われる心配もないし、本当に精霊って便利だわ)

(じゃあ、今日は川のせせらぎの音を聞きながら寝ようか)

(せせらぎじゃないけどね。普通に川だから、これ)


 そう話しながら、河原に向かう三人。

 すると、そこへ急ぎ走って来た馬車が止まる。


「おーい、お嬢ちゃん」

「ん?」


 すみれ姫が振り返ると、幌馬車が止まっていた。

 その御者台に座る若い女性がすみれ姫に声をかけたようだった。


「こんな時間にこんなところを歩いているなんて、危ないじゃないか」

「危ない?」

「もうすぐ夜だろう? お嬢ちゃんみたいな小さな子がどうして一人でこんなところに? 攫われでもしたらどうするんだ」

「んん-。旅をしている」

「旅? 一人で? お嬢ちゃんみたいな小さな子が?」

「……」


 三人でではあるが、レーナとミシェルのことをすみれ姫は言えない。


「近くの野営できるところまで連れて行ってやるよ。乗りな」

「……」


 馬車の女性はラテと言った。

 ラテは気づく。

 すみれ姫の行動がなんだったのか。


「あ、そうか。川の方へ行くところだったってことは、お花を摘みにかい?」


 すみれ姫は川の方へ顔を向け、見回す。

 砂利や砂があるだけで、花は咲いていない。


「花、咲いてない」

「あはははは。ごめんごめん。難しかったか。〇こかしっこだろう。待っててやるから」

「〇こ、しっこ」

(あー、またすーちゃんが気にしちゃう)

(すーちゃん、〇こもしっこも違うから、馬車に乗せてもらいましょう)

(そうよ。じゃないと、あの人、いつまでも待ってそうだし)

「〇こ、しっこ、ちがう。馬車乗せてもらう」


 すみれ姫は再び街道に戻る。


「いいのかい? 我慢できるかい?」

「我慢?」

「まあいいさ。我慢できるなら。さ、乗りな」


 と、ラテは馬車を降りて来てすみれ姫の後ろに回り、すみれ姫を御者台まで持ち上げた。

 そしてラテも御者台に戻った。


「それじゃ、出すよ」


 ラテは馬を動かした。


「あたしはラテ。ソロの冒険者だ」

「すみれ姫」

「姫? 姫様なのかい?」

「姫までが名前」

「そ、そう。長いね」

「すーちゃんでいい」

「すーちゃん。よろしくね」


 ラテは笑う。


「しかし、どうしてすーちゃんみたいな小さな子がこんなところを一人で歩いているんだい?」

「旅をしているから」

「旅?」

「お母さんが旅をして来いと」

「すごいお母さんだね。捨てられたんじゃないよね」

「捨てられた?」

「ごめんごめん。何でもない。で、北に向かっているってことはグリュンデールかい?」

「……」

(すーちゃん、特に決めてないって)

「特に決めてない」

「そうか。すーちゃんは、お金は持っているのかい?」

「もってる。今日、ギルドでもらったから」

「ギルドで?」

「幼女ケモミミ好きのギルマスからお礼だって」

「……どこのギルマス? グリュンデールのギルドで訴えてやる」


 ゴゴゴゴゴ


 ラテがお金の対価を勘違いして殺気立つ。


「すーちゃん、自分は大切にしなきゃダメだよ」

(すーちゃん、ラテさん、誤解してる。冒険者だからって)

「ラテ、誤解。私、冒険者」

「冒険者だからって、受けていい依頼と受けてはダメな依頼……冒険者?」


 ラテはすみれ姫を頭の先から足の先まで視線を送る。

 どう見ても子供だ。

 それが冒険者?


「お金は、地下から子供達を出したら、お礼だってくれた」


 そう言って、すみれ姫は冒険者カードを見せた。


「地下から子供? え? プラチナ?」


 ラナは、手綱を握りながら考え、考え、考え……記憶をたどって言った。


「神様?」


 そう言えば、今日通った冒険者の街の冒険者ギルドに寄った時に、そんな話を小耳に。


「神様じゃない。せい……成人」

「成人……って。大人だって言いたいの? その姿で?」

「ん」

「冒険者登録は十二歳以上。でも、その姿……」


 ラテが思い出したようにつぶやく。


「歳をとらない病か……」


(なに? その病気)


 聞いたことのない病の名前に、レーナが反応する。


「その病気、なんだ?」

「すーちゃんは知らないのね。っていうか、私も聞いた話で見たことないんだけど。本当にそんな病気があるのかも知らないよ。でもね、噂はあるの。それはね、世界中を旅してまわっているらいらい研っていう旅芸人の話なんだけど、そこのアイドルって呼ばれている女の子たちは、何年経っても姿が変わらないんだって。だから、歳をとらない病の人たちじゃないかって。そういう病気があるんじゃないかって」




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