神様はなんだってお見通し
そうこうしていると、ギルマスギムロとセリーヌが帰ってきた。
なぜかギムロのほほに手形がついているが。
「お、神様。待っていてくれたのか。すまなかった。セリーヌが飛び出してしまったらしいからな」
「ご、ごめんなさい。冒険者カードを渡してから飛び出すべきでした」
「いや、待っていてくれてよかった。ちょっと、部屋まで来てくれ。セリーヌは冒険者カードを持ってきてくれ。あ、ちょうどいい、チェルシーも」
ギムロはチェルシーにまで声をかけた。
ギルマスの部屋のソファにギムロ、チェルシー、そしてすみれ姫が座る。
「まず、これが冒険者カードだ」
「うん。ありがとう」
すみれ姫が素直に受け取る。
「「……」」
ギムロとチェルシーがすみれ姫を見つめる。
何か反応はないのかと。
その視線に気づくすみれ姫。
「なんだ?」
「あのな、そのカードの色に何かないのか?」
チェルシーはうんうんと頷いている。
首をかしげるすみれ姫にギムロが尋ねる。
「なあ、すみれ姫様、冒険者について、何を知っている?」
「街に入るのにお金がかからないこと。魔物を獲ってきたらお金をくれること」
「だよな。何も知らないんだな」
「知っていると」
(すーちゃん、ちょっと教えてもらおう。私も知らないから)
レーナがちょっとイラっとしたすみれ姫を諭す。
「教えて欲しい」
「はぁ。難しいお年頃なんだな。まあいいや。冒険者というのは、基本的に、人のお願いを聞いてくれる人のことだ。例えば、ギルドでは、魔物を倒して欲しいし、その素材や肉が欲しい。だから冒険者にお願いして討伐してきてもらう。つまり、冒険者が魔物を倒してくれたら、肉を持って来てきたらギルドはお金を払う。そういうことだ。だが、お願いは、魔物に関することだけじゃないし、お願いをするのもギルドだけじゃない。それで、お願いを達成したら、お金をもらえるんだ」
((「ふんふん」))
「どんなお願い事があるのかは、ギルドの人間に聞いてくれ」
「わかった。お金が欲しいときはお願いを聞けばいいのだな」
「ああ、できる依頼だけでいい。無理をするな。それでだ」
ギムロはすみれ姫のカードを指さす。
「そのカードだが、銀色に輝いているだろう」
「……それが?」
「その色は、すみれ姫様がプラチナランクの冒険者であることを示している」
「プラチナ? ランク?」
ギムロは説明がめんどくさくなってきた。
「ようは、すごい冒険者ってことだ」
「すごい……。私、すごい?」
「神様って呼ばれるくらいにはな」
ギムロはため息を一つつく。
「それで、これから旅に出るんだろう?」
「うん」
「お金が必要だろう?」
「うん」
「セリーヌ」
ギムロはセリーヌからお金の入った袋を受け取り、それをすみれ姫の前に置く。
「これは、リズとチェルシーの傷を治してくれた礼と、今回の奴隷商会の件の礼だ」
「これ、何?」
「お金が入っている」
「もらっていいのか」
「ああ」
「でも、お願いをされていない。お願いを聞いてお金をもらうのが冒険者と言った」
「お礼だと言っただろう。依頼に対する報酬じゃない。感謝の気持ちだ」
「もらっていいのか?」
((いいんじゃない?))
「ではもらう」
すみれ姫はそこそこお金の入った袋を受け取り、それを胸元に入れた。
よって、着物の胸が片方だけ、ぷっくりする。
少女の。
目が点になっているギムロに、パシン! と、セリーヌが張り手をする。
少女を変な目で見るな、と。
「セリーヌ、冒険者用のカバンがあっただろう。一つ持ってこい」
「はい、ギルマス」
セリーヌは、革の肩掛けポーチを一つ持ってきた。
「これに入れていけ」
「これももらっていいのか?」
「ああ」
すみれ姫はポーチにお金の入った袋を入れ、肩にかけた。
(それじゃ、すーちゃん、行こうか)
レーナがもう用事はないだろうと、すみれ姫に声をかけた。
「それじゃ、行く」
「ああ、気をつけてな」
すみれ姫は立ち上がり、部屋のドアノブに手をかける。
そして、そこで何かを思い出したかのように振り返り、ギムロに声をかける。
「ギルマス……」
「なんだ?」
「セリーヌはお前のことが好きなんだな」
「「な!?」」
ギムロがあっけにとられ、セリーヌが顔を真っ赤にして手をぶんぶん振り、チェルシーが口を押え笑っている。
「な、なんてこと言うんですか、そ、そんなこと……」
「わかるぞ。私は神様ではないがな」
すみれ姫は部屋を出て行った。
「ギルマス、えっと、あの、ち、違いますからね!」
セリーヌが真っ赤な顔で言い訳をする。
「セリーヌ、あきらめなって。神様はなんだってお見通しなんだよ」
「チェルシーさんまでー!」
「あははははは」
チェルシーの笑い声が部屋中に響いた。
すみれ姫は通りを歩いてとりあえず北の門をめざす。
(おっかね、おっかね、おっかねはとっても大事だよー)
(「っほい!」)
(なっかなかふえないおっかねはね)
(「っほい!」)
(だけどすぐになっくなるよ)
(「っほい!」)
(だかーらどうーかはなれなーいでー、ふーたりーの(「こころのーようにー」))
(でもーねおかねはーまわるのよー、私たち―の(「たーびーのよーうにーーーーー」))




