ギルマスギムロと衛兵隊長ロベルトの趣味(誤解)
「おいおい、この子ら、全員獣人じゃないか」
「いいのか? 我が国は、獣人の国とも平和条約を結んでいただろう?」
「しかも、ここ、王家直轄のローゼンシュタイン領だろう? こんなこと知られたら……誰が責任を取るんだ?」
「「……」」
「この街の治安を維持しているのは衛兵であるお前達だよな」
「ちょっとまて、冒険者だって街を守る義務くらいあるだろう」
「冒険者は国に従っているわけじゃないんだよ」
「そんなこと、この領で言えるか?」
「……言えんな」
「やばい。ローゼンシュタイン家を怒らせたらぜったいにやばい」
ギムロとロベルトととの責任の押し付けあいの結果、どちらもこの件がまずいことだと認識し、どうしていいかと悩むが、解決策を思いつけない。
「じゃあ出るか」
しかしながら、すみれ姫は焦っている二人に対し、軽く提案する。
「どうしてそんなに軽いんだよ!」
「上には奴隷商の奴らがいるんだぞ」
「聞けばお前達はギルドマスターに衛兵の隊長だろう? 余裕ではないのか?」
ギムロとロベルトの焦りに対し、すみれ姫は冷静に返す。
「ま、まあな」
「そりゃそうだ。わすれてたわ」
ロベルトは剣に手をかけ、ギムロは拳をぽきぽきと鳴らした。
ギムロとロベルトはこそこそと相談をする。
「どうする? 奴隷商たちはまだいい。奴隷が襲ってきたら?」
「傷つけるわけにはいかないな。どうにもならん」
「だが、あの子が魔法を使ったらすべて切り刻まれるぞ」
「……」
ロベルトの意見にギムロは言葉をなくす。
おそらく、すみれ姫は敵も保護対象も区別しないだろう。
奴隷は商品なのにだ。
傷つけられては困る。
後で補償問題になりかねない。
だが、すみれ姫がそんなことをわかってくれるかというと、無理だろう。
「あの、すみれ姫様?」
恐る恐る、というか、再び丁寧にギムロがすみれ姫に声をかける。
「なんだ?」
「これから地上に出してほしいのですが、出た後は手出し無用でお願いできません?」
「手出し? 私は旅に出る」
「……」
なんちゅう、マイペースな。
聞いていたロベルトは思う。
「それじゃ、出ますか。こっちに扉があって、それを魔法で……」
ドゴーーーーン!
「「……」」
「「「「「……」」」」」
突然、天井に大穴が空いた。
これにはギムロもロベルトも、子供達ですら目が点になる。
奴隷商会の玄関前では奴隷商の会長デーブと衛士達がやりあっていた。
「団長が中にいるんだ」
「団長様は、何もないから戻っていいとおっしゃっておりますが」
「だが、なぜ団長が出てこない。何かあったのか?」
「団長様はいま、お食事の途中です。いいです? 大きな声では言えませんよ。うちには女性の奴隷もおります。団長様は、ギルドマスターと一緒に今、試食と言う名のお食事中です。だから、皆様にはお引き取りを」
「「「……」」」
衛士達の目が点になる。
団長、何をしているんだ。後で奥さんに言いつけてやる、と。
「はぁ、わかった。では我々は戻っているので、団長には報告書を、と、お伝えください」
と、衛士達が帰ろうとしたその時、
ドゴーーーーン!
奴隷商会の床に大きな穴が開いた。
そしてその中から……。
穴が開いて、外から地下室へと光が入ってくる。
(ちょっと消えるね)
(私も)
そう言って、レーナとミシェルは姿を消す。
「それじゃ、私は旅に出る」
と、すみれ姫はふわりと飛び上がろうとする。
(ちょっと待って、ギルマスに冒険者カードもらわなきゃ)
ミシェルがすみれ姫に声をかけた。
すみれ姫はくるりと見回しギムロに向かう。
「ギルドに行けばいいのか?」
「えっと、そのマイペースさ加減には感服するが、この状況、わかっていないのか?」
「???」
「えっと、わかっているのか? 神様、すみれ姫様はさらわれたんだぞ?」
「さらわれた?」
「やっぱりわかっていなかったのか」
ギムロは頭をふりふりする。
「おーい、誰かいるのか?」
ロベルトは穴の外に声をかける。
そう言えば、どうやって上るんだ、この穴。
「おい、団長の声がしたぞ。みんな、行くぞ!」
衛士達が無理やり商会内に入って行く。
「おい、待て、勝手に入るな!」
デーブが叫ぶが、衛士の数にはかなわない。
衛士は、床に開いた穴にまで詰め寄り、下を覗いた。
そこには、団長とギルドマスターのギムロとそして、すみれ姫と獣人の子供たち。
衛兵たちは次々にロベルトに悲痛な声をかけた。
「だ、団長……」
「団長! 見損ないました!」
「団長、好みのことについては言いません。ですが、やっていいことと悪いことが!」
「ギルドマスター、貴方がついていながら団長を止められなかったのですか?」
「ギルドマスター、貴方も団長と同じ趣味だと!?」
穴を囲んで地下にいるロベルトとギムロに向かって叫ぶ衛士達。
しかし、穴に向かって叫ぶということは……。
ゲインゲインゲインゲインゲイン!
「「「「「うわっ!」」」」」
奴隷商従業員により蹴り落とされる衛士達。
「貴様ら、見たな!?」
デーブが穴から地下室に向かって叫んだ。
それに衛士が答える。
「いくら団長とギルマスが幼女趣味だからって、あてがっていいかどうか、判断がつかないのか! これは犯罪だぞ!」
衛士が地下室から声を張り上げた。
「「……」」
衛士達は何を勘違いしているのだろうか。
デーブに向かって叫ぶ衛士達の言葉に、ギムロもロベルトも言葉をなくす。
「ちょっと待とうか」
ロベルトが叫んだ衛士の肩をつかむ。
ギムロも反対の肩をつかむ。
「何を言っているのかな?」
「あの商会長が言うには、団長とギルマスが、ある意味お食事中だと。それで、その相手をしているのが……。そういう趣味の人がいるのはわかりますよ? 幼女とか、幼女のケモミミをもふるとか。わからなくはありません。ですが、団長とかギルマスとか、そういう立場の人が、やっていいことではありません!」
「「……」」
それを聞いて、捕らわれていた獣人の子供達は、固まって震える。
子供達であっても、その意味を理解したのだ。




