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ミシェルによる身代金の要求

 ミシェルは上へとあがる階段を見つけ、ぽよぽよと上へと登って行く。

 行き止まり。

 ドアだ。


 まあ、気にしても仕方がない。

 自分は精霊である。

 これくらいは抜けてしまおう。


 ドアをすり抜けるとそこは、倉庫のようだった。

 テーブルやら工具やら、狭い倉庫に詰め込まれている。


(うーん。宿じゃないわね)


 ミシェルはその倉庫からも抜け出す。

 すると、広い空間が。

 どちらかというと、こっちが本当の倉庫っぽい。

 そこにはたくさんの檻が並べられている。


(ペット屋さんかしら?)


 だが、檻の中にいるのは男だったり女だったり。


(ここは……)


 ミシェルはさらに建物の外へ出る。

 もう、空が白み始めている。

 ミシェルが振り返ると、そこには看板。


(うーん。奴隷商か。なぜこんなところに)


 ミシェルは一旦戻ることにする。





(レーナ、レーナ)

(ん、なに?)


 むにゃむにゃと起きるレーナ。


(レーナ、私達、さらわれたっぽい)

(さらわれた? それが本当なら、さすがに起きるでしょう)

(起きてなかったけどね)

(ミシェルも?)

(私も)

(で、どういう状況?)

(ちょっと見て来たけどね、ここ、奴隷商。で、その地下。周りに牢屋が並んでいるけど、入っているのはみんな子供。地上の倉庫には、大人の奴隷が入っている檻がたくさん)

(うーん。そうなんだ。どうしたらいいかな)


 レーナとミシェルがすみれ姫に視線を送る。


(とりあえず、すーちゃんが起きるまで待っていましょう。すーちゃんも疲れているでしょうし)

(そうだね)

(それで、私、ちょっと宿屋に戻ってくるわ)


 ミシェルが提案する。


(それでどうするの?)

(ここにいるって、メモを残してくる)

(そしたら、誰かが助けに来てくれるってこと?)

(そう思うけど)

(すーちゃんが起きたら暴れちゃうんじゃない?)

(どうかな。レーナが暴れちゃうかもよね?)

(あはははは。でも、すーちゃんにも精霊化してもらえば、簡単に出られるんじゃない?)

(ここ、地下よ。しかも、隠し扉の中だった。私としては、ここにいる子供達も見つけてもらいたいんだけど)

(違法奴隷かもってこと?)

(うん。だって、グレイスさんはこの世界では十二歳までは勉強だって。だから、こんなところにいるのはおかしい。違ったら違ったでいい。だから、すーちゃんには少しおとなしくしてもらってて)

(了解)

(じゃあ、行ってくるわ)

(行ってらっしゃい)


 ミシェルは再び出て行く。

 奴隷商を。

 そして、宿に戻る。





(さてと、なんて書こうかしら)


 当てがわれた宿の部屋に戻り、デスクに向かうミシェル。

 そして、風魔法でペンを操作する。


(そうね、さらわれたのだから……『女神はさらった。帰してほしくば奴隷商の地下まで来い。金貨百枚もって』……少ないかしら。『千枚持ってこい』っと。そう言えば、金貨ってこの世界にあるのかしら。あったとして、どのくらいの価値なのかしら。まあいいわこれで)


 ミシェルは風魔法でもう一枚紙を取り出す。


(今度はギルド宛にしましょうか。『おいギルマス、急いで奴隷商の地下まで来い。でないと街ごと吹き飛ばすぞ。by女神』……あはははは。これなら急いで来てくれるかな)


 ミシェルはギルマスにあてた手紙を風魔法で飛ばしながら、自分も窓から飛び出した。


 ひらひらと舞うギルマス宛の手紙。

 それを、ギルドまで運び、そして、ドアの間に挟む。


(よし、これでいいかしら。さ、レーナとすーちゃんのところに帰りましょうか)





「神様、朝です。お食事はいかがしますか」


 すみれ姫の部屋を訪れる女将。

 返事が聞こえてこない。


 トントントントン


 ノックをしても動く気配もない。


「小さい子だし、まだ寝てるのかしらね」


 女将はドアノブに手をかける。


 カチャ


「あら、開いてる」


 女将は首をかしげる。

 しかし、開けてしまったものは仕方がない。


「神様、入りますよ」


 女将は部屋に一歩踏み入れ、部屋の中を見回す。


「あら、もう出て行ってしまったのかしら。まあ、お金はギルド持ちだし、いいんだけど。一声かけてくれれば……」


 女将がデスクのメモを見つける。

 女将の顔の血の気が引いて行くが、女将はそんなことを気にしている場合ではない。

 なにせ、金貨千枚を要求されているのだ。


 誰に?

 自分か?


 確かに、宿泊された女神が攫われたとあっては、宿の警備体制の不備を疑われる。

 そんな宿を誰が信用して利用してくれるだろうか。

 だが、金貨千枚?

 払えるわけがない。

 一生涯で稼げる額ではない。


 女将は走る。

 階段を駆け下り、宿を出て、そして、衛兵の詰所へ。





 ギルドの朝は早い。

 朝早くから出かけていく冒険者がいるからだ。


「ふわーーー」


 あくびをしながら出勤する受付嬢、セリーヌ。


「ん? 何かしら」


 ドアのかぎを開けようとして、ドアに挟まれたメモに気づく。

 セリーヌは恐る恐るそのメモを開く。


「……」


 セリーヌは、顔を真っ青にして、走り出した。

 ギルマスが寝ているであろう、二階のギルマス部屋へ。


「ギルマスー!」


 バン


 ギルマスの部屋のドアを勢いよく開けるセリーヌ。

 ソファに寝転がって寝ているギルマスがむっくりと起き上がる。


「セリーヌ、うるさい。まだ朝早いじゃないか。寝かしてくれ」


 パタン


 ギルマスが再び寝転がる。

 しかし、それを許さないセリーヌ。

 ギルマスの襟首を両手でつかんでぶんぶんとする。


「こ、これ見てください。街が、街が無くなります!」



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