表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/57

すみれ姫、誘拐される

 ギルマスに連れられて森を出て、そこから馬車に乗ったものの、街に到着した時にはすでに夕方だった。

 ギルマスが気を利かせる。


「すみれ姫様、本日は遅くなりましたので、宿にお泊りいただいて、冒険者カードなどは、明日の朝にしてはと思いますが」

「うむ。ベッドで寝たい」

「かしこまりました」


 馬車は高級宿の前に止まった。





 ギルマスが宿に入って交渉する。


「女将、最上級の部屋を用意してくれ。金はギルドで持つ」

「いいけど、食事は?」

「それもできるだけいい物を」

「わかったよ」





 ギルマスと受付嬢は、すみれ姫を連れて宿に入る。


「女将、この女性だ」

「女性……」


 女将は、すみれ姫の前にしゃがんで、目線を合わせて尋ねる。


「お嬢ちゃん、ご飯はどうする?」

「いらない」

「「「……」」」


 ギルマスがアイコンタクトで、不要だ、と、女将に伝える。女将も、作る前でよかったと思う。


「寝る」

「それじゃ、お嬢ちゃん、お部屋に行きましょうか」

「それじゃ、女将、頼む」


 ギルマスはそう女将に丸投げをして宿を出て行った。





「お嬢ちゃん、ここのお部屋だよ」

「うむ」

「明日の朝、起きれるかい」

「うむ」

「それじゃ、お休み」


 女将は、部屋から出て行った。





「女将、どうだった?」


 どうしてもすみれ姫の様子が気になってしまい、宿に戻って来たギルマスが女将に尋ねた。


「寝るってさ」


 その答えに安心し、ギルマスは胸をなでおろす。


「そうか。それじゃ、明日の朝、迎えに来る」


 だが、気になることは気になる。

 女将は逆にギルマスに尋ねる。

 小さな子が一人で、しかも冒険者ギルドのビップ待遇。


「なんだいあの子」

「まあ、うちの冒険者の命の恩人ってところだ」

「そうなんだね。わざわざあんたが対応するようなことかい?」


 ギルマスは女将の耳に顔を近づける。


 バチン!


「何するんだい」

「いや、大きな声で言えないことをと」


 ギルマスが頬を押さえる。


「そうならそうと先に言いな」


 と、女将が耳を向ける。


「神様級の魔導士らしい」

「そうかい。それじゃ、この街が吹き飛ばされないように、丁寧に対応しておくれ」

「女将もな」





 着物を着たすみれ姫は嫌でも目立つ。

 たとえ、馬車から降りて宿に入る、たったそれだけの時間であっても。


「あ、あれは? もしかしてギルドに貼ってあった神様か? ついに捕まったのか? だけど、捕まえに行った兄貴たちは?」


 馬車から降りるすみれ姫を見ていた青年は考える。

 この青年は、盗賊の一人。


「北の森はかなり広い。兄貴たちは見つけられなかったのか? ならば、この街にいるということを頭に伝えなければ」





「頭!」

「会長と呼べと」

「会長!」

「なんだ?」

「神様が捕まった!」

「神様が? あいつらが捕まえて来たのか?」

「いや、冒険者ギルドのギルマスたちだ」

「あいつらは、空ぶったのか?」

「それはわからないけど、ギルマスたちの方が早かったことでは?」

「そうか。で、その神様はどうしてるんだ?」

「宿に入って行った」

「そうか。じゃ、夜中にでも攫ってこい」

「神様級の魔導士を?」

「治癒魔法と水属性魔法だろう? 水属性魔法をどのくらい使えるのか知らんが、とりあえず盾でも持っていけ」

「わかった」


 会長と呼ばれた男は、すみれ姫が風属性魔法を使うが水属性魔法は使えないことを知らない。

 ダンの情報を耳に入れただけである。





 森を数日歩き回ってのベッドである。

 すみれ姫は爆睡する。

 すみれ姫の横では、姿を消したままのレーナとミシェルも爆睡する。

 森の中で寝たところで三人とも精霊である。

 危険なものなど何もなかった。

 しかし、落ち着いて寝られるかというと、それは違う。

 よって、ここぞとばかりに寝る。

 ちょっとのことで起きたりはしない。





「おい、さすが子供だな。よく寝てるぜ」

「どうする? そのままシーツにくるんで持って行くか?」

「さすがに起きるだろう。担架をつくれ。シーツでくるんで担架に乗せて運び出してしまおう」

「起きたらどうするんだ?」

「しょせん子供だ。一撃入れれば気絶するだろうさ」

「わかった」


 男達は、すみれ姫が寝ているベッドのシーツを使ってそのまますみれ姫をくるみ、担架に乗せた。

 そして、部屋を後にした。


「おいおい、全く起きなかったじゃないか」

「子供の寝つきはすごいな」

「お前も子供のころはこんなにかわいかったんじゃないのか?」

「何言ってるんだ。これ以上に決まってるじゃないか」

「「あはははは」」

「「しーーーー」」





 男達はとある商会に裏口から入る。

 そして、隠し扉から階段を降りて地下へ。


 地下には湿度の高い陰鬱とした空気が充満しており、通路の左右には鉄格子が並ぶ。

 その一つに入り、ベッドの上に担架を乗せる。


「これでいいな」

「子供の誘拐って、ちょろいんだな」

「全くだ。それじゃ行くか」


 男達は鉄格子の鍵を閉め、そして、地上へと戻って行った。





(ん、んん、寝心地悪い……)


 起きたのはミシェル。

 ベッドの上に寝ていたはずなのに、今は硬い木製の台の上。

 寝心地の悪さに目を覚ましてしまった。


(んーと、ここはどこかしら?)


 確か、宿で寝ていたはず。

 それが、湿度が高く重たい空気、実体がないのでにおいはわからない。


 見回すと鉄格子が目に入る。

 通路を挟んだ向こう側にも鉄格子。


 ミシェルは姿を消したまま、鉄格子を抜け、ぽよぽよと移動する。

 隣の鉄格子。

 そのまた隣、向かい側……


 どの鉄格子の中にも、子供がいる。

 子供達は寝ている。

 まだ夜中なのだろうか。時間がわからない。

 真っ暗なのは、窓が無いせいかもしれない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ