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歌が楽しい? 歌が好き? 楽しいって? 好きって?

 翌朝、ふすまの外から声がかかった。


「レーナ様、ミシェル様、おはようございます。本日、お出かけ前に、カルディナ様がお話があると申しております。お越しくださいますか」


 レーナとミシェルが顔を見合わせる。

 お世話にもなったし、しかたないよね、と。


((今行きます))


 二人は、迎えに来たハイエルフには聞こえない返事をして、風魔法でふすまを開けて縁側に出た。





 昨日通された部屋。

 そこに、昨日と同じ配置で高位精霊達が座っている。


「御足労、感謝する」


 カルディナが声をかけてくる。


(こちらこそ、泊めていただき感謝します)


 レーナとミシェルが気持ち頭を下げる。


「これからまた旅に出るのであろう?」

(はい、そのつもりです)

「だが、お二方は低位精霊。高位精霊が必要であろう?」

(ここまで二人で歩いてきました。なので、旅に必要かどうかはわからないです。ですが、私達が求めているのは、変化を望む高位精霊様です。そのような方を探しています。心当たりが?)

「そのようなものに心当たりはない。だが、変化を望む高位精霊に、お前達が変えてもいいのではないか?」

((???))

「お前達は、変わろうとしている。それを見て、変わろうとしていなかった高位精霊が考えを変えるかもしれないぞ? ということだ」

((???))

「お前達が高位精霊を求めているのは、自身の昇格がかかっていることと自然エネルギーの供給源、実体を持つものがいた方が便利、そういうところだろう?」

(存在のために必要かはわかりませんが、まあ、おっしゃる通りです)

「こちらからの提案だが。すみれ姫を連れて行ってほしい」

((え?))

「「「え?」」」


 レーナとミシェルが、高位精霊のティア、サラス、テルが驚きの声を上げた。


「すみれ姫は承諾済みだ。頼む」

((……))

(えっと、確認ですが)


 ミシェルがカルディナに尋ねる。


(自ら変えようとしている高位精霊を探すのは困難だから、すみれ姫ちゃんをそういう精霊にしろ、そういうことですか?)

「しろ、とは言っていない。お前達といたら、お前達を見ていたら、そう変わるかもな、ということだ。変わろうとしている高位精霊がいないとも言っていない。すみれ姫を連れて、捜せばよい。ただ、体は小さくても、すみれ姫は高位精霊だぞ。低位精霊、中位精霊と長い時をすごし、そして、高位精霊となった後もどれくらい過ごしたかわからん。それを、ちゃんづけとは」

(よし、すみれ姫ちゃん、一緒に行こうか!)


 レーナがすみれ姫に声をかける。

 カルディナのお小言はスルーしたようだ。

 すみれ姫は頷く。


「はぁ。そうしたら、すみれ姫の準備を整える。それまで部屋で待っていてほしい」

((はい))





「用意できた」


 ふすまの向こうから声がかかる。


((はーい))

(じゃあ、出かけようか)


 と、レーナがふすまを開けて縁側に出る。


 そこにいたすみれ姫。

 菫色を基調とした着物を着ている。

 髪はストレートのまま。


(すみれ姫ちゃん、ちょっとその裾、ちょっとだけ長くない? 床についてるよ)


 ミシェルが指摘する。

 しかし、


「問題ない」


 とだけ、すみれ姫は答えた。





 屋敷の正面まで縁側を歩き、階段を降りる。

 そこにあったすみれ姫の靴。


(道中下駄?)


 高さが十センチもありそうな下駄。

 花緒は菫色。

 それをすみれ姫は履いた。

 これで裾は引きずらない、と言うことらしい。


 カルディナたちが見送りに来た。


「それじゃすみれ姫、行ってこい」

「はい、お母様」

((お母さんだったんだ))

「そう呼ばせているだけだ」

((……))


 つぶやきがすべて漏れるということを忘れていた。

 反省した二人。

 まあいいや、と思いなおす。


(それじゃ、行きます)

(泊めてくださりありがとうございました)

「うむ。すみれ姫のことを頼む」

「行ってきます。お母様」


 レーナ、ミシェル、すみれ姫の三人は、ハイエルフの里を後にした。





(ねえ、すみれ姫って私達が消えても私達のこと感知できる?)

「うん、できる」

(すみれ姫自身、消えることってできる)


 しゅわん!


(うん、できる)

(戻っていいわよ)


 しゅわん!


(すみれ姫って、お金持ってる?)

「うん。たぶんちょこっと。どうして?」

(私達、宿屋で寝泊まりしたいなーって)

「森の中、どうする?」

(森の中は仕方ないけど、街の中なら布団の上で寝たい)

「お金、無くなったら?」

(その時考える)

(きっと何とかなるわよ)

(さすがミシェル)

(んもう)





 レーナとミシェルはぽよぽよと、すみれ姫はコトコトと、森の中を進んでいく。


(……)

(……)

「……」


 会話がない。



(くらいーもりをーてけてけーあるくー、それはーちいさなーすみれーひめー)

(どうかーわたしにーはなしーかけてーわたしをーここからーつれーだしてー)

((ああー、は、く、ば、の、おおーーーーじさまーーーー))

((私の、この手を、つかーまえてー))

(わたしのーこころをーつよくつよくつよく、(だーきーしーめーてーーーー))

((ああー、は、く、ば、の、おおーーーーじさまーーーー))

(ここはーさみしいー、(えーるーふーのーーーーぉさーーーーとーーーーーぉ))



((あはははははは))


 笑っている二人を横目に、すみれ姫が尋ねた。


「今の何?」

(すみれ姫をエルフの里から連れ出した歌だよ)

「うた?」

(……歌、知らないの?)

「うん。で、なぜ笑ってたの?」

(楽しいからよ)

「歌が楽しいってこと?」

(そうよ。私達、歌が好きなの)

「歌が楽しい? 歌が好き? 楽しいって? 好きって?」

((……))



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