だって、私達はアイドルだから!
どうしていいかわからないので、とりあえず言うことを聞いておこうと、レーナが右、ミシェルが左の座布団の上に、降りた。
「このようなところまでよく来てくださった。私はカルディナ。風の高位精霊だ」
そう言って、座ったまま頭を下げる。
その行為に、エルフ達が驚きの表情を浮かべる。
「皆の者。私もこのお二方をどう扱っていいかわからないのだ。だから、頭を下げた。とりあえず、話を聞いてみたいと思う。おとなしくしておいてくれ。では、お前達も挨拶を」
そうカルディナが言うと、右側の女性と少女。
二人とも水色の髪。水色の服。
「ティア、水の高位精霊」
「サラス、同じく」
左側、黄色い髪の女性。
「テル、土の高位精霊」
そして、緑色の髪の子供。
「すみれ姫……」
そう、五人の自己紹介が終わる。
(姫がいたよ、姫が。姫までが名前なのかなぁ)
(さすが高位精霊……)
そんな雑談を始めたレーナとミシェルにカルディナが二人の名を尋ねた。
「すまないが、お二人も名前を教えてくれないか?」
(レーナ)
(ミシェル)
二人がそれぞれ自分の名前を告げる。
「いくつか聞きたいことがあるのだが、いいだろうか」
((はい))
(こちらも聞きたいことがありますので)
ミシェルも自分たちの要求を忘れない。
「それでは、まず、私の方からお願いする」
そう言って、カルディナはレーナとミシェルに問う。
「まず、しらゆき様とみゆき様と時を過ごされたと」
(はい。ローゼンシュタインのお屋敷で、九か月ほど。語学と魔法を学びました)
すみれ姫一人を除いて高位精霊が驚く。
(あの、逆に聞いていいです? なぜ、驚くのですか?)
「しらゆき様もみゆき様も大精霊様だ。我々より高位の存在なのだ」
(しらゆきもみゆきも……)
「ちょっと待て、しらゆき様とみゆき様を呼び捨てにしてよいものではない」
(ですが、呼び捨てにしろと、言ってくれて)
「「「「……」」」」
「話が進まなくなるから続けるが」
カルディナは続ける。
自分達、レーナ達、しらゆき達の身分的立ち位置がよくわからなくなってしまったのだ。
「お二人は、自らの意思で魔法を使えるのか?」
(ええ、しらゆきとみゆきに教えてもらったから)
「お二人は、一体何者なのだ?」
((……))
(えっと、低位精霊って言われてますけど、一応)
ミシェルが答え、レーナが縦に体を動かす。
「皆の者、姿を現せ」
カルディナが声をかけると、無数の光、白の光が部屋中に舞いだした。
(きれい)
(ほんと。これ、レイ様の周りを舞ってた低位精霊と中位精霊と同じね。きれい)
「お二人は、今、自分達のことを低位精霊と言った。この周りの低位精霊や中位精霊との違いが判るか?」
((???))
「色が違う。大きさが違う。意思を持っていない。自ら魔法を使わない」
((……))
「つまり、お二人は低位精霊や中位精霊とは異なる存在だ。しかし、実体化できないことから高位精霊や大精霊とも違う」
うーん、と悩み始めてしまったカルディナ達。
(あの、逆にこっちから質問しても?)
ミシェルが声をかける。
「いいぞ」
(まず、ここはどこですか?)
「ここは、ハイエルフの里、その奥にある、我々高位精霊の居住区だ」
(なぜ、あの膜に覆われて?)
「外界とは関係性を持とうと思っておらんからな。人が入って来ないように、ティアとサラスと協力し、外界とのつながりを遮断している」
(な、なるほど。では、知っていたら教えてください)
「なんだ、まだあるのか?」
(高位精霊になるためにはどうしたらいいですか?)
「「「「「???」」」」」
全高位精霊が首を傾げた。
(しらゆきとみゆきはもともと大精霊だしって。レイ様達は知らないって)
(しらゆきとみゆきが言うには、低位精霊は高位精霊といて自然エネルギーの供給を受けろと。それで、精霊は恒久の時を生きるから特に変化は望まなくて、なかなか階位が上がらないのでは、と。だから、変化を望む、そういう高位精霊を探せと。そうアドバイスを受けました)
「確かに我々高位精霊を含んで精霊は変化を望んだりしていない。こうしてイレギュラーがあった時に対応するくらいだ。それも、世界を変えないようにな。だから、何百年も何千年も何万年もおそらくこのままだ。私達の周りで最近高位精霊になったのは……」
カルディナはすみれ姫に視線を送る。
すみれ姫はもう眠そうだ。
「すみれ姫はここに来た最後の高位精霊だが、森にいたのをハイエルフ達が見つけて連れてきた。いつ、どうやって高位精霊になったのかはわからない。本人もわかっていないだろう」
カルディナはすみれ姫にもう一度視線を送るが、すみれ姫は聞いていない。
眠そうに瞼を閉じかけている。
カルディナは四人の高位精霊を見回してきっぱりと言う。
「ここには変化を求める高位精霊はいない」
カルディナは、レーナとミシェルに問う。
「お二人方は何がしたいのだ?」
(そんなの決まってる。世界を変える。私達がアイドルになって、全世界の視線を集める。世界の中心になる。そんなアイドルになる。ナンバーワンアイドルになる!)
「は? そんな精霊がどこにいる」
カルディナは一応、アイドルの存在を知っている。ロッテロッテのことだ。だが、自分達がロッテロッテのようになりたいとか、そんなことは考えたこともないし、考えるつもりもない。
(少なくともレイ様、ドライア様、ディーネ様は、アイドルロッテロッテのバックダンサーとして、演出として活躍されていたわ。それは見事なステージだったわ。ロッテロッテの二柱の神が中心だとしても、そのステージをより高次なものに作り上げたのは、間違いなくその三人よ)
(つまり、そのステージは精霊によってつくられている。だけど、私達が目指すのは違う。精霊である私達がアイドルになり、私たち自身がそのステージを演出する。精霊による全世界の人たちのための精霊のステージを作り上げるの)
((だって、私達はアイドルだから!))




