高位精霊に出会った
((あれ?))
レーナもミシェルも既視感がある。
リスベルが膝をついたように、このエルフ達もそうしているのだ。
「精霊様、よろしければ、お姿を我らにお見せください」
エルフの一人にそう言われ、レーナもミシェルも悩む。
自分達が低位精霊であることで、リスベルに落胆された記憶がよみがえってくるのだ。
(どうしようか)
(でも、このエルフさん達に高位精霊のことを聞きたいし、姿を消したまま逃げるわけにもいかないわよね)
レーナもミシェルも姿を現わす。
金と銀のその光の玉の姿を。
「「「え?」」」
それを見た、エルフ達の疑問の声。
当然、レーナとミシェルは思う。
またか、と。
エルフがレーナ達に話しかけた。
「低位精霊様とお見受けします。失礼ながら、ご確認をさせていただきたく。精霊様は、我らの言葉を理解しておいでなのですか?」
二人は、はぁ、とため息をついて、縦に揺れる。
姿を見せろと言われたから見せたのだ。
言葉は理解していることくらいわかるだろうに。
「あの、お二方は、本当に低位精霊様なのですか?」
そんなことを聞かれてもよくわからないレーナとミシェル。
だが、低位精霊なのだろう。
なぜなら、中位精霊になった記憶はないし、実体化できないのだから高位精霊なのでもない。
そうやって、どう答えようかと考える。
というか、答えることもできず悩んでいると、一人の女性が突然目の前に現れた。
緑の髪、緑のワンピース、白い肌。
(大人になったドライア様?)
というレーナのつぶやきに、目を見張る高位精霊の女性。
「ドライア様をご存じか?」
(えっと)
私達の言葉が届くということは精霊、人の形をしているということは高位精霊かと、レーナが言いよどんでいると、ミシェルがレーナに代わって答えた。
(ローゼンシュタインのお屋敷で、ドライア様にお世話になりました)
「ローゼンシュタインだと? では、本当のことか」
(はい。ただ、私達と一緒にいて、この世界のことを指導してくださったのは、しらゆきとみゆきという二人の精霊でしたが)
「しらゆき様? みゆき様?」
((様?))
高位精霊の女性はレーナ達に背をむけ、周りを囲んでいたエルフ達に命じた。
「お前達、このお二方をお連れしろ」
「お、ふたかた?」
エルフが疑問に思い、聞き返す。
自分達が崇めている高位精霊様が低位精霊様に対して丁寧な対応を? と。
「聞こえなかったか?」
「承知いたしました」
その返事を聞いて、慌てているかのように高位精霊は消えた。
「カルディナ様より、仰せつかりました。よろしければ、ご案内いたしますので、ついてきていただけますか?」
先ほどの女性はカルディナというらしい。
エルフの誘いに、体を縦に振って肯定するレーナとミシェル。
それを見て、エルフの集団は、立ち上がり、森の奥に向かって歩き出した。
レーナとミシェルはそれについて行く。
しばらく歩いて行くと、きれいに整えられた森に出た。
木と木の間には雑草も低木も生えていない。
まるで庭園のような森。
見上げれば、枝が広がり、葉が生い茂っている。
そして、その隙間から差し込む光。
(うわー、きれー。深緑の森ね)
(そうね。大きな木がいくつも。広い間隔をあけて……本当にきれいだわ)
さらに進んでいくと、直径数メートルはありそうな巨木が何本も、間隔をあけて空へと立ち上がっている場所へと出た。
その上を見上げると、ツリーマンションのように、家が大きな枝の上に立ち並んでいた。
しかも家々が橋でつながっている。
(あれがエルフ達の家かしら)
(そうなのかも。すごいわね)
さらにエルフ達について行くと、木々の無い広場に出た。
競技場のグランドのように広い空間だ。そして、二人は目を奪われる。
(桜……)
(桜よね。きれいだわ……)
その空間を囲っているのは桜の巨木。
今は春だけに、どの木も満開の花を咲かせている。
二人が立ち止まってしまったので、エルフが振り返り、声をかけた。
「先を進みます。高位精霊様達をお待たせするわけにはいきませんので」
(達? 達って言った?)
(言ったわね。複数いるのかしら。それで、この自然エネルギーの密度なのかしら)
レーナもミシェルも縦に揺れて了承の意を伝えて動き出す。
その空間の先、サクラの木々を越えると、再び新緑の森が広がっている……、かと思いきや、近づくと、シャボンのような膜が広がっているのがわかった。
上空にも左右にも広がって。
エルフがその膜に触れると、波紋が広がったのだ。
エルフ達は、構わず、その膜へと歩み、そして、膜を突き抜けて行った。
(私達も行くのかなあ)
(そうよね、行かないと)
二人がその膜を突き抜けると……新緑の森はどこにもなく、きれいに整えられた庭、池、庭木、そして、床が持ち上げられた屋敷。
屋根は瓦。
(神社?)
(平安時代のお屋敷みたい?)
屋敷へと上がる階段の手前でエルフ達が靴を脱いだ。
そして、階段を上って行き、縁側の廊下を渡って部屋に入っていく。
そこで、エルフ達は二列に並んで向かい合った。
エルフ達は、目線で、そこを通るようにと、レーナとミシェルに伝える。
レーナとミシェルは、指示に従い、エルフの列の間を通って、奥へと進んだ。
すると、今度はエルフ達がレーナ達の後ろをついてくる。
その状態で、いくつかの部屋を横切ってたどり着いた、その突き当りの部屋。
正面の一段高くなった畳の上には、先ほどの女性、カルディナが座布団の上に座っていた。
その手前、右に女性と少女が同じく座布団に座り、左に女性と子供が座っている。
右と左で向かい合って。
そして、その手前に座布団が二つ、置かれていた。
「よく来てくださった。座布団に座っていただきたい」
カルディナがレーナとミシェルに声をかけてきた。




