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リスベルとアシュリー

(うーん。泥棒だとして、私たちが手を出していいのかすらわからないわよね)


 レーナと美鈴はそう相談をしていると、その人物が厩舎にまでやって来た。


(あれ? こっちにきた?)

(あ、この人)


 美鈴が気づいた。

 知っている人物だ。





「精霊様! こんなところにおいででしたか」


 黒のタイトスカートのスーツを着たリスベルがレーナと美鈴に向かって跪いた。


(あ、さっきのエルフの人?)


 レーナもその人物が誰か気づいた。


(すごいね、私達のいるところがわかるんだ)

(で、何で来たのかしら?)


 レーナと美鈴が首をかしげていると、リスベルが二人に話しかけた。


「精霊様。先ほどはお助けくださりありがとうございました」


(それはもういいんだけどね)


「このようなところでお休みにならずとも、どうか、私にあてられた部屋を、ベッドをお使いください」


(え? ベッド使っていいって。どうする美鈴さん)

(そう言われたって、この人はどうするの?)


「私は床でもどこでも構いません。何ならここでも。ですので、精霊様、どうか、私の部屋へと」


 二人の会話を聞けたのかどうかはわからないが、答えるかのように言葉を続けるリスベル。

 さらに、


「もし可能でしたら、どうか、その御尊顔を私めに」


 そう言うリスベルは跪いたまま身動きしない。


(どうする? 美鈴さん)

(この人、こっちが動かないと、このままよね。それもどうかと思うけど)

(しょうがないから姿を見せてみる?)

(そうね)


 二人は、その姿を現すことにする。

 金と銀のその光の姿を。

 どのみち、リスベルにはどこにいるのか、ばれるようだし。


 パァア!


 厩舎の中に光が広がった。


「精霊様!」


 その光に気づいたリスベルが顔を上げた。

 が、レーナと美鈴を見たリスベルのその顔が固まる。


「え? 低位、それとも中位の精霊様?」


(何かおかしかったかな)


 レーナが疑問に思う。


「野良の低位精霊、様?」


((野良……))


 レーナと美鈴は、野良と言われて少し落ち込み、姿を消す。

 厩舎が再び暗闇に戻った。


 まずいことを言ってしまった……。

 と、リスベルが慌てて言い訳をする。


「あ、申し訳ありません。えっと、あの、申し訳ありません。低位精霊様でしょうか、中位精霊様でしょうか。低位や中位の精霊様が高位の精霊様と一緒にいないというのが不思議に感じたものですから。逆を言うと、気配が大きく、しかもお姿も大きい、なによりあのような魔法を操り、私達を助け、街道を移動しているそんな精霊様は意思ある高位精霊様かと勘違いしました。あの、申し訳ありません。精霊様の階位のことをなにかと言うつもりはありません。私どもを助けてくださったことには変わりません。どうか、私と一緒に、私の部屋へお越しくださいませんか」


 リスベルは必死だ。

 何度も何度もレーナと美鈴に謝る。

 これまでの知識から、自分達を助けてくれた精霊は高位精霊だと疑っていなかった。


(しょうがない、行く?)


 レーナが美鈴に聞く。


(そうよね。私達が悪物みたいだし)


 二人は再び光の姿を現した。


「ありがとうございます、ありがとうございます。どうぞ、こちらへ」


 リスベルは歩き出した。


「あの、目立ちますので、光を消していただいて構いません。私は意識を集中すれば自然エネルギーを察知できますから、お二人が離れたらわかります」


 レーナと美鈴は再び姿を消した。





 リスベルは、歩いて通りを進み、村長の家へと入って行った。

 そして自分のあてがわれた部屋へと入る。


「精霊様方。もう大丈夫です」


 レーナと美鈴は光の姿を現す。


「それではどうぞ、そのベッドをお使いください。私は床で寝ますから」


(え、そう言うわけにはいかないよね)


 レーナが美鈴に問いかける。


(でも、それを伝えられないんだけど)


 二人はきょろきょろと見回し、デスクの上のペンとメモを見つけた。


 美鈴は風魔法でペンを浮かせ、メモに文字を書いていく。

 それを見て目を見開くリスベル。

 何と器用な魔法だ、と。


『ベッドにはあなたが寝なさい。私達はその横で構いません。むしろ、ベッドに寝かせてもらえるだけで感謝です』

「精霊様ー!」


 リスベルが床に土下座をする。


 ドン!


「リスベルうるさい!」


 突然リスベルの部屋のドアが開き、入ってきたのはアシュリー。

 だが、そのアシュリーも固まる。

 ベッドに上に二つの光。

 金と銀の光の玉が。


「り、リスベル、もしかして……」

「はい、馬車が動かなくなり、困っていた時に助けてくださった精霊様達です」

「は、初めて見た」


(美鈴、どうする? 消える?)

(もう遅いわよね)


「あの、精霊様。先ほどは助けていただいたにもかかわらず、名乗ることが出来ず申し訳ありませんでした。私は、イングラシア聖王国第一王女、アシュリー・イングラシアでございます。平和協定を結ぶため、グリュンデール王国王都を目指しているところでございます」


 アシュリーは、カーテシーをし、丁寧にあいさつをする。

 レーナと美鈴は縦に体を動かして、理解した意を示す。


「おおー、精霊様」


 リスベルが土下座したまま頭を下げ続ける。

 アシュリーは、一応、精霊には階位があることを知っている。

 なので、リスベルがここまで敬うということはと、あたりをつける。


「高位精霊様でしょうか」


 と。



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