小さな村で情報収集
二人は村に近づいて行く。
その村の周りには畑が広がっていた。
(さあ、村だよ。どこかいいところを見つけてそろそろ休みますか)
(そうよね、私達、疲れを知らないけれど休まないとね)
(疲れないと言っても寝不足は美容の敵だしー)
(そうそう、この私のシルバーボディ。光ってるだけでよくわからないけど。でも、レーナの金色も綺麗よね)
(ありがとー。でも、色の違いが何の違いなのか、よく分からないけどね)
ちなみに、姿は消えているので、お互いがお互いにしか見えていない。
色の違いについて言えば、ただ単にグレイスが見分けがつくようにだ。
よって、精霊の質としては何も変わらない。
二人は、村の門をくぐる。
丸太をくみ上げただけのみすぼらしい門だ。
しかも、門を守る兵士もいない。
襲ってくるものなどいないのであろう。
(なんていう村なのかな)
(そうよね、どこにも書いていないわ)
(どうしようか)
(とりあえず、寝られるところを探す?)
(それはそうと、何か情報とか得られるのかな?)
(エルフ情報とかかしら?)
(でも、こんな小さい村で冒険者ギルドなんてないよね。後は?)
(食堂とかで話を聞く?)
(文字通り聞くだけだけどね)
(なんだかゲームっぽいわよね)
二人は村の道に沿って、ぽよぽよ飛んでいく。
しばらく行くと、村の中心なのか、人が集まってにぎわっている店を見つけることができた。
時間はすでに夕方。
あたりは暗くなり始めている。
店の客は仕事が終わったところであろうか。
(あそこ、食堂かなあ)
(そうかしら、入ってみましょう)
二人は、食堂に入って聞き耳を立ててみる。
「おい、お前のところの畑、今年、何植えるんだ?」
「うちか? 聞いて驚け。去年、グリュンデールから黄色いスイカの種を入手したんだ。それを植えようと思ってる」
「ま、まじか。すごいな。それ、種が取れたら来年に向けて少しわけてくれよ」
「種が取れたらな。だから、うちの畑の近くに、赤いスイカを植えるのやめてくれよ?」
「えー、どうしようかなー」
「おいおい、勘弁してくれって」
「いや、そういうことなら、今年はスイカはやめよう。来年、種を分けてくれるって言う条件でな。どうだ、この村の特産にしちゃ」
「お、いいな。じゃあ、この村から赤いスイカはなくすか?」
主産業が農業なのだろうか、そんな話が聞こえてきた。
(平和だねー。畑の話だね)
(まあ、こんなところでエルフの話でもないわよね。精霊なんて見たこともないでしょうし)
(行こうか)
(そうね)
レーナと美鈴はエルフや精霊についての話が聞きたかった。
しかし、そんな話をする村人はそうそういない。
あきらめて食堂を後にしようとしたそんな時、別の話が聞こえてきた。
「そう言えば、さっきの村長の顔、笑ったな」
((ん?))
レーナと美鈴が足を止めた。
「ほんとな、イングラシア聖王国の王女様がこの村に泊まるんだろう? 伝令が来た時の村長の顔といったら」
「今頃、家の掃除だろうな」
「何で、ローゼンシュタインの領都で泊まらなかったんだろうな」
「急ぎなんじゃね? なるべく早く進みたいとか」
「そうなのかね、それでも、こんな村に泊まることもあるまいに」
「ほんとになー。村長のかみさん、どんな食事を作るんだろうな」
「王女様にか!? うーん。出前じゃね!?」
「それが一番安全かもな、いろんな意味で」
「「「あはははは」」」
(さっきの王女様がこの村の村長の家に泊まるんだねー)
(じゃあ、私達はやっぱり宿の方へ行ってみましょうか)
(そうね)
二人は食堂を出る。
そして、立ち止まる。
(あれ、ここじゃない? 宿)
レーナが振り返る。
(食堂と宿が一緒になってるのね)
(でも、どうする?)
(無断で部屋を借りるわけにはいかないわよね)
(……納屋?)
レーナの提案。
(厩舎? 厩舎ならわらとか敷いてあるかしら)
美鈴の代替案、というか、ほとんど状況は変わらない。
(……むなしい)
レーナががっくりする。
(誰か、リアルで一緒に旅をしてくれる人がいるといいんだけど。宿を借りたりとかできるでしょうし)
美鈴がもっともな意見を言う。
(でも、私達精霊じゃない)
(高位精霊なら実体をもてるから、宿を借りられるんじゃない?)
(高位精霊、お金持ってるかなー)
((……))
(やっぱり、無断でベッドを借りるの、抵抗があるわよね)
(うん。厩舎?)
(裏へ行ってみましょうか)
(そうね。雨風がしのげればいいわ)
レーナと美鈴は、宿の裏へと回る。
(あ、やっぱり、厩舎あったね。馬、つながってないけど)
(今日は、ここでゆっくりしましょうか)
(こんな日が続くのかー。嫌だなー)
(でもレーナ、考えてみてよ。森に入ったら、森の中で寝るのよ?)
(そっかー。そう考えたらずいぶんましよね)
(そう思うことにしましょう)
レーナと美鈴は、厩舎のわらの上に腰掛けた。
真夜中、誰かが厩舎に近づいてきた。
レーナも美鈴も探査魔法を習得済みだ。
(レーナ、誰か来る)
(ん? まだ暗いじゃない)
(でも、こんな何もないところに誰か来るってのがおかしいわ。馬もいないし)
(泥棒?)
(どうかしら)
(そうならどうするの?)
……




