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第一村人……王女

 ローゼンシュタインの領都を離れ、北へと向かうレーナと美鈴。


(森に向かえばいいのよね)


 レーナが美鈴に確認する。


(そうね。しらゆき達のお父さん、そう言っていたわ。しかも北の方にあるって)

(でも、やっぱりしらゆき達から離れたら、自然エネルギー、減って来たよね)

(うん。だけど、そう言う意味では、自然エネルギーが濃い方へ向かえば高位精霊がいるってことよね)

(美鈴さん、天才? そうだね、そうしよう!)

(レーナ、行き当たりばったりはちょっと)

(よーし、レッツゴー!)

(ふぅ。全くもう、レーナったら)


 二人は街道を進んでいく。

 ぽよぽよぽよぽよ……





(のどかね)

(文明が発展してないってことはこういうことなのね)

(うん。電柱の一本もない。道もアスファルトじゃないし)


 ぽよぽよぽよぽよ……



(見渡すーかぎりのー野原ーの中でー)

(ハイハイ!)

(私ー探すの、夢と希望ー)

(ハイハイ!)

(しろー、あかー、きいろー、あー、私、私、私ーの夢と希望はー緑色ーぉぉぉ)

((よつばーのクローォバァーーーーー))



 レーナと美鈴はぽよぽよと街道を漂うように進んでいく。

 森を探すのであれば、街道に沿う必要はないのだろうが、なんとなくである。





 すると、街道上に、馬車を見つけた。


(あ、あれ)

(ん?)

(第一村人発見!)

(村人じゃないわよ。馬車よ)

(道の真ん中で休憩かなあ)

(んー、にしても立派な馬車よね)





 二人は近づいて行く。

 というか、二人は街道沿いに進んでいるので、どうしても近づいてしまう。


 馬車に近づくと、四人の男が、左の車輪を見てなにかを話していた。

 見た感じ、執事とか騎士とかのように見える。

 ローゼンシュタインの騎士とは服装が違う。他の領の騎士だろうか。


 その後ろでドレスを着た少女が一人と、前世の黒いスーツのような服を着ている女性が一人。


(どうしたのかな?)


 二人は、姿を消したままさらに近づく。


(あら、車輪がはまってしまっているのね)


 そう、馬車は轍に車輪をはめてしまい、立往生をしていた。


(お馬さんも頑張ってるけど、抜けないんだね)

(立派な馬車だし、重たそうよね)

(みんなで押すみたいだけど……)





 騎士も執事も馬車の後ろに回り、皆で馬車を押す。


「せーの!」

「よいしょ!」


 馬車はまったく動く様子がない。


「どうする?」


 執事と騎士が相談を始める。

 しかし、方法など、一つしかない。


「やっぱり、荷物をすべて出すか?」

「それしかないのかもな」


 執事の男が作業を見ていた姫に問う。

 馬車を軽くしたいのだがと。


「姫様、荷物を外に出してもよろしいでしょうか」


 こんな野ざらしで、地面も土である、そんなところで姫の荷物を出したら、汚れることは必至。

 しかし、やむを得ない状況だ。


「はい、仕方ないかと思います。よろしくお願いします」


 姫は許可を出した。


「よーし、荷物を降ろすぞ」





(あれ、荷物を降ろすみたいね)

(どうする? 手伝う?)

(そうよね。大変そうだもの。風魔法でちょちょいよね)

(じゃあ、みんなが馬車に触らないうちに)

(せーの(突風))


 レーナと美鈴が風魔法を発動させる。

 ちょっと大きめに。


 すると、馬車の後ろから突風が吹いた。


「キャッ!」


 姫がスカートと髪を押さえて風に対して背を向ける。

 この突風は馬車に当たり、馬車はグワンと、前に押し出された。


「え?」


 姫と同じく風をこらえていた執事も騎士も目が点になる。

 それはそうだ。突然、突風が吹いて馬車を押したのだ。

 しかも、重い馬車を動かすような強い突風が。

 それも、人を避けるように。


「な、なぜこのタイミングで風が?」


 騎士が声を上げる。

 姫も何が起こったかわかっていない。

 轍から抜けた車輪を見つめる。

 ただ一人、スーツを着た女性の行動は違った。


(あ、やばっ)

(あのスーツの人、こっち見たわ)

(ばれた?)


 スーツの女性は、突然、膝をついた。

 そして、顔を下に向けたままレーナと美鈴に礼を伝える。


「精霊様、精霊様でしょうか。此度は、我々をお助けくださり、ありがとうございます」

「「「え?」」」


 突然、声を上げた女性に、姫も執事も騎士も驚きの声を上げる。

 だが、女性は気にしない。


「精霊様、このような下賤なものがご挨拶させていただく無礼を、どうかお許しください。私は、イングラシア聖王国にあるキザクラ商会イングラシア聖王国支店支店長、リスベルと申します。こちらにおわすお方は、イングラシア聖王国第一王女アシュリー殿下でございます。重ねてお礼申し上げます。此度は私どもをお助けくださり、ありがとうございました」


 リスベルと名乗った女性は、膝をつき、顔を下げ続ける。

 イングラシア聖王国第一王女と紹介されたアシュリーはおろおろするだけだ。

 自分も跪いた方がいいのか、いや、王女が簡単に跪いていいはずはない。

 それに、リスベルは助言をくれるわけでもないし、動かないし。


 レーナはリスベルを見ていて気付く。


(あ、あの人、耳)

(エルフ? もしかして、エルフだから精霊に敏感なの? ばれたのかしら?)

(どうする? 精霊に敏感なら、このまま立ち去っても、立ち去ったことわかるよね)

(そうね。そうしましょうか。私達、姿を現すわけにもいかないし、声も伝わらないし)


 レーナと美鈴は、足早にその場を立ち去った。

 足はないが、気分的にだ。

 それに足早といっても、精霊としてのスピードで……。

 ぽよぽよぽよぽよ……。


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