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出発~セリコのマートのチョコミント

 こうして、ついに春を迎えた。


 レーナと美鈴は、グレイスの部屋へ呼ばれた。

 なので、しらゆきとみゆきと一緒にグレイスの部屋へと行く。

 ただし、グレイスに対して言葉を発することができないので、会話はしらゆきとみゆきに任せる。


「お呼びでしょうか、お父さん」

「うん。春も訪れたし、そろそろ二人の旅が始まるかなって思って」

「はい。二人とも語学は完璧ですし、低位精霊なのに、自らの意思で魔法も撃てるようになりました」

「……低位精霊?」

「お父さん、何かおかしいです?」

「いや、僕には低位精霊と中位精霊の区別はつかないからわからないけど、しらゆきとみゆきが低位精霊って言うなら低位精霊なんだろうけど……」

((……))

「そんなに大きかった? 始め、野球のボールくらいだったよね? 今、バレーボールくらいあるけど」

「野球が何かわかりませんけど、確かに、ビーチバレーのボールくらいの大きさですね」


 しらゆきとみゆきがレーナと美鈴を見る。


((今、気づいたんかい))

「えっと、何か問題でも? お父さん」

「いや、何でもない」


 グレイスはレーナと美鈴に語りかける。


「それじゃ、二人は高位精霊になることを目指して旅に出る。僕は君達が目標を達成すると信じている。頑張って」

(あ、あの……)


 美鈴が声をかける。

 だが、グレイスには伝わらない。


「お父さん、美鈴が何か聞きたいことがありそう」

「何? 答えられることなら、旅に出る前に答えてあげよう」


 美鈴はしらゆきに通訳してもらう。


(あの、あの絵本、腹ペコ青虫とか知っている話が多かったこと、ロッテロッテの曲のメロディーに聞き覚えのあるものがあったこと、そして、しらゆきとみゆきのなじみのある名前……)

「そう。僕は君達がいた世界から転生してきた。いわば君達の先輩だ」

(そうなんですね。聞いたからどうということはないのですが、気になっていたので)

(他にもこの世界に転生してきた人がいるんですか?)


 レーナも尋ねる。


「いるよ。でも、美鈴が言ったように、だからどうするってこともないと思うから、聞いても仕方ないと思うよ。とりあえず、僕がそうだってことでいいかい?」

((はい!))

(それと)

「なんだい?」

(高位精霊ってどっちに行ったら会えそうですか?)

「そうだね、まず、エルフは精霊を崇めているから、エルフの里を探すのが一つ。エルフはたいてい森にいる。それから、炎系や雷系はあんまり見ないな。で、水系は水源の近く、風系は木と一緒にいることが多い。土系もやっぱり森の中かな。だから、森を探すのがいいんじゃないかな。森の中に湖もあるだろうし」

((わかりました))

「森は、このローゼンシュタインから北に行って、山脈の手前からずっと東に向かって広がっている。それから、山脈を越えると、山脈に囲まれた盆地に出るけど、そこには大きな湖と森がある。いろいろ行ってみたらいい」





 精霊は、服を着るわけでも食事をするわけでもないので、旅の準備が何一ついらない。よって、思い立ったが吉日とばかりに、いつでも出発できる。


(それじゃ、しらゆき、みゆき、私達、行くね)

「いい高位精霊に会えるといいね」

(ありがとうございます。レーナと一緒に頑張ってきます)

「うん。何かあったら私達を訪ねてくれればいいよ」

(ありがとう)

「あ、姿を消して行きなさいよ。人に見つかっちゃうから」

((はーい。行ってきまーす))


 二人は、グレイスの屋敷を後にした。





(ねえ、姿を消してだと、誰にも気づかれないよね)

(しかも、私達の声、誰にも届かないし)

(ある意味やりたい放題だよね)

(そうね。何ができるかわからないけど)

(……)


 レーナが考え込む。そして、歌いだす。


(せ、せ、セリコのチョコミントー)

(あ、それ!)

(せ、せ、セリコのチョコミントー)

(あ、よいしょ!)

(いくつーも食べたい、セリコーーーの(チョコミンーーートーーーー))


((あはははははは))


(レーナ、何で演歌なのさ)

(だってさ、アイドル曲って、演奏なしだと歌いづらくない? 基本速いし、ウォウウォウとかね)

(そうよね、演奏がないと出だしが難しかったりするわね。懐メロならアイドル曲もいけるんじゃない?)

(そうね。ちょっと考える。でも、向こうの曲をこっちの言葉に代えると、なかなか難しいのよね)

(わかるー。ロッテロッテの曲、よく直したと思うわ)

(きっと、しらゆき達のお父さん、アイドルオタよ)

(違いないわ。ペンライトまで作っていたし)

(でも、美鈴さん、ちゃんとはもってくれてうれしい)

(何年一緒にいると思ってるのよ。それに、一緒にアイドル目指すんだから、はもりは必須よ)

(そうね、ありがとう)

(でも、何でチョコミントなの?)

(だって、好きだし、生前最後に食べた食べ物だし)

(お腹壊したのに?)

(チョコミントアイスのせいじゃないわよ。体調が悪かっただけよ。それか、食い合わせね。あー、また食べたいわ。この世界にセリコのマート無いかしら)

(お金持ってないけどね)

(食べる口もないけどね)

((あはははは))


 二人は意気込む。


(絶対にあのステージに立つ!)

(おー!)





 二人は森に向かって街道をぽよぽよと漂っていく。


(せ、せ、セリコのチョコミントー)

(あ、それ!)




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