魔法
「さてと」
部屋に戻り、ソファに座ったしらゆきが話し始める。
「今日から春になるまで九か月くらいかしら、二人には勉強をしてもらうんだけど、その一つが言語習得。こっちの言葉を覚えてくれないと、大精霊になって実体を得ても会話が出来なくて、アイドルにもなれないわ」
((はーい))
「それとね」
みゆきが引き継ぐ。
「もう一つは、魔法」
((魔法?))
「そう、魔法。私達精霊は自然エネルギーでできているのと同時に、自然エネルギーを使って生きているの。わからないと思うけど」
((……))
うん。わからない。
「しかもその自然エネルギーは、なぜか大精霊や高位精霊の下に集まりやすい」
((……))
「だから、ここ、レイ母様達や私達がいるここは、二人にはわからないと思うけど、自然エネルギー密度が濃くなってるの」
((……))
「難しいよね。人間で言うところの空気みたいなものだと思って。ないと困るし、薄いとつらいって」
(それならなんとか)
レーナが納得する。
「だから、私達の近くは、貴方達低位精霊には居心地がいいと思う」
(居心地の悪いところにいたことがないのでわからないわ)
美鈴の率直な感想。
「春になって外に出ればわかるわよ」
(なんか旅に行きたくなくなってきた)
むむむ、と、レーナが悩む。
居心地の悪いところに行きたいとは思わない。
「そうね。精霊は、自然エネルギーがあれば生きていけるから、ここでずーっとぼーっとしてても、生きていけるわ。でも、きっと何も変わらないけど」
(高位精霊にはなれないってやつよね)
「そう」
(それは困る)
レーナはそれは理解している。
「だから、旅に出て、野良の高位精霊を見つけ、一緒に行動するのがいいと思う」
(野良って……)
(しらゆきとみゆきじゃだめなの?)
美鈴が聞く。
「私達、活動的とは言えないわよ」
「それに、昨日ダンスしてたレイ母様達は、たいてい足湯に使ってお酒を飲んでいるだけだわ」
「でも、この九か月は、私達について、魔法の練習してもらうからね」
(で、魔法の練習をしないといけないわけとは。興味あるから是非教わりたいけど)
レーナが身を乗り出す。
魔法なんて、ファンタジーのだいご味である。
「低位精霊、中位精霊は、高位精霊のイメージに従って魔法を使うことが多いからよ」
「しらゆき、見せた方が早くない?」
「そうね。訓練場へ行きましょうか」
四人は部屋を出て屋内訓練場へ行く。
「それじゃ、わかりやすくするために、みんなに出てきてもらうね」
「みんな、姿を見せて」
みゆきがそう声をかける。
((誰に言ってるの?))
という疑問をレーナと美鈴が抱いた瞬間、
ふわり、ふわり、ふわり……
と、しらゆきとみゆきの周りに光が舞い始める。
(あ、昨日の!)
(ステージの光の……)
「そうよ。あの光を生んでいたのは、この子達」
(この子?)
この『子』と、低位精霊の事をいうのか、と、レーナは思う。
子供ではないだろうにと。
「そう。低位精霊と中位精霊のみんなよ」
しらゆきがそう言うと、無数に生まれた光がしらゆきとみゆきの周りをつむじ風のように舞った。
「「……」」
しらゆきとみゆきが何かにきづいたようにレーナと美鈴を見る。
(……どうしたのですか)
その不思議そうな視線に気づいた美鈴が尋ねる。
「あなた達、低位精霊にしては大きいわね」
((……))
そう。
しらゆきとみゆきが呼んだ中位、低位の精霊の大きさが粒子や大きくてもピンポン玉くらいの大きさなのにも関わらず、レーナとミシェルは直径が十センチはありそうなのだ。
そう言われても……と、レーナも美鈴も思う。
好きでこのサイズになったわけではない。
なぜ? 疑問にも思わなかったけど、思わないとダメなのか?
「まあいいわ」
「それじゃ見てて」
しらゆきとみゆきはレーナと美鈴のサイズに関してはおいておいて、右手を前にかざす。
「ファイアランスをホールド!」
「アイスランスをホールド!」
すると、精霊たちがしらゆきとみゆきのうしろに平面状に展開、それぞれが魔法陣を形成し、ファイアランス、もしくはアイスランスを顕現させた。
「「てー!」」
ズドドドドドドドド…………
無数のファイアランスとアイスランスが砂山を吹き飛ばした。
(……)
(……すごっ!)
美鈴が固まり、レーナが驚愕する。
「今のはわかりやすく言葉を使って精霊たちにお願いしたけど、実際にはね」
しらゆきがしゃべっている間に精霊たちが魔法陣を形成し、ファイアランスを次々に撃って行く。
「魔法はイメージだから、言葉に出さなくても使えるわ」
((……))
見たことのない魔法に衝撃を受けるレーナと美鈴。
(あ、あの、魔法を使うために魔法の勉強をしないといけないってことです?)
「そうよ。精霊たちは、高位精霊から魔法を教わるの。というより、高位精霊と一緒にいることで使えるようになるの、っていうか、高位精霊のイメージをそのまま受け取って使うんだけどね」
(私達もしらゆきやみゆきのイメージを受け取って使うってこと? 自分では使えないの?)
「それがね、わからないの。レーナも美鈴も私達のイメージを受け取らなかったでしょ? それに、低位精霊も多分、自分達ででも使えるんだけど」
(というのは?)
「意思をもつ低位精霊って初めてだから」
((……))
「低位精霊も中位精霊も、ただ高位精霊の周りに集まっているだけ。それぞれの意思があるわけじゃないから、自分達で魔法を使うことはないわ」
(でも、私、使ってみたい。だって、魔法なんて見たこともなかったし、やってみたい)
(そうよね、私もちょっと使ってみたいかも)
だが、そこでレーナが気づく。
低位、中位精霊に魔法を撃たせる……。
じゃあ、大精霊は? と。
(あれ、しらゆきもみゆきも精霊たちに魔法を使わせてたよね。大精霊って自分では使わないの?)
しらゆきとみゆきが顔を見合わせる。
「「あははははは」」
「使えるわよ」
「見てて」
二人が砂山に向かって手を向けると、その手のひらから超巨大な魔法陣が浮かび上がった。
そして、超巨大なファイアランスとアイスランスが……
(ごめんなさい、ごめんなさい。私が悪かったです。大精霊が自分で魔法を使うと加減を知らないってこと、理解しました)
レーナが慌てて謝ると、しらゆきもみゆきも魔法を中断させる。
「失礼ね。小さい方を調節するのって、難しいのよ」
「そうよ。貴方達だって人間だったときに、アリと互角に戦うために力をセーブすることなんてできなかったでしょうに」
((……そうですね))
「まあいいわ。それじゃ、魔法の方は、私達と一緒に使って覚えてね」
((はい))




