目指す先は異文化(ダークなエルフ)
「すーちゃんは、旅を続ける。目的はレーナとミシェルの高位精霊への昇格。でも、どうしたらいいかわからない。どこへ行ったらいいかもわからない」
そういうこと? と、カタリナがすみれ姫に尋ね、すみれ姫が頷く。
「とにかく旅を続けると」
地理的な目的地があるわけではないが、と、リスベルがそれを確認をする。
そこで、アシュリーがカタリナに尋ねる。
「じゃあ、カタリナ、どこかいい観光スポットは?」
「え?」
カタリナがあっけにとられる。
アシュリーは何を言っているのだ、と。
「えっと、旅というより、旅行じゃない、それじゃ」
「うん。だって、どこへ行ったらいいかわからないなら、せっかくだから、きれいなところとか、おいしいものが食べられるとか、楽しそうなところに行きたいじゃない」
アシュリーのその意見を聞き、すみれ姫が口を開く。
「楽しい、好き、それでいい」
「じゃあ、決まりね」
リーダーであるすみれ姫が同意したと、アシュリーが喜ぶ。
「で、カタリナ。面白そうなところ、楽しそうなところ」
アシュリーは改めてカタリナに尋ねる。
「んー」
カタリナは悩む。
「まず、確認するけど。南から来たんでしょうから北へという選択肢かもしれないけどね、今はもう秋。これから北へ行くのはつらくない? かといって、南へ行くとグリュンデールとかローゼンシュタインへ戻ることになるわよ」
そこへシフォンとトルテが意見を出す。
「見たこともない、異文化を体験するのであれば、ダークエルフに会いに行くって言うのはどう?」
「ダークエルフは、ここから北東、カルバリー領の東の広大な森の中に住んでいるらしいです」
その意見にアシュリーが乗っかる。
珍しいもの好きだ。
「あ、それ! ダークエルフなんて、超レアじゃない?」
「いや、そうでもない。レアと言えばレアだけど、キザクラ商会にも勤めているから」
アシュリーの上げテンションに水を差すリスベル。
「だが、何が違うのかは気にならなくもないことはない」
「どっちなのよー」
リスベルの否定とも肯定とも取れる発言に、ぷくーとふくれるアシュリー。
「それに、森の中なら、ダークとはいえエルフが住んでいるのであれば、精霊様もいるかもしれないしね」
「なんだ。いいんじゃない」
アシュリーが、よしっ、と、こぶしを握る。
ダークエルフに会いに行く、と。
「ねえカタリナ、どうやって行くの?」
アシュリーはグリュンデールの地理に疎い。
イングラシア聖王国の王女なのだ。
「ルートとしては二つ。シューンシュタットに戻って北上してカルバリー領か、ここから北上してラインハルト領から東のカルバリー領へ行くかのどちらかね」
「じゃあ、戻らないことを基本に、ラインハルト領でいいんじゃない?」
アシュリーが皆の顔を見回す。
皆は頷き返す。
「まあ、シューンシュタットに戻ってカタリナが捕獲されそうになってもめんどくさいし、それに、ラインハルト領にはおいしいお酒があるって言うし」
と、よだれを拭く真似をするシフォン。
「そうです。一冒険者になって、上司に気を使う必要がなくなったんです。酒は百薬の長ともいうし」
トルテもよだれを拭く真似をする。
「そう言うことなら仕方ないよね。まずはラインハルト領を目指そうか」
と、リスベルもシフォンとトルテに同意した。
翌日、出発前にキザクラ商会へ行く。
「いらっしゃいませ。精霊様とお姫様の皆さま。制服も団服もできあがっております」
そう言われ、皆で更衣室に行く。
皆で作った制服に着替えるためだ。
すみれ姫とレーナとミシェルは置いていかれる。
更衣室から上機嫌で出てくるアシュリー。
「すーちゃん、見て見て」
と、くるっと回る。
アシュリーが着ているのはブラウンの制服風フリフリクラシックロリータ。
くるっと回ったことで、スカートの裾が広がる。
スカートの裾は黒いフリフリがついている。
腰には茶色のベルト。
首元には大きなフリフリの白い襟。
そしてオレンジのストライプのネクタイ。
袖は肩から手首に向かって膨らんでおり、手首ではきゅっとしまってボタンで止められるようになっている。
そして、胸には薔薇の紋章。
「秋っぽくてかわいいー」
アシュリーは手を広げてくるくる回っている。
そこへカタリナをはじめ皆も制服を着て出てきた。
カタリナは至極満足そう。
リスベルとシフォンとトルテのエルフ組は、まあ、こんなものか、という感じ。
でも、皆でそろえられたことに嬉しそうではある。
「すーちゃん、見て見て、みんなでおそろい。かわいいでしょう」
すみれ姫は口をとがらして言う。
「アシュリー、嬉しそうだな」
「うん。嬉しい。みんなで同じ格好ができて嬉しい」
「楽しい?」
すみれ姫が尋ねる。
「うん。楽しい。みんなで冒険者ができて、同じパーティが組めて楽しい」
まだまだ一番弱っちいけど、というつぶやきは無視して。
すみれ姫は店員にジト目を送る。
ちょっとうらやましくなったらしい。
「はい。すみれ姫様の分も用意してございますよ」
と、少女用の同じ制服を見せてくる。
すみれ姫は、それを受け取ると、更衣室に入って行った。
「すーちゃんも着たかったんじゃん」
と、アシュリーが笑う。
するとどこからか風が舞い、アシュリーのスカートを巻き上げた。
「いやん、すーちゃん!」
すみれ姫が制服を着て更衣室から出てきた。
「いやん、かわいいー」
アシュリーがすみれ姫に抱きつく。
少女が同じ服を着ている。
かわいくないわけがない。
リスベル以下カタリナ達もすみれ姫のかわいらしさにほほを染める。
「どうだ、似合っているか」
すみれ姫が渋い顔をして皆に尋ねる。
「うん。似合ってる。すごくかわいい」
アシュリーが改めてそう答えると、すみれ姫が赤らめたほほを少し上げる。
キランキラン。
レーナとミシェルが誰にも気づかれずに輝く。
「アシュリー、嬉しいか?」
「うん。すーちゃんも一緒の服を着てくれて嬉しい」
すみれ姫のほほがさらに染まる。
キランキラン
「嬉しい? 楽しい?」
「うん。嬉しいし楽しい。みんなで一緒のことができて、すごくすごく嬉しいし楽しい」
すみれ姫の目元も緩む。
キランキラン
「そうか。じゃあ、私もこれを着る」
すみれ姫も着物をやめて皆と同じ制服を着ると、宣言した。
「うん!」
アシュリーの喜びの返事。
キランキラン
そんな嬉しそうなすみれ姫にカタリナが水を差す。
「それを着るならペチパンツも履いてね」
「……」
あははははは。
あははははははは。
キラキラキラン
(すーちゃん笑ったね)
(ほんとよね。嬉しいわ)
(うん、私も嬉しい)
(これからも、いっぱい笑えるといいわね)
(うん。みんなでね)
六人プラス二精霊の冒険者パーティとなった精霊様とお姫様は、馬車に乗ってカッツェリア領を後にした。




