会食
カッツェリア男爵領主バサラの屋敷で食事をごちそうになる精霊様とお姫様。
同席しているのはバサラの妻、そして息子らしき男性。
「今朝はこれまでにない、大変なことがありましたな。あの、人を襲うバッタがそのまま東に大量に流れたと考えると、人も猫も大きな被害が出たかと思います。皆さんがあのように対処してくださったおかげで、被害は抑えられたと考えます。感謝します」
ちなみに、バサラたちは悪魔ベルドとすみれ姫達が戦ったことは知らない。
「あの、人にも、猫にも被害が出たのですか?」
リスベルが聞く。
「え、ええ。皆さんが対処してくれる前に少しだけです。朝一番の事でしたので、外にいる者も少なく、また、怪我をしたものは教会で手当てをさせましたので、特に問題にはなっておりません」
「それはよかったです」
「それより、カタリナ様の魔力欠乏症の方はもうよろしいのですか?」
魔力欠乏症ではなく、腹を刺されて気を失っていたのだが、説明がめんどくさい。
「ええ、こちらで休ませていただいたおかげで、少し寝ただけで起き上がることができるようになりました。感謝申し上げます」
にっこりと微笑むカタリナ。
元々リコラシュタイン家は美人の家系ではある。
それを見ていたバサラの息子が顔を赤くしてうつむく。
しかしながら、男爵家とリコラシュタイン家では同じ貴族であっても身分が違う。
シュタインのつく家系は王族扱いだ。
「それで、皆様の今後の予定ですが、どのように?」
バサラがカタリナ達の予定を尋ねる。
皆、シューンシュタットに帰るのだろうかと。
この問いにリスベルが代表して答える。
「本日、キザクラ商会に我々の制服ともいうべき戦闘服を注文いたしました。それとカタリナとすみれ姫の団服の修繕に三日かかります。ですので、明日、明後日はバッタ討伐に参加したのち、明々後日には、この街を出て旅を再開しようと考えています」
リスベルがカタリナを呼び捨てにしたことに少し驚くバサラ達。
「リスベルさん達は精霊様とお姫様という冒険者パーティでしたな。今回のバッタ討伐の貢献は非常に大きかったと実感しておりますので、褒章も多く出してもらえるよう、報告を上げておきます」
「それはありがたいです」
バサラは精霊とお姫様の今後の行動を理解する。
「カタリナ様はいかがされるのですか?」
バサラが聞くより早く、どうしても気になるバサラの息子がカタリナに尋ねてしまう。
悪いことではないが。
「私達は、一冒険者となり、すーちゃん達の精霊様とお姫様に入れていただきましたの。ですので、これからは冒険者として、精霊とお姫様の一員として旅をいたしますわ」
この一言にバサラがまた目を丸くする。
黒薔薇騎士団は……と。
それに気づいたカタリナは一応のフォローを入れておく。
「私は黒薔薇騎士団の中でも、どこの部隊にも所属しておりませんの。自由に諜報などを行っておりますので、冒険者として旅をするというのは、ある意味都合がよろしいのです」
シフォンとトルテがジト目をカタリナに送る。
まだ許可を取ってないでしょうに、と。
「そ、そうでしたか。そうしましたら、カタリナ様の分まで合わせて、冒険者としての褒章を考えないといけませんね。カタリナ様は多分に大きな貢献をなされていますから」
バサラの言葉として、褒章を多くしてくれるのは嬉しいが、余計なことは言わないで欲しい。
そう思うカタリナ。
女神とか、女神とか、女神とか……。
よって、カタリナは、あはははは、と、苦い笑いを浮かべるにとどめる。
「そうしましたら、明々後日の皆様の旅立ちまで、この屋敷に滞在していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか」
というバサラの提案に対し、丁寧にお断りを入れるリスベル。
「男爵様のお心遣い、大変感謝申し上げます。しかしながら、私どもは一冒険者パーティにすぎません。他の冒険者同様に、宿に滞在したいと存じます。どうか、ご容赦を」
と、リスベルは頭を下げた。
バサラはカタリナに視線を送るが、カタリナもリスベルに同調するように頭を下げた。
「しょ、承知いたしました。それでは、何かあったらいつでもいらしてください」
「それでは、大変おいしいお食事をいただき、ありがとうございました。私どもも、明日の準備などありますので、これで失礼いたします」
と、リスベルが立ち上がり、お礼と別れの挨拶を告げた。
その後の二日間は、これまで通り、すみれ姫が風の刃の竜巻を、リスベルとアシュリーペアと、シフォンとトルテペアが比較的小さなファイアトルネードを、カタリナがレーナとミシェルを連れて巨大なファイアトルネードを従えて、バッタの殲滅を行った。
これで、このカッツェリアにも、東の各領にも大きな被害は出ないであろう。
時々やってくるバサラにもそう言われた。
その日の晩、部屋に集まった精霊様とお姫様のメンバー。
「どっちに行く?」
カタリナがそう尋ねてメンバーの顔を見回す。
明日からの旅の予定の相談をしているのだ。
「私とアシュリーは、すーちゃんの行きたいところへ行くだけだから」
と、早々にリスベルが人任せにする。
「それを言ったら、私達もそうよ」
カタリナが追従する。
それを聞いたすみれ姫は首をかしげるだけだ。
すみれ姫には特にアイデアがあるわけでもない。
どこへ向かったらレーナとミシェルがより早く高位精霊になれるかなんて、わからないのだ。
もう一人高位精霊を拾う……それもどこへ行ったらいいか。




