精霊よ、人族をなめんな! フリフリ好きだぞ!
『すーちゃんは、私達が出会った時は、全然世間知らずで、言葉もたどたどしくて、空気も読めなくて、会話もうまくできなくて。人を気遣うこともできなくって。でも、ラテに会って、ラテと一緒にちょっとだけど旅をして、そして、リスベルとアシュリーが一緒に来てくれて。すーちゃん。すごく人っぽくなった。人のことを好きになれるすーちゃんに、みんなのことを好きなすーちゃんに変わった。リスベルとアシュリーのおかげだよ。私達も嬉しい』
レーナはゆっくりとペンを走らせる。
『だから、リスベルとアシュリーが傷つく可能性は、なるべく避けたいんだ』
レーナが、そう力強く書いた。
「「「「……」」」」
だが、その紙を取り上げた人物が。
カタリナだ。
カタリナは目を覚まし、話を聞きながらレーナ達にに歩み寄ってきていた。
ただし、レーナの意見は耳に入っていない。
「なになに?」
カタリナは、レーナの文字に視線を走らせる。
「ふんふん」
そして、最後まで読み切ったカタリナが言う。
「精霊様。人族をなめんな」
((……))
カタリナの口調が力強い騎士団長口調に戻った。
「今日は確かにすみれ姫様の壁になることしかできなかった。それは認める。だが、悪魔はしばらく来ないのだろう? なら、私は強くなってやる。今度は、悪魔の剣をはじけるようにな」
レーナは、別の紙にまた書き出す。
『リスベルとアシュリーの話をしているのだけど』
「私達もついて行くぞ」
((……))
シフォンとトルテが頷く。
「それにな。今日、悪魔と対峙した時、すみれ姫様は何を着ていた?」
((……))
「それな、黒薔薇騎士団の団服だぞ。だから、悪魔は黒薔薇騎士団を探すんじゃないのか? 探すのならだが」
シフォンとトルテは冷や汗をかく。まさか自分達も標的かと。
「黒薔薇騎士団に悪魔を押し付ける事が出来るかもしれないだろう」
やっぱりか。
そっちか。
と、がっくりするシフォンとトルテ。
もちろん、自分達が狙われる可能性だって高いはず。
レーナとミシェルは無い視線を合わせる。
たしかキリエが嫁に行ったところ。
かいせいは黒薔薇騎士団の教官をしていなかっただろうか。
そこをおとりにすることはできるか?
あの街にはリノもいる。
『じゃあ、その黒薔薇の団服を脱ぐの?』
「私は私なりにこの団服に誇りを持っているから脱がない」
『じゃあ、狙われるじゃない』
「お前達は、自分の手で、そのラテ、という人物の、仇を討ちたい、と思っていないのか?」
カタリナの、言葉を区切ったはっきりとした口調に、はっとするレーナとミシェル。
そこへ口を挟むのは、起きてきたすみれ姫。
「そうだ。私のこの手で悪魔を討つ。だから、狙ってくれるのであれば、この服は脱がない」
あ、黒薔薇入りしたよ。
というシフォンとトルテのつぶやき。
『でも、でも……』
「リスベルとアシュリーを守るという話か?」
『危ないという話』
これに、リスベルとアシュリーが答える。
「カタリナが言っていただろう。まだ時間があると。なら、カタリナに鍛えてもらえばいい」
「はい、頑張ります。私も強くなります」
『でも……』
「私達では頼りないか?」
カタリナが聞く。
『私とミシェルは、連続で魔法を撃てるとは言え、しょせん単発なの。すーちゃんみたいに同時に連射できないの。あの場に少なくとも悪魔は二人いた。湖の時は、二人で一人の悪魔を逃がしたの』
「あの時は、私がふがいなかったせい。それに、心配なら、もう一人高位精霊を拾うか?」
(……ぷっ。猫じゃないんだから)
すみれ姫の言いようにレーナがつい笑ってしまう。
もちろん、紙に書いたりしない。
今度はミシェルが冷静にペンをふるう。
『だとして、どこで拾うの?』
「私達は旅をしている。何が起こるかわからない。なら、どこで拾えるかもわからない。それが楽しいんじゃないのか? それも好きになるんじゃないのか?」
((すーちゃん……))
レーナとミシェルは、すーちゃんが言うようになった、と、感心する。
「えっと、話をまとめていいか?」
カタリナが提案する。
皆が頷く。
「まず、すみれ姫様とレーナ様、ミシェル様のお三方は精霊様。それと、リスベルとアシュリーが加わって、冒険者パーティ精霊様とお姫様だ」
リスベルとアシュリーが頷く。
「今日の午後、私達三人は冒険者登録をしてくる。そして、そのパーティに入る」
シフォンとトルテが頷く。
「このパーティが旅をする目的は、レーナ様とミシェル様の体を得ること。つまり、お二方が高位精霊になること」
すみれ姫が頷く。
「そして、すみれ姫様達は、ラテという冒険者の仇を討つ」
すみれ姫が頷く。
「バッタの発生は明後日くらいまで乗り切れば、後は大丈夫だろう。だから、明々後日に旅に出る。でいいか?」
すみれ姫が頷く。
「よし、そうと決まれば、冒険者ギルドへ行こう。そして、その後はキザクラ商会だ」
「「え?」」
シフォンとトルテが首をかしげる。
「このパーティの名前何だったかしら?」
カタリナが姫様口調に戻してシフォンとトルテに尋ねる。
「「精霊様とお姫様です」」
「そうよね。なら、私達は、アシュリーのように姫様っぽい恰好をしなければいけないでしょうに」
「「え?」」
シフォンとトルテが視線を合わせる。
そして、シフォンが言う。
「カタリナ様、カタリナ様が姫様の恰好をするんですか?」
「もともと姫だし、これからは一冒険者だし。姫の恰好をしても何もおかしくないでしょう?」
「あの、いろいろ言いたいことが。まず、姫の恰好で冒険者が出来るのですか?」
「黒薔薇はメイド服を制服として着ていることもあるじゃない。メイド服と姫様服なんて、紙一重でしょう?」
「た、たしかにそうですが……」
「シフォン、あきらめろ。姫様はこう見えて昔からフリフリが好きなんだ。外も中もな。今も中はきっとフリフリだ」
「な!」
トルテの暴露にカタリナが顔を真っ赤に染める。




