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ステージの設営見学

「どうする? 設営から見に行く?」


 しらゆきが提案してくる。


「見れるの?」


 レーナがしらゆきの発言に食いつく。

 見れるものなら見てみたい。

 この世界のアイドルのステージだ。

 楽しみで仕方ない。


「うん。多分だけど。ロッテロッテのミサは屋外だし、私達はスタッフ席だしね。設営や運営の邪魔にはならないんじゃないかしら」

「見たい! こっちのコンサートがどんな感じか知りたい!」


 レーナが浮足立つ。


「それじゃ、行こうか」

「はい!」





 しらゆきとみゆきは、レーナと美鈴を屋敷から連れ出す。

 ちなみに、相変わらずレーナと美鈴の二人は光の玉状態だが、一般の人からは見えてはいない。

 グレイスやその家族、周りの人たちだけが見えるらしい。

 その理由は、グレイスの周りが全員天使だからである。


「うわー、きれい」


 グレイスの屋敷の玄関を出たところで、レーナが声を上げる。

 広い庭。

 それが花壇で埋め尽くされている。

 花が咲き乱れているが、多くは薔薇だ。


「すごいすごい、薔薇だよ、美鈴さん」

「ほんとね。広くてきれい」


 美鈴は後ろを振り向く。


「よくよく見ると、この建物もすごいわ。中世風でものすごく風情があってかっこいい。まるでヨーロッパに旅行に来たみたい」

「ほんとだ。緊張しててわからなかったー」

「ほら、行きますよ」


 屋敷や庭をみて興奮し、移動を止めてしまったレーナと美鈴をしらゆきが誘う。


「「はーい」」


 しらゆきとみゆきは、広い庭を歩いて門へと向かい、レーナと美鈴はぽよぽよとついて行く。


 門を出ると、そこは、大きな通り。


「すごい、街だ」

「確かに、現代っぽさはないわね」


 そう言って、魂の二人がきょろきょろと見回す。

 街の建物は二階建て、三階建てとそれなりに高層だが、どれも石や木材で作られており、レーナ達が生きた地球のそれとは大きく異なる。

 しかも、自動車なんて走ってはいない。


「馬車が走ってるー」

「車はないのね」


 など、見回しながら移動していると、しらゆきとみゆきが説明してくれる。


「この街はローゼンシュタイン。お父さんの実家が治めている街なの。お父さんは以前、グリュンデールって街に住んでいたんだけど、今はお勤めを引退されて、この地に戻ってきているの」

「この街は、魔道具の街でもあるのよ。ローゼンシュタインは、魔道具を作って栄えたの」

「へー。魔道具って?」

「魔法を利用した道具。とおいとおい初代様は水洗トイレと浄化システムを作ってこの土地をいただいたそうよ」

「その後、お父さんがいろいろと開発したの」

「今は、ローゼンシュタインとグリュンデールが技術開発の中心なのよ」

「「へーへーへー」」


 二人とも、しらゆきとみゆきの説明に感心しきりだ。

 特に魔法の話はファンタジーすぎて実感がわかない。

 その分、興味深くもある。

 ただし、実際には、その技術開発自体がグレイスや妻達の趣味になりつつあり、最近ではあまり街中に広がってもいない。





 屋敷からずっとまっすぐに歩いて行くと、広い公園が見えてきた。


「今日はここの野外ステージを使うのよ」

「すごいオープン。これ、お金を取るのよね?」


 奥にステージがあって、その前にはとにかく広い広場。

 柵も壁もなく、どこからでもステージを見られそう。


「もちろん。でも、いい席だけね。その周りは、自由席になっているわ」

「え? お金払わなくても見れるの?」

「まあ、お金を払って席を予約すれば、ちょっとしたグッズをもらえたりするけどね」

「だから、貴族を中心にお金を持ってる人たちはチケットを買い求めるわ」

「どのくらい入るの?」

「今日は、有料席が千だったかな」

「千?」


 レーナが疑問に思う。

 意外に少ない。

 レーナは多い時には一万前後は各ステージで集めていた。


「少ないと思った?」

「え? あ、あの、えっと」


 レーナが言いよどむ。


「ふふふ、見ていたらいいわ」





 広場の奥にある野外ステージへと歩いて行く。


「本当に野外ステージ……」


 これまでレーナがコンサートを行ってきたステージとは全く違う。

 それに比べればこのステージは確かに原始的だ。

 ステージ上には電気の『で』の字もない。

 ただ、一段高くなった舞台と背面に壁があるだけだ。

 しかし、観客席の側を見回すと、周りにはやぐらが組まれており、どうやら、そこには照明が設置されていくようだった。


「こんにちはー」


 しらゆきがスタッフに声をかける。


「あ、しらゆき様、みゆき様、お早いですね」

「ええ、ちょっと設営から見たいなって」

「そうですか」

「スタッフ席はどこです?」

「その席が並んでいるところの、一番後ろになります。遠い席で申し訳ないです」

「いいのです。来てくださった方に、近くで見ていただきたいですから」


 そう言って、しらゆきとみゆきは並んでいるベンチ、その一番後ろの席に座る。

 しらゆきとみゆきが少し離れて座ったのは、その間にレーナと美鈴の魂が座るためだ。


「レーナちゃん、美鈴ちゃん、ほら、楽器が搬入されてきたわ」


 レーナと美鈴がステージに注目する。


「ドラム、ピアノ、後は、えっと、木琴?」

「マリンバね」


 美鈴がレーナの疑問に答える。


「ほんとに電子楽器がない」


 二人は、しらゆきとみゆきと一緒に、ステージの設営を見続けた。





 夕方になると、開場されたためか、客が入り始める。

 高そうな服、手首にはゴムバンド。そして、マフラータオルにペンライト。


「ペンライト?」


 レーナが疑問の声を上げる。


「知ってるの? あれもお父さんの発明の一つ。魔道具よ。ミサに来てくれた人に貸して、帰りに返してもらっているわ」

「へー」




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