悪魔の祝福
そのカタリナによる新しい冒険者パーティ名の提案に、
「ぶふー!」
と、吹き出してしまうリスベル。
引率? 引率とは? 私のこと?
「えっと、えっと」
リスベルが焦る。
「だって、リスベルって、ちっちゃなすーちゃんとまだ未成年に見えるアシュリーを連れた先生みたいなんですもの」
リスベルはキザクラ商会衣装。
つまり、ある意味仕事着。
学園の教師に見えないこともない。
それに、アシュリーはまだ十五歳。
実際にはぎり成人だ。
「そ、それは、歳のせい? それとも、このキザクラ衣装のせい?」
「衣装言うな」
動揺するリスベル。
いつもなら冷静なリスベルが担当する突っ込みをアシュリーが言う。
「あははははは」
「「「あははははは」」」
笑いが起こった。
カタリナが提案する。
「リスベルもかわいらしい恰好をしたらいいんじゃないかしら。エルフって、その姿からもうしばらくは年を取らないんでしょ。うらやましいわー」
リスベルは、視線を逸らすシフォンとトルテに言う。
「シフォンとトルテだってエルフです。そうしたら、お二人もかわいい恰好をしたらいいじゃないですかー」
「「ブフーッ!」」
シフォンもトルテも果実酒を吹き出してしまう。
「お、落ち着きましょう」
この不毛な押し付け合いに、アシュリーがなだめる。
だが、誰も聞いていないところで、笑ってしまう者も。
(あはははは。いいねー、みんなでかわいい恰好したらアイドルみたいじゃん)
(そうねー。みんなでアイドルかー。容姿もいいし、運動神経もよさそう。売れるかしら? 後は歌ね)
ミシェルにいたってはアイドルの販売戦略まで考えていく。
「みんなでアイドルになろう」
突然、すみれ姫が提案してしまった。
「「「「「アイドル?」」」」」
すみれ姫が暴露をしてしまう。
「レーナとミシェルは歌が好き、踊るのが好き。だからアイドルになりたいって言ってる。そのためには体が必要。私は、二人に歌の楽しさを教えてもらった。歌が好き。だから、二人の体を得るために一緒に旅をしている」
「アイドルって、あのキザクラ商会の?」
「???」
カタリナの疑問に、アイドルを見たことのないすみれ姫が首をかしげる。
(うん。そうだよ)
(すごかったわよね、ロッテロッテ。ああなれるかしら)
「ロッテロッテみたいになる」
レーナとミシェルの会話を聞いて、すみれ姫が宣言する。
「ロッテロッテって、女神だと言われている人たちよ?」
「大丈夫、うちにも女神様がいるから」
カタリナの疑問にアシュリーが突っ込む。
すっかり突っ込み役のアシュリー。
「ちょっとまって、私達もそれに加わるの?」
焦るカタリナ。
『女神』と言われたことより、かわいらしいアイドルに?
私が?
「カタリナ様、カタリナ様はリコラシュタイン家の令嬢としての役割が……」
「そうです。黒薔薇第四騎士団、どうするんですか」
と、現実を突きつけるシフォンとトルテ。
「そ、そうよね」
カタリナが答える。
シフォンとトルテによる引き留めに、アシュリーが対抗して提案する。
「一緒に旅をしようよ。そうしたら、私達もずっと訓練をつけてもらえるし」
「「「……」」」
「私とリスベルはすーちゃんとレーナとミシェルについて行くって決めた。ってことは、二人の体を得るために私達も頑張る」
「そうだね。歌もダンスもわからないけど、私もお三方について行く」
アシュリーとリスベルが決意を述べる。
「それに……」
と、アシュリーが続ける。
「カタリナが来ないと、レーナもミシェルも周りを気にせずに魔法をぶっ放せないじゃない。ね、女神様」
「……私は、私はレーナとミシェルの魔法発動装置じゃないわ!」
カタリナは顔を赤らめる。
「だけど、楽しそうではあるわね」
「「ひ、め、さ、まー」」
乗り気になりかけるカタリナをシフォンとトルテが再びたしなめる。
「ま、まだ時間はある。好きにしたらいい」
すみれ姫が締めた。
「そうね。明日がバッタのピーク。今日はゆっくり休んで、明日も頑張らないとね」
カタリナがそう言い、ほぼ女子会と化した打ち合わせは終了した。
カタリナとシフォンとトルテの部屋。
「シフォン、トルテ……」
カタリナが二人に呼びかける。
シフォンもトルテもカタリナとは長い付き合いだ。
カタリナの言わんとすることを察して、二人は答えた。
「いいと思いますよ、旅も面白そうですし」
「そうですよ。私達は姫様と一緒に行きますよ。パーティ名も精霊様とお姫様だし」
「それに第四騎士団はヴンダーシューンのお飾り兼影です。そうそう出番なんてありませんて」
「二人とも……」
カタリナは二人に提案する。
「じゃあ、明日の朝、冒険者登録をしましょう。じゃないと報酬もらえないから」
「「はーい」」
すみれ姫とリスベルとアシュリーの部屋。
「くかー」
「くー」
「すーすー」
すみれ姫は即落ち。
リスベルとアシュリーもほぼほぼ魔力を使い果たしたため、同じく即落ちした。
(すごいね、すーちゃん。人を引き付ける魅力があるのかな)
(センスなのかもしれないわね。レーナ、ライバルよ?)
(うん。でも、私達のために一緒に旅をしてくれるって、やっぱり嬉しいよ)
(そうね。感謝しているわ)
ぽよぽよ……
二人は、部屋の窓際に移動する。
(ところで)
(この違和感は何かしら)
カッツェリア西の森の中。
地中から続々とバッタが出て来て羽を伸ばして乾かしていく。
今はまだ夜。
活動を開始するのは日が登り始めてから。
そんな中、おとなしくしている無数のバッタに、地面を木の幹を枝を覆いつくすようなバッタの群れに、話しかける悪魔、ベルド。
「さあ、バッタの諸君、誕生おめでとう。君達は明日の朝、その立派な羽を使って旅に出るよ。東へ東へ。麦が待っているかな? 野菜が待っているかな? そういえば君達は草食なのかい? たまには肉も食べてみたらいいんじゃない? 世界が変わるかもしれないよ」




