↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/123

女神様、ドンマイ!

 何時間かたったころ。

 リスベルとアシュリー、そしてシフォンとトルテも残り魔力量が少なくなり、すでに魔法をあきらめて剣やナイフを持ってバッタに向かっていた。


 叩き落して踏む、ということもしたが、手返しが悪いし、せっかくなので剣やナイフの訓練をと、それらを握る。

 一撃でバッタを両断するのは集中力を要するのだが、これも訓練。


 カタリナは変わらず走り回る。

 すみれ姫は歩き回る。

 カタリナは思う。

 精霊に魔力切れはないのかと。

 答えは、ない。

 精霊が使うのは魔力ではなく、自然エネルギー。

 すみれ姫は近くに森があることから自然エネルギーを吸収し続けているし、レーナとミシェルも同様、かつ、すみれ姫からも供給される。


 あるところで、すみれ姫がカタリナに声をかけて呼んだ。


「おーいカタリナ」


 実のところ、すみれ姫が用事があるのはカタリナではない。

 レーナとミシェルだ。

 だが、二人の名を声を出して呼ぶわけにもいかず、カタリナを呼んだわけだ。

 それを聞きつけたカタリナがすみれ姫に近づいた。


「どうした?」

「あれを!」

 カタリナがすみれ姫が指さす方に顔を向けた。

 すると、聞いたことはあったのだが、見たのは初めての光景が。

 城門近くで、何匹もの猫がバッタを退治していたのだ。


「猫?」

「うむ。猫だ」

「昔からなぜか十五年バッタが現れた時には猫が集まり、退治に手を貸してくれるという噂があったが、本当に猫がバッタを退治するのだな」

「うむ。まあ、問題はそこではない」

「……なんだ?」

「猫は小さい」

「そうだが?」

「あれを見ろ。怪我をして倒れている猫がいる。猫は人と違って治療をしてもらえない」

「……本当だ」


 カタリナとすみれ姫が猫達の集団に近づいて行く。

 遠目から見ると、風の竜巻とファイアサイクロンが並んで城に向かって行くように見える。





 バサラはその光景を遠くから目にした。

 竜巻もファイアサイクロンも空高くまで舞い上がっているのだ。

 遠くからもよく目立つ。

 しかも、それが並んで街へと向かって走って行く。


「何があった!」


 バサラは馬を走らせた。





 猫達は、カタリナとすみれ姫が近づいても、それをまるで気にしないかのようにバッタを追いかけては退治していく。

 その体の小ささから、時にはバッタによって怪我も負うのだろう。

 傷ついてなお戦っている猫もいる。


 一方で遠くから見えたように倒れている猫がいる。

 傷をなめて座り込んでいる猫もいる。


 カタリナは、倒れている猫をそっと抱き上げた。

 純白の団服が汚れるのを気にすることもなく。


「お前達も街を守ってくれているのだな」


 カタリナがぽつりとつぶやいた、その瞬間。


 シュン!


 ファイアサイクロンが消えた。

 そして、


 ぱぁぁ!


 カタリナの抱いていた猫が緑色の光に包まれ、猫自身も発光した。


「「な!?」」


 その現象を見てあがった驚きの声は二つ。

 しかし、お互いがそれを気にすることはできなかった。

 なぜなら、怪我をしていたり倒れていた猫が次々に緑色に発光し、それが収まったと同時にまた走り出したのだ。

 猫達は再びバッタに向かって走り出した。


 カタリナがその光景に目を奪われていた。

 抱いていた猫が光ったと思ったら怪我が完治し、その猫は再び元気に走り出した。


 何が起こった。

 いや、わかっている。

 猫たちに治癒魔法がかけられたのあだ。


 言葉を失っているカタリナに対し。


「カタリナ様! カタリナ様は治癒魔導士でもあられたのか。しかも猫まで治癒されてしまうとは! さらには、遠隔ですか? 遠くの猫まで! エリアヒールですか? 伝説の広範囲治癒魔法エリアヒールですかな!?」


 バサラは軌跡を目にして大興奮だ。


「黒薔薇騎士団は、皆このような魔法を使えるのですか?」


 バサラは黒薔薇騎士団の団服を羽織っているすみれ姫に視線を送る。

 だが、すみれ姫は端的に答える。


「いや、使えんぞ」


 バサラはさらにシフォンやトルテ、リスベルにアシュリーを視線を送る。

 そして、再びカタリナに視線を移し、興奮状態でカタリナに言った。


「女神様ですか!」


 ぼふん!


「な、な、な、何を言っているのですか、カッツェリア卿!」


 カタリナは思う。

 よりによって女神とは、勘違いも甚だしいと。

 しかし、それを否定することも正すことも今はできない。

 レーナとミシェルがやったことなのだ。

 今はそれがもどかしいし恥ずかしい。


 そうバサラが騒いでいると、騎士や兵士が集まってきた。

 また、他のバッタ退治をしていたものも耳を傾ける。


 バサラは剣を抜いて空に掲げて叫ぶ。


「我が領に女神様が顕現された! 我々は神に愛されているのだ! この十五年バッタの災厄など、我らで撃ち滅ぼして見せようぞ!」

「「「「「「うぉおおおおおお!」」」」」」


 騎士が、兵士が剣を空に掲げる。その他の者もこぶしを掲げる。

「……」


 カタリナは顔を赤く染め上げる。


「それでは、女神カタリナ様。我々も引き続き精進いたします。どうかお見守り下さい」


 そう言って、カタリナに向かってバサラは跪いた。

 それに倣う騎士達、兵士達、その他領民たち。


 そうなると、カタリナが声をかけないと、誰も動かない。

 カタリナは、あきらめて叫ぶ。


「皆の者、気持ちは受け取った。私達も共に戦おう。立ち上がれ! グリュンデール王国のために!」

「「「「「「うぉおおおおおお!」」」」」」

「よし、行け!」

「「「「「「はい!」」」」」」


 バサラも騎士達も、走り出した。

 目を点にしてそれを見送るカタリナ。


 バサラ達が充分に離れたのを確認して、カタリナは真っ赤になった顔を両手で隠し、つぶやいた。


「もうやだ」


 そこに騎士カタリナはいなかった。

 恥ずかしさに震えるごく普通の女性がいた。


(ドンマイ)

(ドンマイ)


 レーナとミシェルがカタリナに声をかけた。

 聞こえていないが。

 それに合わせてすみれ姫もカタリナに声をかけた。


「ドンマイ」


 それを聞いたカタリナの、当然の叫び。


「ドンマイってなによー!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。