バッタ退治
翌日、六人は団服を着て森に入って行く。
カタリナを先頭にして。
レーナとミシェルは皆の上空をぽよぽよと。
森に入ると、ちらほらとバッタが飛んでくる。
決して襲ってくるわけではない。
それを、カタリナが剣で切り落としていく。
リスベルとアシュリーは、その剣技を見てつばを飲み込む。
自分達に、あの小さなバッタを切り落とせるだろうかと。
数十分歩いたところで、比較的小さな湖に出た。
その湖の周りには木が生えておらず、草原となっている。
「ここでバッタを退治する。広がれ」
カタリナのその言葉に、シフォンとトルテ、すみれ姫とリスベルとアシュリーが広がって行く。
すると、それを待っていたわけではないだろうが、リスベルに向かってバッタが飛んできた。
リスベルは剣を持って、バッタをよく狙い、
「ハッ!」
と、バッタを切り落とす。
アシュリーは、両手にナイフを持つことにしたようだ。
同じように飛んできたバッタに狙いをつけ、ナイフで切りつける。
すみれ姫は風の刃でバッタを切り落とす。
カタリナは剣で、シフォンとトルテはナイフだ。
まだバッタの出現数は少ない。
それぞれが集中力を持ってバッタを切り落としていく。
「魔法でも狙えよ」
と言うカタリナの言葉に、リスベルもアシュリーもアイスバレットをバッタに向けて飛ばす。
しかし、それが意外と難しかった。
バッタがよけるのだ。
仕方なく、魔法を撃って、当たらなかった場合は剣で、ナイフで切りつける。
そういう対応をしていく。
ひたすらバッタを魔法で、剣で、ナイフで倒し、一日が終わる。
リスベルもアシュリーも思う。
これは肉体的にも精神的にもきつい訓練だと。
翌日。
同じように湖までやってきた。
リスベルもアシュリーも気づく。
昨日よりバッタの出現数が多い、と。
「魔法と剣と両方でそれぞれ別に狙わないと、バッタに団服を汚されるかもな」
カタリナの言う通りだ。
複数のバッタを同時に狙わないと飛びかかられてしまう。
しかも、手返しよくやらなければ。
リスベルもアシュリーもひたすら剣を、ナイフをふるう。
そして、アイスバレットも同時に。
そうなると、レーナとミシェルの出番が出てくる。
時々二人に体力の回復魔法をかける。
集中力が重要だ。
大きいとはいえ、十センチほどのバッタに向け、アイスバレットを撃ちこみ、剣で、ナイフで切りつける。
集中、集中、集中。
その一方ですみれ姫は、小さなつむじ風を起こし、バッタを集めて切り刻んでいく。
カタリナやシフォンやトルテもひたすら剣を振り、魔法を撃ちこんでいった。
翌日も、その翌日も、湖の周りで日に日に増えていくバッタを切り倒す、魔法で撃ち落とす。
こうして、五日間を過ごした。
「きつい……」
「本当です……きついです」
泣き言を口にするリスベルとアシュリーを見て、カタリナが言う。
「リスベルもアシュリーも、小さなバッタを切ることができる剣技を、剣と同時に撃ってバッタを倒せる魔法の技を、ちゃんと身に付けたじゃないか。充分成長している」
「「はい、ありがとうございます」」
そのカタリナの言葉に、嬉しくなるリスベルとアシュリー。
自分達は成長しているのだ。
だが、油断してはいけない。
カタリナが言葉を続けるのだ。
「明日からだが」
カタリナが全員の目を見る。
「バッタの発生量が多くなってきたことから、カッツェリアの城壁前で他の冒険者や騎士達と一緒に、バッタの殲滅に参加する。とにかく、数を多くだ。火魔法でも広範囲魔法でもいい。やり方は任せる。とにかく、シューンシュタットへは向かわせるな」
「「「「「はいっ!」」」」」
翌日。
日が登ると同時にすみれ姫達は城門を出て行く。
昨日、カタリナはバッタをシューンシュタットに向かわせるなと言った。
だが、それは無理な話だ。
ただ、バッタが国中に広がる前に、このカッツェリアで半分でも、いや、一割でも減らせることができればそれでいい。
ドォン、ドォン、ドォン!
城門をくぐると、火柱が上がっているのが見えてきた。
神父達教会関係者が魔法を放っている。
炎の柱が立ち上るファイアサクロンだ。
ファイアサイクロンは、風を生み、動き出したバッタを、空を飛ぶバッタを巻き込んで焼いて行く。
「教会の神父さん達、すごい魔法使いなんだねー」
アシュリーが感心する。
ファイアサイクロンを次々に撃ちこんでいる神父は十人近い。
「いや、あれは魔法陣を使った魔法だ。だから、魔力が続くまで誰でも撃てる。昔からあるバッタのためだけの攻撃用魔法陣だ」
「バッタのためだけ?」
「ああ。バッタに対してしか使ってはいけない。そう言い伝えられている」
「……」
バッタの被害がなく、グリュンデール王国との関係性が薄いイングラシアには、この魔法陣は伝わっていなかった。
なので、アシュリーが知らなくてもおかしくはない。
それに、バッタは十五年周期での発生なのだ。
前回の発生はアシュリーが生まれたころのこと。
「ほら、しゃべっていないでやるよ」
と、リスベルは飛んできたバッタを手ではたき落として、足で踏みつけた。
(今日は私達も参加していいのかな)
(でも、私達の存在って、リスベルとアシュリー、それからカタリナ達にしか知られていないわよね)
(うーん)
ミシェルがちらりとすみれ姫を見る。
すみれ姫はトテトテと前方へと歩いて行く。
そして、周りに誰もいないことを確認して、魔法を発動させた。
「竜巻!」
ゴォオオオオーーーーーー!
すみれ姫の前に巨大な竜巻が発生し、森から出てくるバッタを巻き込んで集めていく。
すみれ姫は低位、中位精霊にお願いする。
「みんな、風の刃を」
すると、何十もの風の刃が顕現し、竜巻に紛れて行く。
竜巻の中で風の刃がバッタを切り刻んでいく。




