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あやとり

 ミシェルがぽよんとアシュリーに交代の時間を教える。


「ミシェル? ありがとう。リスベルを起こしてくるね」


 アシュリーは、馬車に戻って行った。


 しかし、アシュリーがリスベルと一緒に戻ってきた。

 アシュリーは、リスベルに魔法の訓練の方法を習いたいと懇願した。

 そのため、この最後の見張り時間も、アシュリーはリスベルと一緒に起きていることにしたようだった。





 朝になると、ラズルとハンナが起きてきた。


「おはよう」

「おはようございます。見張りをしてくれてありがとう。朝ご飯は私達が作るから、それまで休んでいていいわよ」

「ありがとうございます。何かお手伝いしますか?」


 リスベルがハンナに尋ねる。


「いいのよ。休んでいて」


 リスベルとアシュリーは、朝食が出来るまでの間、ほんの少しの時間だが、休ませてもらうことにした。





 食事が出来あがり、ハンナがリスベルとアシュリー、すみれ姫とキャロを起こす。


 そして、皆で食事を囲む。


「リスベルさん、アシュリーさん、夜の見張りをありがとうございます。お任せして大丈夫でしたでしょうか。大変でしたら、私も行いますが」


 ラズルがリスベル達を気遣ってそう提案する。


「いえ、大丈夫です。夜中に、私達もできることをしたいと思っておりますので、今日のように、食事の前にちょっとだけ休ませていただけただけでも、助かります」

「私もです」


 リスベルとアシュリーの二人は、ハンナの差し出してきたスープを受け取りつつ答えた。


 すみれ姫とキャロは、まだ眠そうに顔をこすっている。

 まだ、お椀を受け取れるような状況にはない。


「ほら、キャロ、すーちゃんさん、起きて。ご飯を食べないと出発できないわよ」


 ハンナは笑いながら二人に声をかけた。

 二人は何とか、スープを受け取り、食事を開始した。





 食事を終え、野営をした後始末をして、今日もシューンシュタットへ向かって動き出す。

 この日は、ハンナたちの馬車が先を行く。


「リスベルさん、アシュリーさん、もう少し休んでいていいですよ。朝方に盗賊が動き出すことはあまりありませんから」


 ラズルが眠そうなリスベルとアシュリーに声をかけた。


「ですが」

「朝の少しの時間は、妻とすーちゃんさん達に警戒をお願いしていますから。それに、寝不足だと、いざと言う時に動けませんよ」

「わかりました。では、もう少し休ませてもらいます」


 リスベルとアシュリーは、寝不足の上、朝食を食べたばかりで睡魔に襲われていた。

 寝られるのであれば寝ていたい。

 ありがたく、休ませてもらう。





「すーちゃんさん、ごめんね。午前中は、先頭で私と一緒に警戒をお願いね」

「ん」

「えー、つまんない。遊べないじゃん」


 すみれ姫が承諾しても、キャロは納得いかない。

 せっかく一緒に遊んでもらえる相手が出来たのに。


「でも、お父さんの馬車に乗っているお二人は夜の見張りをしてくれていたんだから、休ませてあげないとね。キャロがゆっくり寝られたのは、その二人のおかげなんだよ」

「むぅ。わかってる。わかっているけど」

「ほら、お母さんの隣に来なさい。一緒に景色を見ましょう」

「はーい」


 キャロは、ハンナの隣、すみれ姫とは反対側に座った。


 レーナとミシェルは幌の上だ。

 この二人が警戒をしているので、危険が近づけばすぐにわかるはず。

 すみれ姫もあくびをかみしめる。





 この日の移動も順調に進む。

 昼食のための休憩も取り、そこからラズルの馬車が先を行く。

 結局何もないまま野営場までたどり着き、火を起こす。


 食事をして休むが、この日の見張りは、アシュリーが先で、次いでリスベル。

 最後は二人が一緒に行う。

 二人は、午前中に休ませてもらえるので、それでいい。

 最後が二人一緒なのは、朝練なのだそう。

 もちろん、レーナとミシェルが警戒をしているので、何も問題はない。

 すみれ姫は変わらず、キャロとハンナと一緒に眠る。





 三日目の午後。


「すーちゃん、なにかお遊び教えてー」


 馬車の中で暇を持て余したキャロがすみれ姫にねだる。


「遊び……」


 すみれ姫は、遊んだことがない。

 里のエルフはお世話をしてくれるだけ。

 他の高位精霊は皆マイペース。

 すみれ姫も一人でぼおっとしていたり寝ていたりだった。

 おままごとも知らなかった。


「……」


 すみれ姫が固まっている。

 キャロはそのすみれ姫の顔を覗き込む。


「……」


 沈黙が続く。


(すーちゃん、紐があるか聞いてくれる?)


 ミシェルがその空気に耐えられずに助け舟を出す。


「紐があるか?」

「紐?」


 キャロは幌から顔を出してハンナに尋ねる。


「お母さん、紐ってどこかにあるの?」

「道具箱の中にあると思うけど」

「ありがとー」


 キャロは道具箱をあさる。

 そして、一メートルほどの紐を持ってきた。


「すーちゃん、これでいい?」

「これでいい?」


 すみれ姫はミシェルに問う。

 すみれ姫も何をするのかわかっていない。


「???」


 聞き返されたと感じたキャロは疑問に思う。

 なぜ聞かれたのかと。


 そんなキャロは置いておいて、ミシェルはすみれ姫に指示を出していく。


(すーちゃん、先っぽ同士を結んで輪にして)

「輪にする」


 と、すみれ姫は紐を受け取り、先を結ぶ。


(両手の親指と小指に紐をかけて)


 すみれ姫は両手の親指と小指に紐をかけて広げる。


(中指で、真ん中の紐をすくって。両側ね)


 すみれ姫はミシェル言われたとおりに、指で紐をすくっていく。

 キャロは、何が起こるのかとすみれ姫の手を見守る。


(小指を外してー)


 キャロは興味津々だが、すみれ姫は何をやらされているのかわかっていない。

 わからない。

 真顔のまま、ミシェルの指示に従って、淡々と糸をとっては外していく。


(小指で親指の紐を下からとって)

「……」

(親指を外して―)


 紐を外したり取ったり、いったい何をしているのか……。


(親指で小指の二番目の紐をとって)

(親指で中指の手前の紐をとって)

(親指の外側の紐を外して)

(中指を親指のところの三角に入れる)

「「……」」

(と、同時に小指を外してくるって)


 すみれ姫が手首をくるっと回す。


(三段梯子、って言って)

「三段梯子ー」


 すみれ姫がミシェルの言う通り、あやとりの出来上がりを宣言した。




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