う〇こがネック
「えっと、目指すべき?」
「そう。目指すべき姿だ」
「それはどういう?」
美鈴が問う。
目の前の美少女が目指す姿とは一体。
「昨日言ったけど、今はまだ、君達は魂のまま。精霊になったら会話が出来なくなっちゃう」
「れーちゃんさんでしたっけ、昨日、会話してましたよね?」
美鈴が聞く。
れーちゃんは精霊だよねと。
「ああ、会話できるぞ」
れーちゃんがグレイスに代わり答える。
ちなみに、グレイスの妻達は日本語を習得している。
騎士団やメイドはある程度しか理解できない。
グレイスとソフィリア、フラン、ステラが時々わからない言葉で会話をするので、必死に覚えたのだ。
「じゃあ、話せるのでは?」
当然の美鈴の質問をディーネに振るグレイス。
「ディーネ」
「はい」
返事をするだけで、ディーネは念じる。精霊達よ、顕現せよ、と。
すると、れーちゃん、ドライア、ディーネの周りを粒子をまき散らしながら飛び交う光の玉がいくつも現れた。
「き、きれい」
思わずレーナが声を上げる。
「あの、この光がなんなんです?」
「この光が精霊です」
ディーネが答える。
そして続ける。
「精霊には階位があります。私達三人は大精霊です。その下に高位精霊、中位精霊、低位精霊があります。精霊は低位から始まり、次第に階位を上げて行きます。ちなみに、この周りにいる精霊達が低位精霊です。貴方達が精霊になったとして、この低位精霊になります」
レーナが絶望的な声を上げる。
「ということは、私は転生しても声も出なければ、手足もなくてダンスもできない精霊になるということ?」
「そうなります」
無情なディーネの回答。
これに反応するのは美鈴。
「ちょっと待ってください。レーナはアイドルなんです。天才的なアイドルです。それを、声も出ない、ダンスもできない、きっと表情すら表現できない。低位精霊に?」
「そうなります」
「そんな! 何とかならないのですか? レーナは、レーナは!」
必死な美鈴に対して答えたのはグレイス。
「この国では十二歳まで就業禁止、というか、子供は七歳になる年齢から学校に通ってもらう。それから、十五歳まで通えるミュージシャン養成高等学園もある。そのために君たちがすることだけど、まず、これから一年間でこっちの言葉を覚えてもらう。その後、可能な限り早く高位精霊にまで階位を上げてもらう。リミットは六歳。その後は学校だ。低位精霊のままでは学校にいけない。そのためには、ここにいてはだめだ。旅に出てもらう」
「ここにいてはダメなのですか?」
なぜ旅に出るという話になったのか。
当然の疑問だ。
「ダメではないが、れーちゃん達の周りで高位精霊に階位を上げた精霊を見たことがない。きっと、ここにいても階位が上がらない。つまり、ここにいてはいつまでたってもアイドルになれない」
「他にアイドルになる方法はないのですか?」
美鈴はレーナのために必死だ。
「精霊になることをあきらめる。今ならまだ間に合うけど?」
「けど?」
「う〇こ出るぞ?」
「「……」」
予想外の答えに言葉を失うレーナと美鈴。
一方で気にせず続けるグレイス。
「つまり」
「「つまり?」」
「今、どうしてもう〇こがネックなんだ」
「「……」」
レーナが恐る恐る聞く。
「じゃ、じゃあ、精霊じゃなくて人に転生した場合は?」
「その場合は、普通に肉体を持っているから、さっき言った学校に通ってもらってアイドルになればいい。だけど、う〇こ出るぞ?」
しつこいグレイス。
だが、やはり、グレイスが言うようにどうしてもう〇こがネックなのだ。
「「……」」
二人は考え込む。が、レーナが気がつく。
「そう言えば、昨日、れーちゃんさん、ご飯食べてましたよね? 精霊も出るんじゃないです?」
食べれば出る。
それが必然だと、レーナは問う。
「でないぞ」
しかし、れーちゃんは端的に否定する。
「え?」
「私ら精霊は、食べたものをすべてエネルギーに変えてしまうからな」
「魚の骨も?」
「皿もだ」
「……」
かつて、ソフィリアからもらったクッキーを皿ごと食べたディーネが視線を逸らす。
とりあえず、グレイスが取りまとめる。
「まあ、ここで悩んでても仕方ないよ。今日のミサを見た後にでも決めてくれたらいい。それに、れーちゃん達も準備があるだろうし」
グレイスがレーナと美鈴に向き合う。
「うーん。二人の世話係なんだけど……」
グレイスはドライアとディーネの娘の顔を思い浮かべる。
「ドライア、ディーネ、みのりとしずくは?」
「視察という名の旅に出ました」
そう。
みのりとしずくはここにはいない。
どこへ行ったものか、それもわからない。
きっとどこかの温泉に浸かっている。
「自由か! それじゃ、れーちゃん、しらゆきとみゆきは?」
れーちゃんが二人を呼ぶ。
「しらゆき、みゆき」
しゅわん!
「######(呼んだ? お母さん)」
「日本語で話せ」
「呼んだ? お母さん」
しらゆきがれーちゃんに尋ねる。
「これから一年間……一年間?」
れーちゃんがしらゆきとみゆきに説明しようとしたが、季節的に一年間なのか疑問に思う。
なぜなら、今は夏だ。
「今は夏だし、春には旅立ってもらおうと思うから、九か月かな」
グレイスがれーちゃんの言葉を訂正する。
「それじゃ、九か月の間、この二人のサポートを頼む」
しらゆきとみゆきは、レーナと美鈴に視線を送る。
「「魂じゃん」」




