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第24話

眼帯さんがいない部屋で一人うずくまる。昨日は白骨くんと黒布さんのおかげで襲われなかった。でも、今日は分からない。


「鬼面さん……」


どうか、早く助けに来て。私の心が壊れてしまう前に。


そんな風に考えていると、襖が開く音が聞こえた。私は恐る恐る音の方へ顔を向ける。


「マヨイ様、お久しぶりですね」


「黒布さん……」


現れたのは黒布さんだった。彼は部屋に入ると、私から少し距離を取って座る。


「眼帯様があなたに酷いことをしてしまったようですね。私から謝罪いたします。あの方は、私にとって父親のような方ですので……」


「そうですか……」


私は顔を伏せて、冷たく返事をした。謝罪なんてされても、許せるわけがない。


黒布さんは優しい半妖さんだと思う。今だって、私を怯えさせないように、距離を取って座ってくれている。それでも、眼帯さんを許すことはできない。


「マヨイ様、この屋敷は少々特殊な場所にあります。私が鬼面様をお連れしますので、その間にマヨイ様には時間稼ぎをしていただけませんか?」


「時間……稼ぎ……」


私は黒布さんの言葉に驚いた。彼は本当に味方になってくれるのかな。本当に鬼面さんを連れてきてくれるのだろうか。


「眼帯様がこの屋敷から出ていかないように、時間稼ぎをしていただきたいのです。鬼面様は強力な力を持ったお方です。しかし、それ故に鬼面様と眼帯様が戦えば、他の罪のない半妖たちが傷つくことになります」


黒布さんは、静かに頭を下げてきた。


「どうか、お願いします」


私は迷わずに答える。今の私に選択肢なんてない。


「分かりました。その代わりに必ず鬼面さんを連れてきてくださいね」


黒布さんは微笑んで頷いた。時間稼ぎする方法なんて一つしか思いつかない。本当は嫌で仕方ないけれど、他に方法がないならやるしかない。


私は覚悟を決めて、自分の両頬を叩いた。



眼帯さんが部屋に来るのを、拳を握りしめながら待つ。俯くと、自分の手が震えていることに気づいた。さらに強く拳を握りしめて、深く息を吐く。


襖の――


開く音が聞こえた。


「おや、随分と元気がないね。そんなに震えて……寒いのかな?」


眼帯さんが背中を向けて襖を閉める。その後ろ姿を見ながら、私はゆっくりと近づいた。


背中に抱きついて、額を擦り付ける。眼帯さんは一瞬だけ固まった。


「ふ、ははっ、どうしたのかな?」


「寒いので、温めてください……」


眼帯さんは振り向いて、私の顎を掴んだ。顔を上げれば、軽くキスをされた。


「良いね。何かを企んでいる顔だ」


一瞬で見抜かれて、思わず肩が跳ねた。そんな私に構わず、彼は顔を近づけてくる。


「騙されてあげよう。その代わり、最後まで私を騙し切るんだよ」


キスを合図にして、押し倒された。深く、呼吸の暇もなく口付けられる。不快感で泣きそうになりながらも、彼の首の後ろに手を回す。


舌で唇を舐められて、吐息混じりに囁かれた。


「どうされたいのか、言ってごらん」


眼帯さんの着物に手をかける。するりと着物をはだけさせて、彼の鎖骨の辺りに口付けた。


「眼帯さん……触ってください……」


甘えた声で擦り寄れば、眼帯さんは笑いを堪えきれない様子だった。


「ふ、ふふ……ああ、良いね」


「眼帯さん……早く……」


急かすように、何度も彼の鎖骨に口付ける。眼帯さんは、私の肩を押して畳の上に押し付けた。


「たまらないよ。本気になりそうだ」


「っ……」


情欲に濡れた片目に射抜かれて、心臓が跳ねるのを感じた。恐怖で震える手を握りしめて、出来るだけ媚びた声を出す。


「好きです……眼帯さん……」


唇が触れ合い、眼帯さんの手が着物の帯を解く。少しずつ脱がされていく着物に恐怖が増していった。


「眼帯さん……もっとキスして……」


「可愛らしいね。もっとねだってごらん」


眼帯さんの頬に手を当てて、拗ねたように言う。


「眼帯さんが良いの。ねえ、キスして……」


「あぁ、良いよ……いくらでも可愛がってあげよう」


上機嫌で口付ける彼に、内心で息をつく。抱かれるのは最終手段だ。なるべくキスだけで時間を稼ぎたい。


「ふぅ……」


熱い吐息が、首筋にかかった。眼帯さんに、キスの痕を体に付けられていく。


私は必死で鬼面さんを待つ。早く来てくれないと、本当に食べられてしまいそうだ。

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