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第22話

鈴の音が聞こえる。真理ちゃんの高い声を思い出せてくれる鈴の音だ。微睡む意識の中で、誰かに抱き締められていることに気づく。


もっと聞きたいな。ねえ、また名前を呼んでよ。


「真理ちゃん……」


硬い手が頬を撫でながら、首筋へと向かう。その瞬間に、ぞわりと全身に冷たいものが走った。


「ひゅっ……」


目を開けば、眼帯さんが微笑んでいるのが見えた。あの眼球のホルマリン漬けの部屋に連れてこられたことを察する。私は彼から離れようと、腕に力を込めて暴れた。


「離してっ!」


「暴れたら危ないよ」


眼帯さんは困ったように微笑みながら、私の体を押さえつける。


リィン――


彼から、あの子の鈴の音が聞こえた。私はピタリと動きを止めて、震える声で眼帯さんに問いかける。


「真理ちゃんの鈴を、持っているんですか?」

 

「さあ、どうだろうね」


頭に血が上る。視界がゆらゆらと揺れて、涙を零さないように唇を噛んだ。私は怒りでどうにかなりそうだった。


「ふざけないでっ!」


「そんなに気になるなら、私の体を調べてみるといい。お前の大事なものが見つかるかもしれないよ」


眼帯さんは両手を広げて、無防備に座っている。私は拳を握りしめて、彼を睨みつけた。


「私の着物の中に、鈴が入っているかもしれないね」


大きく息を吐いて、自分を落ち着かせる。真理ちゃんの鈴。大事なあの子の形見。絶対にこんな男に汚させない。


私は眼帯さんの胸元に触れた。着物の合わせ目に手を入れて、必死に鈴を探す。彼はくつくつと喉を鳴らして、心底楽しげに笑っていた。


「随分と大胆だね。いけない子だ」


「黙ってください」


思いっきり睨みつければ、彼は余計に楽しそうに笑う。最悪の気分だった。大事なものを利用されて、こんな屈辱的なことをさせられるなんて最悪だ。


「もっと下かもしれないよ」


お腹の辺りを探していると、眼帯さんに腕を掴まれた。無理矢理手を動かされて、下腹部の硬いものに手が触れる。


「ひっ……」


手を引っこめるけれど、硬い感触がまだ手に残っていて吐きそうになった。


「ほら、もっとちゃんと探すんだ」


「う、は……うぅ……」


じわじわと恐怖が込み上げてきた。彼のモノに触れてしまった手を見つめる。


「鈴が欲しいんだろう?」


「っ……」


眼帯さんの言葉に、唇を噛み締めた。涙をこらえて、再び彼の腰の当たりに手を置く。ねっとりとした視線に晒されながら、ただ鈴のことだけを考えながら手を動かした。


「ひっ……」


眼帯さんに抱き締められる。彼と体が密着して、情けない悲鳴が零れた。


「こうした方が探しやすいだろう?」


「最低っ!」


こんなの卑怯だ。大事なものを使って、人の心を弄ぶなんて最低すぎる。


「ははっ! 元気がいいね。こうしよう。お前があと三十分で鈴を見つけられれば、鈴を返してお前を鬼面のところに連れていく」


「見つけられなければ?」


「お前は永遠に私のものだ。鈴はお前の目の前で破壊する」


私は覚悟を決めて、眼帯さんを睨みつける。真理ちゃんの鈴は絶対に取り返す。


「分かりました。その挑戦、受けます」


「良い子だ……」


眼帯さんは不敵に笑う。部屋の時計を確認して、私は彼の着物をはだけさせた。


「おや、そこまでするのかい?」


「絶対に見つけますからね。あなたには負けない」


眼帯さんの体に、少しの遠慮もなく触れる。あの子のためなら、このくらいの羞恥心なんて捨てれるんだ。


そう思っていた矢先に、眼帯さんに押し倒された。


「なっ……なにして……」


「邪魔をしないとは言ってないよ。私の事は気にせずに、そのまま続けてくれ」


眼帯さんは目を細めて、舌なめずりをする。彼の手が、私の太ももを撫でた。


私は無我夢中で鈴を探す。眼帯さんの着物をはだけさせて、とにかく探し続けた。


「急がないと、時間が来てしまうよ」


「どこ……どこなの……」


私は焦りを募らせていく。キスをされても、太ももをいやらしく撫でられても、鈴を探す手は止めない。


私の宝物。思い出が詰まったこの世でただ一つの形見。絶対に守ってみせる。


そんな想いとは裏腹に時間は無情に過ぎていく。不意に眼帯さんが体を起こした。


「これが探し物かな?」


「返してっ!」


眼帯さんが持っていたのは、ハートの形をしたあの子の鈴だった。手を伸ばした瞬間に、鈴を放り投げられる。急いで取りに行こうとした体を押さえつけられた。


「あと、少し……」


背後から体重をかけられて、それでも鈴に手を伸ばす。眼帯さんは、耳元で囁く。


「健気だね。ほら、もう少しで手が届くよ」


必死に手を伸ばす私を嘲笑うように、着物の中へ手を入れられた。体をまさぐられて、涙が零れ落ちていく。


「あと、少し……もう、少し……」


鈴に手が届きかけた。


その瞬間――


伸ばした手を掴まれて、畳の上に押さえ込まれた。


「時間切れだよ」


眼帯さんの甘い声が、私の耳を揺らした。

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